キャリアガイダンスVol.416
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決定の力となるわけです。そのような進路を決定するプロセスは、教育の目的である全人的発達を促すことそのものと言えるでしょう。 しかし今、高校生を取り巻く社会は急激に変化し、情報があふれ、進路先も多様化しています。今ある職業がどう変わるかもわかりません。SNSやインターネットを通じた非現実の要素もたくさん含んだ情報にもさらされています。今の高校生は、大人が考えるよりもはるかに変化の激しい環境の中に生きています。 その一方で、高校生は15歳から18歳という子どもでもなく大人でもない時期にいます。次の年齢段階である「社会的に自己責任を取ることが求められる大人の時代」に入るための最後の準備期間という青年期前期の特徴は、昔とそれほど変わりはありません。 そのような重要な時期に、社会環境の急激な変化はますます自己責任を取ることを求めていますが、果たしてその準備を今の学校は本当に考えているでしょうか。 学校の存在意義は、家庭や地域の状況に影響されず子どもたちの発達を促すこと。非常に重要な責任を担っています。もっと、決定することの困難さとその意味、生徒が決定できない・しないのはなぜかを、考えてみることが必要ではないでしょうか。 大学生でもよく「進路を決められない」という学生がいます。そこで、「何がきっかけでこの学部に来たの?」と聞くと「先生や親が勧めたから」と答えてしまう。「じゃあ、この学部に入ってつまらなかったでしょ?」と尋ねると、「そうでもない。勉強したことは面白かった。でも、この学部に入ったら進むべきだと教授が言う領域には興味がもてない」と答えるんです。つまり、先を決められないという発言は「先生の期待には応えられない。先生と自分がもつ将来のイメージが違う」という意志表示のこともあります。「決められない」という言葉は、生徒が、簡単には言葉で表現できない状態にいるということかもしれません。また、「決めていないのではなく、親や教師が期待することではない、ということだけは決めている。でも、具体的に説明できるほどはっきりはしていない」など、複雑な状況にいることを意味しているかもしれません。そこで、まずは「いろいろな過去の経験や成績のことなど、気がかりは何なのか」「決めたくないキッカケは何?」と尋ね、そこからきちんと対話をする。それがわかれば、あとは「一緒に探していこうよ」と、探索のプロセスをたどっていくことができます。迷っているなら、迷っている中身を「言担任教師が生徒の支援者になりづらい理由とは語化」できるようにする。それが教師の役割です。 ところが、担任教師相手だと、生徒はなかなか自分の困っていることを話さなかったり、ごまかしたりしがちです。それは、「成績」で評価される関係にあるからです。 生徒の側の防衛もありますし、先生方も成績で子どもを見てしまう。「成績じゃなく、あなたの将来を」と言ってみても、なかなか生徒は割り切れない。難しいんです。 そこで、「体制」が必要になります。特に、高校入学時の1年生の担任教師の姿勢は、大きなカギになります。例えば、中学から高校に進むときに、何がしたいかとは関係なく、成績で他に入れるところがなかったなど、ネガティブな動機で入学してくる生徒も増えています。そのような生徒を受け入れるわけですから、「この3年間で今までの分を取り返そうよ」くらいに、教員集団が意思統一しておくことが大切です。生徒にとっては、この学校で今までの人生自己責任の重要性が高まる社会へ生徒を送り出す責任と準備は、できていますか?図1 進路決定の力となる決定までのプロセス生徒新たな体験に挑戦する疑問をもつ新たな学びに挑戦する悩む踏み出す言語化するA大学に行くC学部に進むこれらの行動の繰り返しが、「進路決定のプロセス」Bという職業を目指す体験を振り返る一応決心する生徒の進路選択・決定力 どう高める?【Special Interview】なぜ進路を決定しない、できない?筑波大学 渡辺三枝子352017 FEB. Vol.416

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