キャリアガイダンスVol.415
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 三田国際学園高校は、2015年に戸板女子高校から改称し、新たなスタートを切った学校だ。中学校もある中高一貫校で、110年以上の伝統をもつ。その前身の戸板女子時代を知る佐藤充恵先生は、当時のことを「先生方皆で一生懸命やっていたのですが」と振り返る。でもそれが、生徒の意欲向上や周囲の評価にいまひとつ結びついていなかった。 そんななか、同校は2013年に、ある人物を理事に迎え入れる。同じく中高一貫校である広尾学園の改革に校長として携わり、任期を終えて退いた大橋清貴先生だ。翌年には学園長に就任。この大橋先生の着任を機に、学校は大きく変わっていく。 大橋先生が課題に思ったのは、この学校ではどんな教育をしたいのか、そのデザインが見えないことだった。 では教育デザインはどう描けばいいか。大橋先生がまず重視したのは、保護者との対話から得た指針だ。前任校時代、社会の第一線で奮闘する保護者との対話から「これからの教育に必要なもの」を感じてきた。 それをもって全教員と対話した。社会構造の変化の話も交え、保護者の声を共有。「正解が一つではない時代に、生徒たちのために学校は何をすればいい?」と先生に問いかけた。 こうした対話を経て、学校の教育目標が改めてまとめられていった。 創立時の理念「知好楽」※を大事にしよう。変化の激しい時代だから「発想の自由人」になってほしい。学校に何かしてもらうだけでなく、自分も皆の学びに「Contribution(貢献)」してほしい。そうした理念を叶えるために、世界標準の教育と銘打って「英語」「コミュニケーション力」「サイエンスリテラシー」「ICTリテラシー」「考える力」を伸ばそう(26ページ図1参照)。 思い描いた教育目標を実現するために、学校の組織、教育カリキュラム、そして授業の在り方も見直した。 女子校から共学に舵を切ろう。英語・サイエンスを重視したスーパーイングリッシュコース(SEC)とスーパーサイエンスコース(SSC)を新設しよう。「考える力」や「コミュニケーション力」を育むために「相互通行型授業」を、「ICTリテラシー」を伸ばすために「生徒が一人1台タブレット端末を活用する授業」を推進しよう。 対話によるとはいえ、大橋先生を中心にまとめられたこうした方向性に、全員がすぐ納得できたわけではない。職員会議では、その教育で大丈夫か、本当に共学にするのか、といった声が相次いだ。そうした先生に大橋先生は「多様性を受け入れることが求められ1902年創立/普通科/生徒数441人(男子134人・女子307人)/進路状況(2015年度実績)大学55人・短大2人・専修その他3人、その他4人学校データ取材・文/松井大助生徒のためにどんな教育をしたらいいかを話し合い、ミッションや思いを全教員で共有する。そのことを何よりも重視し、粘り強く取り組み続けている学校の事例をご紹介します。保護者や教員間で共有できる教育デザインがなかった教員同士で対話をくり返しどこに向かうかを明確に一人1台タブレット端末を活用し、問いに対して生徒自身が考え、皆と議論する。それが授業の基本スタイルだ。大橋先生は保護者や生徒にも、学校にしてもらうだけでなく、自分も学びに「Contribution(貢献)」することを呼びかけている。※知好楽……孔子の教えに由来する言葉で、「人生に於けるすべてのことは知ることから始め、それを好きになり、最後に楽しむ境地に至ったときにこそ、初めて自分のものになり、豊かなものになる」という考え方。対話を積み重ねて理念を共有全教員で「世界標準」と銘打つ教育の実現を目指すカリマネはどのように取り組まれているか?学校現場で242016 DEC. Vol.415

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