キャリアガイダンスVol.415
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 遠野高校のセッションは助川剛栄先生とともに市役所職員の菊池陽一朗さん、建築家の安宅研太郎さんが並んだ。生徒が地域に出て探究的な活動をする機会が多くあるが、学校主催のものはほとんどないのが特徴。参加する活動のなかでも「遠野オフキャンパス」は建築家の発想で遠野の魅力と独自性を見出し、発信するユニークなものだ。 「このプログラムは何をやっているのかよくわからないと思うんです。やっている私たちもゴールがみえない」と安宅さんは言う。受けた助川先生も「めあてがないのがいいんです。参加した生徒からは教師の枠にはまらない発想が出てきます」。専門家にもまだわからないことを高校生も一緒に探究する。答えがわからないからこそ面白い。主催側からは「市としては人材育成であり、地域づくりの一環のつもりです。でも私自身、そして地域の人たちも高校生と出会うことができて良かったと思っています」と菊池さん。 3人の和気あいあいとした掛け合いからもしなやかな連携の姿が伝わってくる。依頼は電話とメールだけ、文書は不要。大事なことは「正直なところを話し合う」「お互い無理ない範囲でやる」こと。教員の引率は求めず、なにかあれば周りの大人がフォローする。そんな関係ができている。 神奈川県から来た先生は、今回の参加動機をこう語った。「アクティブ・ラーニングの導入が言われていますが、つけるべき力や主体性を育てることは、学校の中だけでは難しいと感じていました」。打開のためのヒントを求めて参加したが、今回学んだのは教員がまず共通認識を持つ必要性だという。 「先進事例を外から見ると、誰でも回せるようにプログラムが完成し、うまくいっているように思っていました。ですが、実際の現場ではいろいろな矛盾や難しさを抱えている、当たり前だけれど、今も試行錯誤しながら進んでいることがわかりました。本校では、まず教員がアクティブに、学校の課題はなにか、生徒にどんな力をつけるのか、そのためにどうするかを探究すべきと思っています」 質疑応答では参加者からの実践上の懸念点や心配な点も多く挙がった。有志参加を学年全員参加に切り替えた可児高校では、手続き・ルールの策定、財源の確保や、警報発令時や事故など非常事態に対応する体制の整備の重要性を痛感したという。外部との連絡調整に時間と手間がかかるという問題については、NPOへの業務委託で解決に向かいつつあるが、学校の教育活動・管理の範囲をどう設定するかなど未解決の課題がある。また、行事をきっかけに生徒が地域活動に参加するのは望むところだが「生徒の学校外での地域参加にどこまで関与するのか? 」「課外活動と地域活動はどちらが優先するのか?」「そもそも高校生の時間は誰のものか?」といった悩みも生まれている。宮崎県立五ヶ瀬中等教育学校の取り組み岩手県立遠野高校の取り組み 宮崎県の中山間地域に位置する五ヶ瀬中等教育学校は、1994年の開学当初より周囲の森林など地域を学習のフィールドとしてきた。総合的な学習の時間「フォレストピア学習」でも、農業体験や環境学習などに取り組んできたが、2014年度のSGH指定を機に「グローバルフォレストピア学習」に進化。より探究的な学びにシフトした。 中1、中2では「ローカル学」として最初は年間を通した稲作体験、竹細工や餅つきなどの体験活動、2年目には農作業とともに各自のテーマで探究活動を行う。中3からは「グローバル学」としてまずディベートや統計などの手法を学びつつグローバルな社会課題についての講義を受ける。高校に上がると地域課題とグローバルな社会課題が結びつく「環境」「経済格差」「高齢化」などをテーマに、調査、研究、ポスターセッションを行う本格的な探究活動に入る。高2では探究の成果を基に実践をし、その結果を再び考察、日本語論文を仕上げ、高3では英語サマリーの作成、海外研修先での発表などを行う。小誌Vol.403(2014.7)掲載 地域の伝統校、遠野高校では、遠野市が地域の豊かな未来をつくるための新しい手法として、建築家などに委託して実施している「遠野オフキャンパス」に有志の生徒を参加させている。内容は、中心市街地にある旧商家の調査や再生活動、町並み調査や、豆腐店や味噌屋などでのインタビュー。馬とともにあった遠野の暮らしを捉え直すワークショップなど、地域をキャンパスとして年に数回開催されている。主催・企画側も「先が見えない」「やりながら考える」。ただし一流の研究者が探究心を掻き立てられる素材に関わる諸活動。その様子を記録し発信することも含め、高校生が東京からの大学生や大人と共に動いている。 参加は、地域の職業人の話を聞く進路行事「ミニ講座」に市役所職員を招いたことから縁ができ、市役所側からの呼びかけで始まった。参加した生徒は、具体的な体験から進路意識や主体性が育ち、大人との対話によって思考力や発信力が鍛えられ、生徒指導的観点からもしっかりしてくるので「結果的にキャリア教育になっていた」と助川先生は言う。小誌Vol.410(2015.12)掲載レポート4市役所、建築家、遠野高校の鼎談に連携のあり方を見るまだ解決しない実践上の課題まとめ見えてきた課題と地域連携の未来462016 DEC. Vol.415

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