キャリアガイダンスVol.415
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財産」としての市立高校の「在り方」を検討するものだ。地域の中高生や教員に実施したアンケートなどから吉原商業の課題が浮き彫りとなった。「市民から遠い距離にあること」「市教委や市立中学との連携不足」「在校生が同校で学ぶ目的意識の希薄さ」などだ。これらの課題をもとに、2007年に現在のコンセプトのひとつ「コミュニティ・ハイスクール」の方向性が提言された。 この提言を受け、「富士市立高校改革基本構想」の策定委員会が新たに設置される。2008年3月に委員会から出された構想では、学校コンセプトに「ドリカム・ハイスクール(夢実現高校)」がプラスされ、学校再編の基本的な枠組みとして、「総合型高校が望まれる」とされていた。 この年の後半、構想の具体化が始まった。「富士市立高校開設準備委員会」が有識者と地域の教育関係者で設置され、準備委員会のメンバーと吉原商業の教員で「一緒に魅力ある市立高校を創る」グループワークが行われた。当時のことを総合探究科の平井延佳先生はこう振り返る。 「約1年間、放課後に集まってグループワークで様々な検討をしましたが、なかなか市教委の承認を得られませんでした。学科は商業を減らすことしか決まっておらず、普通科と商業科を半々にするのか、それとも他の学科を設置するかなど、熱く語り合っていました」 当時の資料には、基本構想の育てたい生徒像素案への疑問や、「考えよ」という校訓の捉え方について、教員たちが葛藤しているメモも残されている。 スポーツ探究科の杉山秀幸先生は、 「当時、学校コンセプトにはまだありませんでしたが『探究活動』という言葉は市教委から出ていました。体育科として、スポーツを題材とした探究は取り組みやすいと考え、課題解決型の授業を行うスポーツ科の設置を提案しました」と語る。 同校は1学年6クラス。従来すべて商業科だった編成に、普通科とスポーツ科を設置すると、商業科が半分以下になる可能性が高い。当然、商業系の教員からの反発もあった。 「当時のリーダーが『改革は現場の意見を全部聞いていたらできない』と英断してくださり、結果的に総合探究科(普通科)3、ビジネス探究科(商業科)2、スポーツ探究科(体育科)1の編成で決まりました」(杉山先生) こうした取り組みを経て、2009年4月、改革の基本計画がまとめられた(図1)。 この段階でようやく「育てたい生徒像」や「目指すべき学校像」などが具体化されている。当時の議論について、当時は市教委の指導主事として開設に携わっていた現教頭の小杉哲也先生に振り返ってもらった。 「『育てたい生徒像』の検討に半年以上かかりました。当初は『学力+α』の力を付けたいと議論されていました。『+α』が社会で必要となる力です。その力をもった『自律する若者』を育てたいと。前身校のアンケートで『入学後に頑張っていることが特にない』生徒が4割近くいた課題から、自ら学ぶ喜びを見つけてほしいと思いました。そこで出てきた言葉が『探究』だったのです」最終的に、学校コンセプトに「探究の精神に満ちた学校」がプラスされた。 そうしていよいよ、校内の組織やカリキュラムづくりを現場に任される新たなスタートを迎えた。市教委の開設準備担当の指導主事2名が、学校に常駐で配置されるという異例の体制でスタート。全教職員が3学科の検討委員会、5つのワーキンググループ(探究学習、教科指導、生活指導、学校運営、進路指導)に分かれ、中心メンバーで開設準備室を組織、具体化の準備を進めることになった。ここから教職員たちの真の悪戦苦闘が始まる。 「決まっているのは理念だけで、新学科が増えるのに具体的なことは何も決まっていない。正直、商業高校を閉じずに2年間でつくるのは無理だと思いました」(杉山先生) 「探究」というコンセプトについても、それを授業カリキュラムにどう落とせばいいか見当もつかなかった。「探究学習」とは具体的に何かを知るため、当時の指導主事がインターネット、他校事例、文献など手当たり次第に研究した。「そのころ、『探究学習』を取り入れている学校が注目され始めたときでした。段階的に学校像が具体化「探究に満ちた学校」へ開校までわずか2年探究学習をどう構築するか図2 課題解決型学習「究タイム」総合探究科の海外探究研修で毎年訪問しているハーバード大学で、講義に参加する生徒たち。【課題の設定】体験活動などを通して課題を設定し、課題意識を持つ 【まとめ・表現】気づきや発見・自分の考えをまとめ、判断し、表現する【情報の収集】必要な情報を取り出したり、収集したりする 【整理・分析】収集した情報を整理したり分析したりする第5単元夢ここまでの学習を振り返ることで、気づきや自らの成長を自覚し、将来との繋がりを意識したスピーチの作成を通して、進路意識を高める第4単元究これまで身につけた力を活用して、自分自身で設定したテーマを探究することで、社会問題や自分の将来について視野を広げる第3単元活富士市の抱える課題に向き合い、解決策を検討し、プレゼンテーションすることで、地域の一員としての意識を高める第2単元論ディベートにチームで取り組むことで、多角的な見方や論理的な考え方を学び、コミュニケーション能力や協働性を高める第1単元序ブレーンストーミング、KJ法など、課題を見つけ、情報を集め、まとめて、表現するための基本的な方法を学ぶ5つの単元の狙い探究学習の進め方3年次2年次1年次このサイクルを各単元で繰り返す夢究活論序必た収たカリキュラム・マネジメントで生徒が輝く学校づくり富士市立高校(静岡・市立)212016 DEC. Vol.415

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