キャリアガイダンスVol.415
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イギリス・バーミンガム大学にてPh.D.(Ed.)取得。鳴門教育大学講師を経て現職。日本教育方法学会(常任理事)、日本カリキュラム学会(理事)、教育目標・評価学会(理事)などに所属。文部科学省「育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容と評価の在り方に関する検討会」委員なども務める。専門である教育方法学(カリキュラム論、教育評価論)から、特にカリキュラムの評価・改善の領域で活躍。著書に『教科と総合学習のカリキュラム設計(図書文化)など。教育現場での開発・研究の成果などを共有する「E.FORUM全国スクールリーダー育成研修」も担当している。 「それぞれの評価方法には測ることの得意分野があるので、特定の評価方法を選択するのではなく、組み合わせていく必要があります。その際には、教材研究をし直して評価方法を検討するという行為が必須なので、まさに一人ひとりの先生の創意工夫が求められています」 教科・教材の見直しの動きの中で、最近の何でもアクティブラーニングにするという動きに警鐘も鳴らす。 「アクティブラーニングはあくまでも手段。評価対象はアクティブラーニングの結果、身に付けた学力です。どういう学力を育てるか。目標の種類に応じて、筆記試験のほうがいい部分、パフォーマンス課題が適した部分などが見えてきます。つまり、どの目標がどの評価方法に対応するのかを整理して取り組む必要があります。授業でも、すべてをグループワークにするのではなく、講義が必要になる場面もあることでしょう」 西岡先生がパフォーマンス課題づくりの研修で行うのが、先生方に「本質的な問い」を考えてもらうワークだという。思いついた問いをまずはたくさん書き並べ、個々の授業レベルでの問いなのか、単元レベルの問いなのか、包括的な問いなのか見比べる。 「そうすると、その単元で一番大切なことが見えてきます。さらに『本質的な問い』を生徒自身が問わざるをえなくなるような状況を設定してパフォーマンス課題を作る。いろいろな『本質的な問い』に生徒が触れることで、生徒の中にも生徒自身の問いが育ってくる。生徒自身が『問い』をもちながら学ぶ力を付けていくことが大切です」 教科としての本質を問い直すとともに、目の前の生徒にそれをどのように伝えていけば届くのか。どのような課題だと力が伸びるのか。その見極めも重要だ。 「例えば、板前さんになりたい高校生が、英語の授業のスピーチで、料理の話ならイキイキと話す。能力は固定的なものではなく、引き出され方によって発揮のされ方も違います。パフォーマンス課題の背景には、発揮できるような機会を与えてあげることで能力が伸びるという能力観の転換もあります。課題の構想には、将来の準備と今の充実、両方の視点が必要です。生徒にとって自分事になるような課題をつくるには、先生方の工夫が重要になります」 そこで、1年に1回でもいいので、試しにパフォーマンス課題に挑戦してみることを勧めたいという。 「そうすると、『本質的な問い』が軸となって、単元間の関係が見えてきます。この単元の課題には前の単元でこんな力を付け、別の単元にこう発展する…など、広がりやつながりが出てきます。『本質的な問い』への生徒の反応を見ることによる新しい発見や驚きも必ずあります」 そして、挑戦したことを他の先生と共有してみることも大事だとか。 「こんな課題でこんな反応といった成果を少しずつ校内に広げていく。共感してくれる先生方を見つけていくことも、力になります。できれば、年間を通して1回でも2回でも、教員同士での研修機会を設けてみる。カリキュラムづくりと、教員研修はセットで取り組むことが大切です」 そのような挑戦の共有が、学校レベルになっていくと、カリキュラムづくりはぐっと発展するという。 「ただ、最初から壮大な目標は立てないほうがいい。燃え尽きてしまいます。小さく始めて、できたことを共に喜び合う。そんな仲間づくりを、ぜひしていってほしいと思います」目の前の生徒に届きやすい課題にアレンジし、共有する「本質的な問い」が何か明確にしていく必要性図 学力評価のさまざまな方法選択回答式(客観テスト式)の問題活動の要素の点検項目一枚ポートフォリオ評価ポートフォリオ評価法パフォーマンス評価プロジェクトパフォーマンス課題自由記述式の問題実技テストの項目・多肢選択問題 ・正誤問題・順序問題 ・組み合わせ問題・穴埋め問題(単語・句)・発問への応答・活動の観察・検討会、面接、口頭試問・短文の朗読・実験器具の操作・運指練習・運動技能の実演・エッセイ、小論文、論説文・研究レポート、研究論文・実験レポート、観察記録・物語、脚本、詩、曲、絵画・歴史新聞~短答問題(文章・段落・図表など)・知識を与えて推論させる問題・作問法 ・認知的葛藤法・予測・観察・説明(POE)法・概念マップ法、ベン図法・運勢ライン法 ・描画法単純複雑実演筆記編著書『カリキュラムマネジメント・ハンドブック』(ぎょうせい)・朗読、口頭発表、プレゼンテーション・グループでの話し合い、ディベート・実験の計画・実施・報告・演劇、ダンス、曲の演奏、彫刻・スポーツの試合http://e-forum.educ.kyoto-u.ac.jp/京都大学教育学部研究科が主催。教育実践者を対象とした研修(年2回、3月・8月実施)の他、研究や情報交換を目的としたネットワーク作りや、サイトでの情報発信などを行う。現在メンバーは約700名。思いを同じにする仲間づくりの場としても、活用してみたい。京都大学大学院教育学研究科・京都大学教育学部 准教授西岡加名恵先生カリキュラム・マネジメントで生徒が輝く学校づくり管理職の役割と現場教師のアプローチとは?312016 DEC. Vol.415

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