キャリアガイダンスVol.415
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ったと言える。それは大変だったはずだが、あるプラスの効果も生んだ。きっかけは、生徒の「ICTリテラシー」を育むべく、先生全員もタブレット端末を使いこなす体制を目指したこと。不得手な先生は、年代を越えて他の先生に質問するようになった。そこから「わからないことは先生同士で聞き合う」文化が前以上に根づいたのだ。 先生同士で思いの共有を進めてきたことで、学内の共通語が増え、授業設計などで意見が割れたときに立ち返るポイントも明確になった。「発想の自由人」や「Contribution(貢献)」という言葉は、先生のあいだで浸透し、今では生徒も口にする。 その生徒たちは、「相互通行型授業」になじんできて、自分の考えをよく主張するようになった。タブレット端末で仕上げた企画書を手に、学園長に「学園祭でこんなことをしたい!」と直訴する生徒まで出てきたという。 周囲の見る目も変わった。受験者が大幅に増え、校名を改称した2015年には外部進学者200名が加わり、高校の1学年が2クラスから7クラスに拡大。学校説明会では保護者から「大学入試の先を見すえた教育を探していた」と共感の声をもらえるようになった。その説明会では、アンケートを毎回実施している。学校が目指す方向性と、保護者の認識にずれがないかチェックするためだ。 現在、目指していることは、先生たちやこの学校が元からもっている力を、さらに結集させることだ。 「知好楽」に準拠した各教科のルーブリック作成により、複数の教科で共通して育みたい資質が見えてきた。それをもとに教科横断型の授業を開発、さらなる学びの相乗効果を狙っている。各先生のつくった教材をICTのシステムで共有し、ほかの先生がカスタマイズして活用したり、ブラッシュアップしたりする取り組みも進行中だ。 昔からあった伝統芸能鑑賞や鎌倉遠足という学校行事にも着目。そこで生徒が日本の良さを探究したうえで、旅行会社や観光学部の大学生と組んで、シンガポールで観光客誘致のプレゼンに挑む、という「考える力」や「英語」を鍛えるプログラムに再設計した。 「今までのものを全部壊して新しいものを始めるスクラップ&ビルドでは、皆大変ですし、これまでの学校の良さがなくなります。そうではなく、さまざまな木材を組み合わせて形づくる組木細工のように、今ある素材を生かしていきたいんです。ミッションを共有し、そこに向けて先生方のもつ暗黙知やこの学校にある資源をうまく組み合わせることで、ほかにはない特色をつくっていきたいと思っています」(田中先生)学習指導部長田中 潤先生理科主任佐藤充恵先生共有したミッション目指し学校の資源を組み合わせる三田国際学園高校のカリキュラム・マネジメント概要●「学んだことを社会でどう生かすか」まで、外部との社会人も交えて生徒が考える授業設計に●生徒が「地域や社会にアウトプットする場」として学園祭を重視学園長/学習指導部/運営会議(各分掌部長)/教科主任●全教員で「相互通行型授業」「タブレット端末を活用した授業」に挑戦●先生同士で対話し、学校教育および教科のミッションや評価観点を共有 ⇒わからないことに挑戦するなかで、先生同士で聞き合う文化が根づく創立時からの教育理念である「知好楽」の実現/学びに「Contribution(貢献)」する姿勢の会得 ⇒そうした理念をこのグローバル時代に実現するための「世界標準」の教育を行う ⇒「世界標準」の教育=「英語」「コミュニケーションスキル」「サイエンスリテラシー」「ICTリテラシー」  「考える力」という有機的につながり合う5つの力を伸ばす地域・社会との連携教育目標実行主体者・体制カリキュラムのPDCA学校全体の動き学校説明会では、社会の変化やそれを踏まえた教育理念を発信。アンケートを取り、認識にずれがないか確認疑問→仮説→検証→結論の思考プロセスをたどる相互通行型授業を、各教科の先生で話し合って計画・実施学校のルーブリック(学習の評価観点)をまとめ、各先生が各教科のルーブリックも試案。授業改善に活用教員研修で、教科ごとまたは教科を越えて、模擬授業およびディスカッションを実施。授業改善に役立てるカリキュラム・マネジメントで生徒が輝く学校づくり三田国際学園高校(東京・私立)272016 DEC. Vol.415

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