キャリアガイダンスVol.416
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高校生活で養う課題意識・コミュニケーション力これからの推薦・AO入試指導合格につながる基礎固めのヒントは文学・美術に社会や大学で求められる力、進学してからの学びや将来のデザインを問われる推薦・AO入試。筆者の藤岡氏はプロジェクト学習(PBL)を実践し、その成果を生かした合格を多く生み出してきました。今号では、PBLに向かう基礎となる力をどう育むか、文学や美術にそのヒントを探ります。ふじおか・しんじ●1975年生まれ 慶應義塾大学大学院修了。数学や生物の大学受験対策を教える塾講師を経て、大学院でキャリア教育の重要性に気付き、研究を開始。小学生から社会人までを対象とした現場指導経験を有し、推薦・AO入試対策、社会人基礎力の指導や教材・プログラム開発を大手大学受験予備校や高校・大学で行う。島根県立隠岐島前高校をはじめとし、行政と協業し教育を通じた地方創生に取り組み、現在、北海道から沖縄までの高校魅力化プロジェクトに参画、高校連携型の公営塾を運営。第 9 回藤岡慎二株式会社Prima pinguino代表取締役連載 私は推薦・AO入試対策を、島根県海士町の公営塾での「夢ゼミ」をはじめとするプロジェクト学習を中心に実施してきました。社会課題や自身の興味・関心に向き合い、解決を目指す学習の中で、将来の夢やキャリアデザインを明確化すると同時に、社会に出て求められる力と学習意欲を醸成するプログラムです。 今までの実践についての講話を先生方にすると「今までの教育方法がガラリと変わるのでしょうか?」とよく聞かれます。確かに、課題発見・解決型キャリア教育、課題発見・解決型学習という言葉は、目新しさを感じるでしょう。 しかし、私は今までの実践から、既存の学校での教育内容は、今後のプロジェクト学習、さらには推薦・AO入試対策を進めるうえでの基盤になると考えています。今号では、中でも文学・美術の意義について考えていきたいと思います。 プロジェクト学習での課題のひとつは「生徒が熱中できるテーマを選択できない」ことです。こういった学習では生徒が地域や社会に興味をもち、飛び出し、多様な職種における課題、または社会課題に出会います。そして課題解決に取り組みながら自身の進路意識を高めていきます。しかし、多様な課題に出会うほど、どの課題に取り組むか迷うものです。 選ぶという行為は、選択肢と選択軸により成立するので、選択軸が重要となります。そして選択軸とは、生徒個人の価値観だと私は考えます。生徒自身がその課題やテーマに取り組む理由が、生徒の価値観などの内発的な動機から派生した場合、生徒は熱中し、主体的かつ意欲的に当事者意識をもち、取り組むでしょう。内発的な動機で臨む学びは「フロー状態」(※)や「ゾーン」とよばれる没入体験を生み、学びを最大化させます。 価値観を言語化したうえで、社会が求めていること、困っていること、解決しなければならないことが明確になれば、その結節点が社会における自分の居場所と出番であると実感し、生徒自身が果たすべき使命や夢、志が生まれます。しかし、この価値観をゼロから紡ぎだすことは当然、難しい。せめて価値観の例があると考えやすいものです。 私は価値観の例は名作といわれる文学作品の中にあると考えています。『若きウェルテルの悩み』や『ライ麦畑でつかまえて』、カフカの『変身』など主人公である青少年が考え、悩み、行動し、行き着いた旅の過程に彼ら彼女らなりの価値観が見え隠れする。多くの文学作品から、自分に似た主人公の群像から、自身の価値観を見いだすヒントが得られるのではないでしょうか。自分に似た主人公が登場当事者意識を生み出す価値観は文学から形作られる※フロー (英: Flow) とは、人間が物事に、完全に浸り、精力的に集中している感覚に特徴づけられ、完全にのめり込んでいて、その過程が活発さにおいて成功しているような活動における、精神的な状態をいう。ZONE、ピークエクスペリエンスとも呼ばれる。442017 FEB. Vol.416

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