キャリアガイダンスVol.415
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 事例編に登場した学校のように、学校再編や改編など大きな変革がある場合には、否が応でも、学校全体でカリキュラム・マネジメント(以下、カリマネ)に取り組む必要性が出てきます。教職員たちが「カリマネ」と意識していなくても、生まれ変わる学校での教育目標を立て直し、そのための教育活動を検討し、実践していくからです。 しかし、大きな変革がなくとも、育てる生徒像や目標は学校それぞれにあり、本来その目標に向かって教育活動が実践されているはずです。また、個々の教員は自分の授業において生徒をどの段階まで伸ばし、そのためにどんな授業をするかを検討して実践し、生徒の状況に応じて改善しています。それを教員個人の活動や、成績を上げるための学習活動にとどめず、授業や学校行事全体を通じて、「どんな生徒を育てたいか」「社会にでるまでにどんな力をもった生徒になっていてほしいか」を管理職・現場のすべての教員が目線を合わせて教育活動全体で取り組むことが、カリマネにおいて大切なことです。 一方で、「カリマネを始める」というと、「目標をたてて、それに基づいた実践を行い、評価して、改善する」という「PDCAを回すこと」だけに意識がいきがちになることに、赤沢先生、辰巳氏とも懸念を示しています。 「学校はそもそも教育活動を日頃から実践しています。『PDCAが大事』というのは、その実践が学校全体の目標に合っているか、合っていなければ目標と実践の関連を強化するために、双方の見直しをしてみましょう、ということです。日々、現場の先生方が行っている教育活動に意味づけをして、教員全体が共通の見通しを立てることがカリマネです」(赤沢先生) 「カリマネのPDCAサイクルの『P(計画=目標)』は、完璧な計画を立てきるというより、『仮説を立てる』ことだと思います。仮説を立てて、それに向かって実践し、うまくいかなければ早い段階で仮説を立て直すことの繰り返しが学校現場では必要だと思います」(辰巳氏) 赤沢先生は学校全体でカリマネを進めるに当たって、整理すべきポイントをわかりやすくした『カリキュラム・マネジメントによる学校教育活動の改善〜「いい学校」の創り方』という手順書を作成しています。辰巳氏は、カリマネで最も基本となる、生徒の現状把握のために役立つ『高校生の基礎的・汎用的能力を測定するルーブリック』を作成。両者ともホームページで無料配布して、誰でも利用できるようにされています。次ページ以降で、両名のツールを有効利用する例を示しながら、明日からどの学校でも取り組めるよう解説していきます。教育活動を意味づけし、道筋をたてるのがカリマネ奈良教育大学次世代教員養成センター 准教授赤沢早人先生リクルートワークス研究所主任研究員辰巳哲子氏2004年~京都大学大学院助手、05年~福岡教育大学で助手、講師を務めた後、09年より現職。教員研修センター「カリキュラム・マネジメント指導者養成研修」の指導講師のほか、多数の小中高のカリマネに携わる。主な研究テーマは「教育方法論」「カリキュラム論」1992年リクルート入社。組織人事のコンサルティング、社会人向けのキャリア支援、高校生等のキャリアカウンセリングを経て、2003年4月より現職。全国で教員向け研修会や生徒の変容に関する共同研究を実施。中学・高校でのキャリア教育の推進について、学校組織の観点・生徒の発達プロセスの観点から研究中。生徒自身のアンケートにより「対人基礎力」「対自己基礎力」「対課題基礎力」を数値化できる(図3参照)。生徒が自ら目標設定するワークシートとセット。手引き書も作成している。カリマネの考え方、手順をワークシート方式で追っていけるツール。組織がどの局面にあり、目指す方向もわかるルーブリック(図6参照)も作成している。「高校生の基礎的・汎用的能力を測定するルーブリック」『カリキュラム・マネジメントによる学校教育活動の改善 「いい学校」の創り方 改訂版』※ダウンロードサイト:リクルート進学総研 >> 発行メディアのご紹介 >> キャリアガイダンス(Vol.415)生徒がもっと輝く 学校づくり取材・文/長島佳子今以上に「もっと生徒が輝き、もっと生徒の能力が引き出される」学校組織を目指すには何から着手したらよいのでしょうか。その基本的な手順がわかるツールを作成している二人の研究者に、カリキュラム・マネジメントを実践する際のポイントを伺いました。 生徒がもっと今日からできること輝くために学校活動の改善に役立つ参考ツール付き322016 DEC. Vol.415

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