キャリアガイダンスVol.415
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う地域課題発見解決型キャリア教育などをきっかけに志望学部を変更します。ゼミ活動を通じて、地元の畜産業が衰退し、後継者が不足している理由に気付いたからです。その一つは、苦労の割に儲からない構造であること。餌のコストに対して売上が少なく採算が合わないのです。さらに調べていくと、餌が高いのは購入を外部に任せきりであるため。売上が少ないのは、畜産業者のマーケティング力が弱く競争力が低いということに気付きました。解決策を求めたA君は、現場で働く大人に疑問を投げかけました。そして、オランダのスマートアグリをヒントに、畜産にICTを導入するスマートファーム構想(図1)を考えます。この仮説を突き詰めるには、大学で畜産を学ぶことは必ずしも近道ではない。そう考えて志望先を変更。結果、ICTや経営、マーケティングを学べ、農業や畜産なども学際的に学べる難関大学に合格を果たしました。近いうちに地元に戻り、畜産業にイノベーションをもたらしてくれることでしょう」 A君が通っていたのは島根県立隠お岐き島どう前ぜん高校。同校は10年程前、存続の危機の只中にあった。島の中学生の半数近くが本土の高校へ進学することもあり、入学者数は1997年度の77人から2008年度の28人へと激減。県の高校統廃合の基準を下回る可能性が高まったのだ。 そうしたなか自治体と高校が連携した「島前高校魅力化プロジェクト」(図2)が始動する。なぜ、「存続化」ではなく「魅力化」なのか。 「存続を目指すだけの高校に生徒は来ません。でも、高校に魅力があれば生徒は自然と集まり、結果として高校は存続します。そう考えたプロジェクトメンバーの想いを込めた命名でした」 リーダーの岩本悠をはじめ、プロジェクトの中心は縁あって島にやったきた民間出身の若者たち。東京で教育関係の会社を経営していた藤岡も、教育で地域を再生するという岩本の熱意に心を動かされ、東京と島との二地域居住をする決意をした。 同プロジェクトでは、どのような生徒を育てたいか、そのためにはどんな学びの場をつくるべきか話し合われた。進学だけではなく、その先を見据え、社会で活躍したり、島に戻って地域に貢献したりする人づくりをしよう。そのためには地域資源を有効に使い、人間力も磨く必要がある、というのが基本方針であった。 そうした考え方や実践は、行政の壁などもあり、当初、なかなか理解されなかったが、地域総がかりで若者を育てるという強い意志が、やがて県や国を動かしていった。 そして、島留学制度の開始、地域創造コースと特別進学コースの設置(当時)などの取り組みが次々実施され、2010年には隠おきのくに岐國学習センターという公営塾も設立された。 「生徒一人ひとりにあった学習支援によって、課題であった教育格差を解消するだけではなく、生徒のキャリアデザインを明確化し、社会人基礎力や21世紀スキルと言われる力の養成までを目指しました」 藤岡はそこで「夢ゼミ」という講座を担当する。地域のリアルな問題に対して解決策を模索する地域課題発見解決型のキャリア教育だ。そこでの学びによって、問題に対する理解を深めたとき、冒頭のA君のように進むべき道も決まってくる。 学習センターでの「夢ゼミ」と連携し、相乗効果を果たすのが、高校での「夢探究」や、学校設定科目である「地域学」(当時)という探究学習だ。「夢ゼミ」が少人数のゼミ形式に始まり最終的には個人探究に移るいっぽう、高校での取り組みはチームが中心。商品開発など、具体的な学びの場を魅力的にした隠岐島前高校の挑戦図1 隠岐島前高校「夢ゼミ」参加生徒によるスマートファーム構想の研究存続ではなく魅力化。存続だけを目指すと存続しないカリキュラム・マネジメントで生徒が輝く学校づくり生徒数が減少していく時代に、学校をどう魅力化するか?92016 DEC. Vol.415

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