キャリアガイダンスVol.415
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■ 育英西高校(奈良・私立) この機能を生かして、生徒が蜂の巣ボードで個々に考えたアイデアをパソコンに入力してみんなと共有しながら、同時にすべてのアイデアをいつでも見返せるデータベースを作成していったのだ。 何も知らない人がこの授業を遠巻きに眺めたなら、生徒たちがおのおの孤独に作業をしているように映るかもしれない。 でも実際には、生徒が見つめるパソコンの画面上では、自分のほかに前後左右の同級生のアイデアが続々と集まってきているのだ。その情報が面白いからか、5分、10分経っても、どの生徒もパソコンの画面から目を離さない。話すことが禁止されているわけではないので、「なにこれ!」「あ〜似たこと考えていた」などといったつぶやきも聞こえてくる。 やってみたあとで堀川先生が補足した。「こうしたツールとビデオ会議を使えば、距離を隔てた人とも、情報を共有しながらアイデアを温めていけるわけですね。将来、君たちが社会に出たときに、こんなやり方もあるよ、というのを知っておいてもらうために体験してもらいました。ですが、この授業では、やっぱり、顔と顔を突き合わせて話すことを大事にしたいです。みなさんもしゃべりたい気持ちを我慢できなくなっているようなので、ここからはグループで『この話面白いよね』『これはどういうこと?』『この方向で考えたらどう?』といったことを話し合ってください!」 企業から出された課題に1年かけて取り組むこの授業は、「クエストエデュケーション」という有料の教育プログラムを導入して行っている。 ただし、ある課題について生徒がみんなで考えてプレゼンする、という授業のスタイルについて言えば、堀川先生は有料プログラムを取り入れる何年も前から、独自にも進めてきた。ある年には「育英西の制服を変えるなら、君たちはどんな提案をするか?」というお題に生徒が取り組んだ。ある年には「学校の遊休地をどう活用するか?」を考えた。また違う年には「学内のユニバーサルデザインを考えよう」というテーマに挑んだ。そしてその活動のなかで、思考法や会議手法、ICTの活用も身につけていくのだ。 情報モラルの学習についても、知識を教えるというよりは、生徒が自分たちで考えるスタイルで進めている。手始めにみんなで、詐欺の手口に迫った報道番組を視聴し、何が犯罪かを考える。そのうえで、インターネットをはじめ情報の世界で起きているトラブルを示し、どの部分が犯罪にあたるか生徒たち自身が考え、発表する、といったぐあいだ。 「こうした授業では『何々の法律の第何条で○○を禁じている、○○は何か』といった穴埋め問題は解けないかもしれません。ですが、日々情報に接するなかで直感的に『これはダメだ』と判断してくれるようになるかな、と期待しているんです。私自身、情報科の専門教育を受けた時間数が少ないので、授業では『教える』というより『共に学んでいこう』という姿勢を取るように意識しています」の方向で話し合いを進めているときに、誰かが『お化け屋敷はどう?』とまた話を発散させると、みんなの思考が停止したり混乱したりしますよね。これからの話し合いでは、今は発散思考をしているのか、収束思考をしているのかを意識しながら進めてほしいと思います」 その10月の授業では、ICTを活用した情報共有にもチャレンジした。 使ってみたのは、オフィス用ソフトの同時編集機能。各自がそれぞれのパソコンで共有シートを開き、そこに情報を入力すれば、ネットワークでつながるすべてのパソコンに、それらの情報がリアルタイムで反映される。チームでの課題解決にICTを活用する自分事に思える課題が活動を通した思考を促す中高一貫の私立女子校。「21世紀型グローバル教育」を掲げ、生徒の問題発見力・論理的思考力・協働解決力・情報発信力の育成を推進。英語で歌って踊るワークショップ「ヤングアメリカンズ」や、企業と連携して課題解決型学習を行う「クエストエデュケーション」なども導入し、グローバルに活躍できる人材の輩出を目指している。教育理念は「豊かな教養と純真な人間愛をもって、社会に貢献できる女性の育成」。普通科/1983年創立生徒数(2016年度)431人(女子のみ)進路状況(2016年度実績)大学130人・短大4人・専門学校1人その他3人奈良市三松4丁目637-1 0742-47-0688 https://www.ikuei.ed.jp/ikunishi/■ 課題解決を目指すなかで学ぶ「情報の扱い方」● 文書作成ソフト・表計算ソフト・プレゼンテーションソフトの活用● 共有ファイルを活用した協働での文書・データ等の作成● ビデオ会議などを活用した遠隔地での話し合い など① ICT・ネットワークの活用入力練習ではなく「今後の活動のための入力」なのでみんな真剣。画面上ではこのようにグループの生徒全員分の入力が表示される。● 伝わる文章のまとめ方、図・グラフ・写真等のビジュアルの使い方● 話すときの口調・目線・姿勢● スキット(寸劇)の活用 など③ プレゼンテーション技法教室にはグラフィックデザイン・プレゼン・思考法などの本を常備。企業の人へのプレゼンに向けて普段の授業からプレゼンに取り組む。● 発散思考と収束思考の使い分け● 蜂の巣ボード(左写真)など思考ツールの活用● ブレインストーミングやバズセッションなど会議手法の活用 など② 問題解決のフレームワーク (情報の整理・分析・創造等)関連して思いついたことを周囲のマスに書いて蜂の巣を埋めていく。誰も答えは知らない議論なので堀川先生も「一緒に楽しむ」側に回る。572016 DEC. Vol.415

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