キャリアガイダンスVol.415
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 取り組みを始める前に、今の学校がどんな状態にあるか認識することが肝心です。33ページの図2は赤沢先生が「ファーストステップ」として最初に確認しておく項目としてあげているチェックリストです。これら5項目がすべて揃ったところから学校改善の取り組みが始まります。 特に、﹇1﹈﹇3﹈﹇5﹈にあげられている「課題」の把握と共有が何より重要となります。課題によって教育目標やその後に実行する内容が変わるからです。同じ事象でも、学校内の役割によって見え方が異なるため、それぞれの立場から見える課題をすり合わせ、学校全体で確実に解決へと導くべき課題を立てる必要があります。「課題」というと、「問題があること」と捉えて「うちの生徒は生徒指導案件も少ないし、目標の進路を叶えている生徒がほとんどで課題などない」と考えるケースもあります。しかし、「課題とは、期待値(目指す姿)と現状の差といえます」(辰巳氏:図5)。 「期待を低く見積もるほど課題はなくなります。生徒の能力を引き出すために、生徒の最大限の可能性を信じてほしいですね」(赤沢先生) つまり、目の前の生徒をどう見るかが、課題発見につながるのです。 学校課題を把握するために必要なのは、生徒の現状を正しく認識することです。しかし、生徒一人ひとりは多様な面を持ち合わせていて、教員によって生徒の捉え方が違っていることも多々あります。 「同じ生徒たちを前にしたときでも、教員の経験や立場によって捉え方は異なります。また、前任校の生徒と比較して見る場合や、去年の生徒と比較して見る場合では、見え方は違ってきます。生徒を捉える基準がバラバラな状態では、課題の優先順位がつけられないと思います。そこで、生徒自身が自分をどう捉えているかを先生方が知ることで、現状を教員間で共有できないかと考えたのが『高校生の基礎的・汎用的能力を測定するルーブリック』です」(辰巳氏) 辰巳氏のツールは、生徒がルーブリック式のアンケートに答え、それをクラスごと、学年ごと、学校全体など必要に応じて数値化できます。学校組織として、強い分野、今後伸長が期待される分野を把握したり、取り組み後に再度実施して比較するのに役立ちます。図3のようにデータをグラフ化すれば、視覚的に生徒の現状がわかり、教員間で共有しやすくなりそうです。 生徒の現状を知るためには、教員同士の教科を超えた授業参観が効果を発揮します(図4)。 「生徒たちは、教科による得意・不得意、授業の構成、教員との関係性によってまったく異なる顔を見せます。生徒が他の教科でどんな姿勢で授業を受けているかを目の当たりにして『自分の授業のときと違う』と感じることで、自然と教員間で会話が生まれてきます。それを協議会などで共有するとよいと思います」(赤沢先生) 教員研修などの場で「我が校の生徒の課題とは」と会議をしても思いつかないことでも、生徒の様子は授業に現れています。そこで教員たちが共通に感じた、生徒の行動や人間性、生活態度などをもとに、生徒たちの現状を再認識できます。 辰巳氏のツールのような生徒自身が捉える現状の数値化や、相互授業参観から見えた生徒たちの現状をもとに、教員間で議論することで学校としての課題が見えてきます。持ち寄る課題は最初は多い方がいいですが、どこから手をつけるか焦点化していく必要があります。学校全体で取り組むべき緊急度や重要度の高い課題を絞り込めて初めて、取り組みで目指していく教育目標が立てられるからです。図3 生徒の自己評価による課題把握例図4 教科を超えた授業参観による課題発見例自分の授業のときと、生徒の様子が違う!生徒アンケートの結果を3つの基礎力別にグラフに表し、強みの強化や弱みの改善など、組織の目標設定の目安になる。教科によって無口だったり、イキイキとしていたりとギャップがある生徒ほど、伸び代があるということ。他教科の授業を見ることで、それが発見できる。学校の現状を確認しよう学校課題が具体化、共有化されているか確認する生徒の状態を再確認しよう生徒を捉える基準をつくり視点を合わせた現状把握を生徒の多様性を、教員が実感値として受けとめる対人基礎力1回目  2回目受容・共有(話しかけられた場面)気配り5.04.03.02.01.0多様性の理解役割理解・連携行動相互支援話し合う・意見を主張する建設的・創造的な討議342016 DEC. Vol.415

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