キャリアガイダンスVol.416
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 岡山県立倉敷南高校は、「自分の言葉で自分の夢を語れる生徒」の育成を掲げる、進学重視型の単位制高校だ。同校には高校入学時点で目指す職業のある生徒が少なくない。しかし、少ない人生経験のなかで、家庭や学校生活で目に付く範囲からの目標設定が目立つという。 「本校が生徒に望む進路選択とは、単に自分で決めることではなく、社会や職業に対する厚みのある理解をし、志をもって選択することです。そのためには、将来の目標がある生徒でもいったん揺さぶりをかけ、より確固たるものにしたいと考えています」(山下陽子校長) 生徒を揺さぶる中心的な活動となっているのが、倉敷の自治や文化を担ってきた町衆の精神に学ぶ「倉敷町衆プロジェクト」(以下、マチプロ)だ。倉敷商工会議所や地元の名士に、「町衆」としてマチプロへの協力を依頼。その町衆との連携により、生徒は地元が抱える課題の発見とその解決方法に取り組む。2015年度からは海外研修も交えてグローバル化の視点も強化した。 「探究的な活動が生徒に効果的に落とし込まれるよう、町衆1人の人選もいい加減にせず、『短時間で濃く』をモットーにプログラムを設計しています」(進路課長・三島誠人先生) 1年次は総合的な学習の時間のなかで、町衆と仕事や進路について語り合う「ラーニングカフェ」や、市内の企業や施設を直接訪問・見学して町衆から話を聞く「フィールドワーク」を実施(図1)。そこで発見した課題についてグループで調査・研究を行い、ポスターセッション形式で発表する。2年次は学校設定科目「キャリアⅠ」で、1年次マチプロの学びをさらに発展させた課題研究を行い、その成果をポスターと小論文にまとめる。3年次は文化祭で地域や世界の課題をテーマにしたディベート大会を行う。こうして地域から世界へと視点を広げながら、進路決定につながる資質や意欲、志を育成している。 「観念的になりがちな普通科教育のなかにあって、現実社会を生きる町衆から受ける刺激は、生徒の学びや将来へのモチベーションにつながっています」(山下校長) 同校ではこうした活動で生じた気づきや気持ちの変化を次の一歩につなげる、教員の働きかけも重視している。各学年、担任を中心に年間5回以上の面談を実施。その際、主に3つのアイテムを基に話をする。 1つは同校オリジナルの手帳「M-PRiDE」。前半は学校行事の入ったスケジュールで、後半は集会や進路講演時のメモ・感想欄、面談シートなどの記録用になっており、自分が学校生活地域連携の探究的な活動で生徒の価値観を揺さぶり様々な教員による多面的な面談で意思決定を支えるのなかで何を感じどう行動してきたかを振り返ることができる。2つ目はマチプロの探究活動で取り組んだポスター。進路の方向性を確認する格好の材料となる。3つ目は、同校が21世紀型能力をベースに開発したルーブリックの自己評価。その結果や推移から、自分の成長や足りないところがわかる。こうした材料を基に、進路の方向を確認し、次に生徒自身がとるべき行動を考えさせている。 「活動で将来につながる気づきや問題意識が生じても、本人が自覚していない場合もあります。そこを掘り起こし、点を線にして進路につなぐ支援は教員の役割でしょう」(山下校長)1974年設立/普通科・単位制 生徒数957人(男子397人・女子560人)進路状況(2016年3月実績)/大学268人・短大6人・専門学校3人・就職1人・その他29人学校データ自分の言葉で自分の夢を語れる生徒生徒教員の関わり・姿勢プログラム・仕組み入学時進路選択時●日常見えやすい職業を 将来の目標にしている。●地域や社会に対し、 観念的な理解しか していない。●社会の課題に目が向く。●高校生活の活動を進路につなげて考えられる。●学びに対する モチベーションが高い。●生徒が自覚していない気づきを掘り起こし、つないで次の行動を後押しする●担任、教科担当、進路指導部など多様な教員の連携による多面的な生徒把握●他の教員の指導の手法を学び取る●探究活動「マチプロ」●指導ポイント付きの詳細な進路指導計画●年間5回の個人面談●手帳「M-PRiDE」などによる生徒の把握●志望理由書の指導●「21世紀型能力」ルーブリックによる 教育活動の評価自己理解進路情報収集進路計画立案取材・文/藤崎雅子生徒の進路希望を揺さぶる地域での探究活動目指す生徒像▶次の一歩につなげる年5回以上の面談進路指導実践レポート生徒の進路決定力を高める282017 FEB. Vol.416

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