キャリアガイダンスVol.415
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そこで、開設準備室メンバーで全国の学校の視察に行きました」(平井先生) 複数の学校の探究的な授業を見るうちに、探究学習にも様々なタイプがあることがわかってきた。深く掘り下げる探究もあれば、生徒に多様な体験をさせて幅を広げるような探究もある。 「熊本の鹿本高校を訪れた際、『生徒がこういう体験をすればこういう力が付く』と先生方は綿密に仕掛けをつくって授業をされていました。生徒たちは知らず知らずにいろいろなチャレンジをしながら、課題に取り組み、自分たちの力を発揮していくのです。本校の生徒の伸ばしたい力に合っていると思い、真似しながら当校らしさが出る授業を開発することになりました」と語るのは、当時、企画研究課で探究学習主任を務めていた、現・市教委(富士市立高校に常駐)の遠藤健指導主事だ。コミュニティ・ハイスクールを目指す同校は、地域連携でオリジナルのカリキュラムをつくろうと検討を始めた。 しかし、今までに校内の誰も経験したことのない探究的な授業をつくるには多くの紆余曲折が待ち受けていた。「『探究なんてやる意味がない』『準備が大変』と、好ましく思わない教員もいました。新しいことを始めるときは反対する人もいますが、大半の人は中立派です。生徒の変化や効果を見れば、仲間になってくれると確信していました」(平井先生) 「最初は週1回の総学で始めることにしました。初年度は市立高校のカリキュラムを受ける生徒は1学年だけなので、総学の主担当+担任の2名体制を6クラスだけ始めればいい。全員ではないので『とりあえずやってみよう』と決めました」(遠藤指導主事) そして設定されたのが、課題解決型学習「究タイム」だ(図2)。1学年から3学年の前期までの2年半で5単元のカリキュラムを行う。なかでも2学年前期に行う「市役所プラン」では、生徒たちが富士市役所から辞令を受け、職員として生徒の視点で市の課題と向き合い、解決策を考える地域密着の体験型学習として注目された。 2011年の開校時、まずは「究タイム」で探究学習を始めてみて、2年目以降は各教科にも探究的な要素を落とし込み、個々の教員の発想で実践している。 「自分は総学の担当ではありませんでしたが良い授業だと思いました。課題を生徒たち自身が解決していく授業の発想は自分にはなかったので、探究を知らずに教員を続けていたらと今思うと怖くなります。それくらい『究タイム』を経験した生徒たちは『もっと新しいことを知りたい』という意欲がわいて、課題に取り組む思考回路が身に付いていくのを目の当たりにできています」(杉山先生)地域を巻き込んでできた課題解決型学習の誕生富士市立高校のカリキュラム・マネジメントの概要●「究タイム」の「市役所プラン」で、市役所の協力のもと、生徒が市の職員として市の課題解決を探究活動として実施●富士市の「まちづくり未来会議」など、市の政策に生徒の意見を求められる場が増える●地域の識者、PTAなどで構成される学校運営協議会から、客観的な評価を受ける総合的な学習の時間での探究学習教科での探究学習の広がり全教職員が3学科の検討委員会、5つのワーキンググループに分かれて検討(開校まで)●総学の担当者が週1回検討会を実施●各学科ごとの検討会、教員研修(1)様々な探究を行い、夢を実現する生徒 ⇒自らが見出した夢の実現に向け、主体的に学び、探究し続ける生徒(2)高いコミュニケーション能力をもつ生徒 ⇒多くの人との交わりのなかで、互いを尊重しながら自らを表現できる人間性豊かな生徒(3)富士市や社会に貢献しようとする気持ちをもつ生徒 ⇒国際的視野に立ち、高い見識をもって、富士市や社会に貢献できる生徒 地域・社会との連携教育目標:育てたい生徒像実行主体者学校全体の動きカリキュラムのPDCA反映成果リーダーシップ連携・協働規定・支援リーダーシップ富士市教育委員会富士市立高校教育推進室指導主事 (学校に常駐)※カリキュラムの枠組みをつくり、校内リーダーたちが教員全体を動かせるような素材や情報を提供、外部との連携紹介など「究タイム」の年間授業計画に、年間を通して身に付けたい力を端的に提示。教員の目線を合わせやすくした「究タイム」のルーブリックを作成。より多面的な評価の導入を検討中目の前の生徒の状況に合わせたカリキュラムの作成・改善生徒アンケートの年次比較による効果測定「究タイム」の1年次にディベートに取り組む。こうしたコミュニケーションの基本的スキルを身に付けることで、他教科の授業での学び合いや校外学習にも好影響を与えている。「究タイム」の期末に行う自己評価シート。生徒たちの気づきが、自分の言葉でびっしりと書き込まれている。<自律する若者> 開設準備メンバー(開校まで)⬇企画研究課、各学科の科長、教務課学校内校外222016 DEC. Vol.415

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