キャリアガイダンスVol.415
18/66

 教員のほぼ全員が「シンキングツールって何?」という状態からスタートだ。研究主任に任命された中山先生が率先して自らの授業(英語)に取り入れようと試みるも、「最初の半年間は空回りで終わった」という。そこで、シンキングツールに関する著書もある関西大学の黒上晴夫教授による教員研修会などで学びながら、段階的な導入を図った。 研究1年目の後半は、主に「TR」においてアイデア出しやレポートまとめのための情報整理などに活用を開始。2年目は全教科の教員が挑戦し、キーワードの整理や単元のまとめなどに活用するなど、全教科でシンキングツールを使用した授業を行うようになった(図2)。 日常的にシンキングツールを使うようになり、生徒は情報のアウトプットがうまくなっただけでなく、人の話を頭の中で整理しながら聞くなどインプットの面でも効果が出ているという。進路指導課長の寺坂幸三先生はシンキングツールの有効性をこう語る。 「ワークシートとの違いは、既成の枠を埋めていくだけではない点。例えば『座標軸』のツールなら、縦軸・横軸を何の項目にするかから生徒自身が考えます。社会に出て、答えが1つではない問題に取り組む際にも役立つと考えます」 ゼロから出発して2年でここまで広げられたのは、「『TR』で育まれた『教員みんなでやろう』という土壌があったから」と中山先生。さらなるステップアップへ、教頭の山本芳美先生はこう語る。 「これを学力の向上につなげるのは簡単ではありません。しかし、自分の中にあるものから思考を深めていくことで、小学校のころに感じたような『勉強は楽しい』という感覚を取り戻すきっかけになればと期待しています」 同校の変化に地域の見方も変わった。14年度末、住民会長が同校に声をかけた。「真庭高校裏にあるしめ山を地域の交流拠点として活性化させる『しめ山プロジェクト』に一緒に取り組まないか」。そこで、15年度に早速これを2学年の共通テーマに設定。しめ山の伝承を題材にした子ども向け紙人形劇の制作・実演や、しめ山での運動前に行う準備体操の考案など、各グループ・個人の希望進路と絡めた観点からしめ山の活性化に取り組んだ。今年度は1学年が昨年度の活動を発展させている。 「以前あった壁がなくなり今は『地域の中にある学校』になった」と水本先生。地域からの期待の高まりは喜ばしい一方で、その期待に応えようと教員が失敗を恐れるようになる面もあるという。そこで改めて中山先生は「失敗してもいい」ということを他の教員と共有した。 先日、「TR」で商店街活性化策に取り組むグループが、外部から人を集めるアイデアについて話を聞きに行った際、商店のおばあさんに不安を与え泣かせてしまった。そこでインタビュー先図3 地域に根差した「真庭トライ&リポート」の    テーマ例(2015年度普通科)図2 シンキングツールを活用した授業実践例■ 現代文■数学Ⅱ地域からの期待が高まるなか失敗させる勇気をもつ●単元:丸山眞男「『である』ことと『する』こと」●使用するシンキングツール:「座標軸」 ●流れ:前時間までで教材を精読したうえで、当時間は協同学習班に分かれて現代社会の事象を座標軸を使って整理する。●担当教員がとらえた生徒の姿:ツールを活用しながら、まず、個人の意見を明確にするところでは、「『根拠』をふまえて意見を述べること」の重要性を自覚することができた。各班における協議時間では、一人一係を決定し、責任をもつことで、意欲をもって協議に臨めた。発表の下準備では、二項対立の軸を用い、班内でまず共通理解することの不可欠性を理解しえた。発表場面では、(中略)自信をもって意見を述べることができたと思う。評価活動では、自己を客観的にみつめなおし、振り返りを行うことで、今回の活動の「メタ認知」的な行動について、少しずつではあるが、自覚できたのではないかと考える。 ●使用するシンキングツール:「KWL」(知っている・知りたい・学んだ)●流れ: ①予習として「KWL」の表にK(What I know)・W(what I want to know)を記入 ②授業の最後にL(What I learned)を記入 ③復習としてLの記入したことなどをもとに課題に取り組む ●担当教員がとらえた生徒の姿:実施当初は、K・Wの記入ができなかった。「書けない」という言葉も多く聞かれた。実施を重ねるごとに記入内容も充実し、わからなかったことが学んだどの知識で解決したかを、WからLへ線で結ぶことで表現する生徒も増えてきた。アンケートを実施した。(中略)その結果、予習ができている生徒が94%、数学の学習や授業を受けるために役立っている生徒が72%となった。「教科書を見る機会が増えた」「ポイントをおさえて授業が聞け、理解度が上がった」などの肯定的な意見が多かった。また、「Lの部分がうまくかけたら理解できるようになると思う」といった、達成された具体的な姿を考える生徒も出ている。■ 1学年課題別グループ学習  共通テーマ「住みたくなる街」地域を住みたくなる街にするにはどうしたらよいか、興味・関心をもつ分野を選択し、フィールドワークを通じて具体策を提言する。■ 2学年進路別課題学習  共通テーマ「しめ山プロジェクト」地域の共通財産である「しめ山」と各自の進路を絡ませて、しめ山開発で地域貢献・地域連携を図るという共通テーマに基づき、各グループ・個人でテーマを設定。分野テーマ例(グループ・個人)雇用創出「ゆるキャラを使った地域のPR」「移住定住が生む雇用創出」など交流・定住「商店街~私たちにできること~」「落合のいいとこ探し~横断幕づくりを通して~」など子育て・教育「住みたくなる街 放課後児童クラブ」「高齢者にとって住みやすい環境を考える」など都市づくり「防災マップの作成」「公共施設の利用」など分野(仮想部署)テーマ例(グループ・個人)地域産業課「クロモジ茶~クロモジ茶の魅力を伝えたくて~」(商品開発に向けた試行)など健康推進課「MSP-mission school possible」(しめ山体操の考案)など教育振興課「知ろう しめ山 学ぼう しめ山」(しめ山の伝承をもとにした紙人形劇の制作・実演)など観光振興課「CM......」(しめ山PR映像を制作し動画投稿サイトにアップ)など環境バイオマス課「しめ山版 竹取物語~しめ山の竹をエコストーブの燃料に~」(※)など※第12回「全国高校生環境論文TUESカップ」鳥取県知事賞受賞182016 DEC. Vol.415

元のページ 

page 18

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です