キャリアガイダンスVol.415
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希望の道標取材・文/山下久猛撮影/土屋 学1979年和歌山県生まれ。近畿大学付属和歌山高校、明治学院大学経済学部経営学科卒業。大学卒業後、2年間食品メーカーに勤務した後、24歳で実家のしらす屋「山利」に入る。しらすづくりにおいて最も重要な工程である「釜あげ」を担当。2012年、七代目に就任。経営者として店を切り盛りする一方で、サーファーたちへのサポートや和歌山の街を元気にするイベントの開催・協賛など、社会貢献活動や地域活性化のための活動にも尽力している。●山利 公式Webサイト→http://yamari.info/●山利 オンラインストア→http://shop-yamari.info/きむら・なおひろまずは地元をよく知って、そのよさを活かせば、自分だけの道が見えてくるかもしれませんよしらす屋七代目店主/木村尚博 僕は和歌山市で160年続くしらす屋「山利」に生まれ、4年前から七代目として店を切り盛りしています。しかし、先代の父からは店を継げと強制されたことは一度もありません。お前の人生なんだから好きなことをやれ、ただ、将来の選択肢の一つとして、しらす屋の仕事もできるようにしてやると、10代のころから店で仕込んでもらっていました。そのおかげで高校時代には父がいなくてもしらす屋としての仕事はひと通りできるようになっていました。 高校卒業後は一度外の世界を見てみたいと思い東京の大学に進学。同級生の多くは東京生まれの東京育ちで、高校時代に既に遊び尽くしており、将来の夢や目標が定まっていたことに衝撃を受けました。彼らに勝つにはどうすればいいか考えたところ、出てきた答えがしらすでした。これがしらす屋を継ごうと明確に決意した最初のきっかけですね。それで大学時代の半分は実家に戻ってひたすらしらす屋の仕事に没頭した結果、しらすが僕のアイデンティティを支える1つの大きな武器になっていったんです。 卒業後は父との約束通り、川崎の食品メーカーで2年間勤務。その後実家のしらす屋に入りました。七代目としては何よりもオリジナリティを重視しています。山利でしか味わえないおいしくて安全安心なしらすを提供することは当然として、さらに他の店が太刀打ちできないくらいの高いブランド力をもつしらす屋を目指してがんばっています。 この仕事をしていて一番嬉しいのはうちのしらすのファンが、知り合いにもうちのしらすを贈ってくれて、その知り合いから「おいしかった、ありがとう」と御礼を言われた、と感謝されたとき。お金を出して買ってくれた人に喜んでもらったうえに感謝されるって、こんなに贅沢で幸せなことはないですよ。それをこんな田舎にいても味わえるわけです。 高校生の皆さんへのメッセージですか? 僕らが彼らに対して上から目線で言えるようなことなんか何もないと思います。僕らが高校生だったころに比べたら今の高校生の方が行動力にしてもセンスにしても格段にすごいですから。ただ、特に田舎の子に言いたいのが、都会にあこがれを抱くのもいいし、一度は都会に出るのもいいですが、その前に、まず地元の身の回りのものに目を向けてほしいということ。どんな田舎にでも都会や世界に誇れるものが必ず1つや2つはあるはずなんです。まずはそれを知って、とことん使い切ってほしい。そうすればそこから将来につながる新たな発見があるかもしれないし、地元で十分に楽しく充実した人生を過ごせると思うんです。僕は地元を元気にしたいという思いが強く、地域活性化イベントにも主体的に参画しているのですが、とてもやりがいを感じています。この先もずっとこの愛する和歌山で誇りとやりがいを胸に働き、100年以上受け継がれてきたバトンを次の世代に無事に渡したいと思っています。32016 DEC. Vol.415

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