キャリアガイダンスVol.415
58/66

HINT&TIPS その知見も生かそうと、2006年に情報科の免許を取得し、翌年から授業も担当するようになった。当時は堀川先生自身、すべてが手探りだったという。 「1年目は教科書主体で教えたのですが、受験科目でないこともあり、生徒たちには何のために情報を学ぶのかが見えていないようでした。そこから、やり方を変えなければ、と思うようになったんです」 堀川先生は、情報の授業を「様々な教科の学びをつなぐHUBにできないか」と考えるようになった。 「情報というものを広く扱うこの教科なら、生徒たちが様々な教科で学んだことを有機的に結びつけて何かを創造するような授業ができるのでは、と思ったんです」 堀川先生は、もともとは書道を専門に教え、国語の授業も兼任する教師だった。 高校生のときに理系に進むも、書道科の先生から「次の世代に文化を伝える」大切さを教わり、感銘を受け、大学は芸術教育を専攻したのだ。その学生時代に、大学の研究室にコンピュータが導入され、勝手のわからない教授から「堀川君、理系やったな」と声をかけられ、期せずしてコンピュータの扱いも実践で学ぶ。 さらに「学校と実社会をつなぐHUBにもできるのでは?」という気づきを得る。 「卒業生が、大学で実験のためにコンピュータで統計をまとめてグラフをつくることになったそうで、『もっと情報を勉強すればよかった』と言ってくれたんです。社会人になった卒業生から『プレゼンは大切』という声もありました。社会につながることを授業でやっているんだ、と思えたことがすごく自信になりました」 では、卒業生が実体験を通して見出してくれた情報を学ぶことの意義を、在校生にも感じてもらうにはどうすればいい? 「そこで視点を変えて、2年目からは、情報という『教科を教える』のではなく、『生徒が何らかの課題に挑戦し、その活動のなかで必要なことを学ぶ』というスタイルに変えたのです」 制服改革などの課題に取り組む授業に変えると、生徒たちはものすごく食いついてくれた。 だがまたしても壁にぶつかる。生徒は毎回真剣に考えてくれたが、あくまでも授業用の課題なので、最終的にまとめた提案が実現するわけでもなく、世間から評価されるわけでもない。 「生徒は最後に『教育的肩すかし』をくらっていたんです」 そんな折りに出会ったのが、企業からのお題に挑む今のプログラムだった。 「キャリア教育の視点からいうと、生徒には、企業の人たちがお金儲けのためだけに働いているのではなく、経済活動を通して社会にも貢献しようとしていることを、まず理解してほしいんです。こちらからの提案に対して企業からフィードバックがあるので、『リアリティ』や『社会とのつながり』も感じられます。そして途中のダメ出しも含めて、考え抜いた提案をきちんと評価してもらえることで、生徒たちは自己肯定感も得ていきます」授業ができるまで1リアリティや社会とのつながりがある課題に生徒がチャレンジする課題を考えるとき、堀川先生はリアリティを重視。その点で学校の課題、それも「こうなれば面白い」と思えるテーマは、生徒にとって身近で本気を出して取り組みやすいものだ。また、外部の人からフィードバックをもらえるような課題も、生徒が社会とのつながりや責任感を自覚できるので、頑張りを期待できる。2各生徒の意見を全承認したうえで問題提起やアドバイスをするプロジェクト学習では、生徒が自分たちで考えて議論して課題解決を目指す。そのあいだ、堀川先生は何をしているのか。心がけているのは、各生徒の意見に何かしら良いところ見つけて全承認することだという。生徒一人ひとりが自分を出しやすい雰囲気をつくれるかどうかが活動の鍵を握るからだ。3生徒が思考を深めていけるように様々な「別の視点」にふれさせる課題解決策を考えるといっても、生徒の頭の中にアイデアを形づくる材料はまだ少ない。だから堀川先生は様々な「別の視点」にもふれさせる。「30年後の未来」の情報共有、街頭アンケート、「持続可能な開発目標」の資料(下の写真参照)など。そうした材料も手にして、生徒は思考を深めていく。4問題解決のための手段や技法は教科書で覚えるよりも実践で学ぶ発散思考と収束思考、ブレインストーミングなどのやり方を、堀川先生は、事前にテキストで生徒に覚えさせることはしていない。仕事経験もない生徒たちには、課題について考えたり議論したりするときにそのやり方を試してみて、まず効果を感じてもらい、「必要だから覚えた」流れにもっていきたいからだ。ICTの活用でわからないことが出てきたときに、同じグループの生徒同士ですぐに学び合えるのが学校の授業の強みだ。課題を考えるヒントとして、堀川先生は国連サミットで採択された「持続可能な開発目標」も生徒に配布している。在校生と卒業生の意識の差を埋められないか生徒にとって肩すかしの授業になっていないかクエストエデュケーションの教材(教育と探求社)。企業で働くことの意義などを紹介。表紙は40種類あって各生徒が違うものを選ぶ。582016 DEC. Vol.415

元のページ 

page 58

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です