キャリアガイダンスVol.416
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めのコミュニケーション力や課題発見・解決力をつけてほしいと思っています。具体的にはどうすればいいか。みんなで課題を話し合うには、まず『自分の考えをもつ』ことが大事。自分の考えがないと、意見を述べたくても話せないよね。だから授業では、文章を読んで考えをもつことから始めましょう。そのうえで『考えたことをもとに話し合う』ことをします」 平川先生の思いは生徒にすぐ通じたわけではない。1年生の授業で「わかりません」と答えた男子に、「わかりませんはダメ」と返すと、彼は「わからないことをわからないと言っちゃいけないんですか?」と困惑したという。平川先生は「言い方が悪かったね」と断り、「わからないは考えることを諦めること。少しでも言葉にすることから始めよう」と呼びかけた。 1学期のうちは、文章を読んで自分の考えをもつことに、多くの生徒が手こずった。人前で発表させてみても、内容は短く、本人はすごく恥ずかしそう。 けれども、授業構成を固定化し、単元ごとに文章要約・文章読解・スピーチをくり返すと(図1参照)、生徒たちは読んで考えて話し合うことを楽しむようになり、発表もいきいきとするようになった。 平川先生が授業構成で意識している点は3つある。ひとつは、単元の最初の授業で「文章を読んだあと、最後に○○のテーマについて自分が考えたことを各自生徒を見取って授業をデザインわかりません、とすぐ思考停止してしまいがちな生徒にも、文章を読んだり意見を出し合ったりすることで「思考を深める」ことの楽しさを届けたい。国語の授業でそんな深い学びに挑戦してきた先生の事例をご紹介します。取材・文/松井大助撮影/加来和博 今年度から八女工業高校に赴任した平川先生は、春に生徒に対して感じたことがある。「自分の考えを言葉にするのは、あまり得意ではないかな」ということだ。 八女工業高校は、優良企業や公務員に人材を輩出していて、地域の期待も高い。生徒も就職に向けて一生懸命勉強する。だがそんな生徒たちでも、国語の授業で意見を求めると「わかりません」と答えたり、単語でたどたどしく答える。 似たようなことは前任校でもあった。生徒に問題集の課題を出すと、選択肢のある問題はできても、記述問題では空欄が目立った。評論などの文章の読み方は表層的で、字数制限内で本文を抜き出す問題では、全体の趣旨はよくわからないまま、当てはまる箇所だけ探そうとする。 平川先生は、こうした状態を「わからない」のではなくて「考えていない」のだととらえた。「文章を読んで考える」楽しさや、「考えたことを表現し、みんなと話し合ってさらに思考する」面白さを知らないから、本当はもっと力があるのに、深く考えることを面倒くさがっている。 国語の授業で目指しているのは、生徒にその壁を乗り越えてもらい、思考力や表現力を一段高めることだ。その意図を、平川先生は授業で生徒にこう伝えている。「今の社会では、チームで協力して課題を解決していく力が求められています。私は国語の授業で、あなたたちにそのた八女工業高校(福岡・県立)もっと深く考えられるはずが「わからない」と答えてしまう読む・考える・表現するそのサイクルで学びを深める子どものころは、図書館の本を全部読もうとするほどの本好き。大学生のときに、友人とともに塾を立ち上げ、講師業務から入塾の面接まで、運営全般に携わった。卒業後、講師を経て、正規の教員に。現任校では研修主任を務め、進路指導部にも所属する。国語平川裕美子先生542017 FEB. Vol.416

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