キャリアガイダンスVol.416
32/66

 茗溪学園は建学の理念を「人類ならびに国家に貢献しうる『世界的日本人』を育成すべく知・徳・体の調和した人格の形成を図り、特に創造的思考力に富む人材をつくる」とし、1979年に設立された中高一貫校だ。筑波大学の同窓会である「茗溪会」の創立100周年記念事業として創立され、同大学との連携行事も多い。学校設立当初から偏差値教育に疑問を投げかけ、生徒自身が本当にやりたいことを見つけ、追求する先に進路選択があると考えてきた。 「教育実験校」と称し、「自分で考え行動できるスタディ・スキルズを身に付けた生徒の育成」という教育目標を実現するためのプログラムを実践している(図1参照)。単なる知識の習得でなく、覚えたことに体験活動を通して疑問を探し、調べ直し、仲間と討論し、発表する活動を6年間でスパイラル的に何度も繰り返して少しずつ身に付けていく。体験活動では外部の社会人や芸術分野など、さまざまな「本物」に触れる機会も多い。それによって、「自分はこれをもっと知りたい」という探究心や学ぶことの楽しさが育まれていく。 「本校では、授業や行事のすべてが、教育目標の実現に向けて構築されています。また、ほとんどの生徒が部活動に所属し、多くの運動部や文化部が全国レベルで活躍しています。進路指導が独立したものとして体系化しているのではなく、日常の授業や行事、部活動などの体験を通じて、『大学で何を学びたいか。将来何をしたいか』を生徒たちが主体的に意識するようになっていきます」(進路指導部長・尾島義之先生) 教育プログラムの内容は時代の環境変化に合わせて改善されているが、同校では設立時から「個人課題研究」を実践したり、生徒たちが大学を訪問して、自分の目で大学を見てから志望校を選択していた。 「個人課題研究など創立時より続いている取り組みもありますが、時代の変化に対し変革に臆病であってはならないと思います」(尾島先生) 体系化された進路指導プログラムがないとはいえ、同校ではスタディ・スキルズ育成のために、中学時から国内外の社会人と関わる行事を行うなど、社会や職業への興味を喚起する取り組みを多様に行っている。 そのひとつが、高校1学年時の「職業観セミナー」だ。同校の生徒の保護者は、民間企業勤務のみならず、研究者や宇宙飛行士、国家公務員、弁護士、医師など職業が多岐に渡っている。その資源を活用し、毎年約20名の保護者に職業観を語ってもらっている。保護2学年の個別課題研究や様々な行事を通じて進学後も学習意欲をもてる生徒を育成者ごとの分科会で、生徒たちは2分野に参加できる。講師となる保護者は、自分の職業の話よりも、「働く」とはどういうことか、社会人として自己実現する意味や、そのために高校時代の勉強がどうつながっているかについて話をする。生徒たちは自分の親以外の身近な大人の生の声を聞くことで、社会の広がりや、現在の学びと仕事とのつながりについて気づきを得ていくのだ。 また、同校の特徴的な取り組みに、中学1学年から高校2学年まで夏期と冬期に行われる「スタディゾーン」がある。それぞれ3日間、勉強から離れた体験をする行事で、外に出て博物館や企業を訪れたり、外部の講師を招いた講習を行ったりと、活動内容は学年やクラスごとに異なっている。 中学時からのさまざまな体験を通1979年設立/普通科・IBDPコース/生徒数781人(男子399人・女子382人)/進路状況(2016年3月実績)大学185人、海外大学3人、進学準備69人学校データ自分で考え行動できるStudy Skillsを身に付けた生徒生徒教員の関わり・姿勢●社会への興味や社会的な経験が少ないため、大学の名前だけで進路を考える。●自分の興味関心が明確になり、将来的に学びたい意欲をもち続ける。●面談に先駆けて、担任、進路指導部、校長、副校長が全生徒について課題を検討●社会と交流できる場を、多方面から提供●生徒の自主性、主体性を促す(強制することが少ない)●個人課題研究「17歳の卒論」●保護者による「職業観セミナー」●卒業生(社会人)によるパネルディスカッション●面談を頻繁に行う●行事が多様●ほぼ全生徒が部活動に参加自己理解進路情報収集進路計画立案進路指導実践レポート生徒の進路決定力を高める取材・文/長島佳子生徒の興味からの進路選択を学校創設時から実践社会に触れる多様な行事で生徒の興味を喚起する課題研究を通じて、自分が真に学びたい分野に気付く目指す生徒像▶プログラム・仕組み入学時進路選択時322017 FEB. Vol.416

元のページ  ../index.html#32

このブックを見る