キャリアガイダンスVol.416
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■ 八女工業高校(福岡・県立)5月【教材】論評「何のために『働く』のか」【読み方】要約の仕方を学ぶ/本文のキーワードを探す/生徒一人ひとりの要約を、まずはペアで、次に全体で検討する【スピーチテーマ】この文章のキーワードを抜き出し、それについて思うことをスピーチしよう(条件:自分の体験例を入れて意見を述べる)9月【教材】評論『水の東西』【読み方】要約に改めて挑戦/要約をペアで、次に全体で検討【スピーチテーマ】この文章の着眼点の面白さはどこにあると思うかスピーチしよう(条件:本文を引用し、それが面白い理由も説明し、自分の意見も述べる)11月~12月【教材】小説『羅生門』【読み方】朗読CDを聞きながら各自が疑問に思うことを3つ探すグループでこの小説を読んで解決したい「疑問点」を決める【スピーチテーマ】疑問点に対する答えを出したうえで、『羅生門』の主題について考えよう(条件:表現面で気づいたことなど根拠を示しながら意見を述べる)1時間目2時間目以降単元ラストの時間スピーチします」とアウトプットを予告することだ。そうすると、以降の文章読解では、各生徒がスピーチテーマを胸にきざみ、その点を自分の頭で考えながら主体的に文章を読むようになる。 2つ目は、文章の読み方や意見の組み立て方については、さまざまな手法を段階的に学んでいくことだ(図2参照)。 3つ目は、スピーチの評価・振り返りを必ず行い、活動自体が目的にならないようにすることだ。授業で何を得たか、何がまだ足りないかを明確に意識させた。 11月から取り組んだ小説『羅生門』では、生徒たちが読んで疑問に思った点をあげ、次にグループで話し合い、班ごとに一番解決したい疑問を絞り込んだ。それらの疑問点は、平川先生が問いたかった発問と見事に重なったという。そのうえで、時間をかけて本文を読み込み、グループごとに、根拠にもとづいて疑問点を解消することに挑戦した。 迎えた単元最後の授業。前から設定されていたテーマ、「羅生門の主題は何か」について各自がスピーチすることになった。生徒たちはまず、ペアを組んで発表し合い、ルーブリックを使って相手の「話し方」「内容」をABCで評価した。平川先生が「もうちょっとな部分にCをつけるのは相手への思いやりでプレゼント」と再三言ってきたので、余計な気遣いはいらない。次いで、高評価だった数名がみんなの前でスピーチをした(図3参照)。 それを受けて平川先生がまとめる。 「場所は平安京の入り口、時刻は暮れ方、主人公は大人と子どもの過渡期。共通するのはどんな設定? 境界線。では何の境界線? そうなんだよね。作者の芥川が書きたかったのは善と悪の境界線。本当の名前は羅城門なのに羅〝生〞門にしたのは? 生きることを描きたかったからだね。みんなが発表してくれたように、人間は善と悪の境界を生きている。まわりに影響される弱い一面もある。そのなかで何をどう判断し、どう生きていくのか。そうしたことが羅生門の主題といえますね」各学科の特色を生かした資格取得に力を入れており、ものづくりコンテスト、ロボット競技など各種大会に積極的に参加し、九州大会や全国大会にも出場。工業系の生徒の資格・検定合格および競技会などの成績をもとに表彰する「ジュニアマイスター顕彰制度」では、9年前に前期日本一になり、以来全国屈指の成績を収めている。近年は毎年就職率100%を実現。公務員になる生徒も多い。電子機械科・自動車科・電気科・情報技術科・土木科・工業化学科/1920年創立生徒数(2016年度)715人(男子602人・女子113人)進路状況(2015年度実績)大学8人・短大1人・専門学校19人・就職205人〒833-0003 福岡県筑後市羽犬塚301-4 0942-53-2044 http://yameth.fku.ed.jp/図1 授業構成の型(1年生「国語総合」の単元の流れ)図2 読み方や意見の組み立て方の段階的な学習図3 生徒のスピーチ抜粋私は、羅生門の主題について、人間のもつ善と悪の両方を表していると考えました。その根拠は、下人の、死人の髪の毛を抜く老婆への憎悪が善、老婆から追いはぎをすることが悪だと思ったからです。(後略)私は、羅生門の主題について、人間の気持ちは他人の影響を受けやすいと考えました。その根拠は、原典の今昔物語集では男が取った行動を淡々と書いているのに対し、羅生門では場面場面の心情描写が細かく書かれているからです。(後略)私は、羅生門の主題について、人の心は、まわりの環境や他人の言葉でどうにでも変わってしまうのだと学びました。その根拠は、本文で描かれている舞台は、天災などで荒れはてた京都で、悪を憎む心をもつ下人でさえも悪に染まったのは…(中略)自分の言葉で相手の心が良くも悪くもなるので、発言には十分に気をつけたいです。私は、羅生門の主題について、迷いがあるために与えられる第三者からの影響だと思いました。(中略)私は、自分の考えをしっかりともたず、迷ったあげく、判断を他人に任せる部分があります。私はこのままだと、自分の人生を他人にコントロールされてしまう可能性があることに気づきました。私は、羅生門の主題について、つらいときこそ踏ん張ることが大切だと思いました。(中略)私も、きついことや辛いことがあったときに、逃げたことがあります。でもそのあとは後悔や言い訳しか残らず、すっきりしませんでした。やり遂げたときや我慢できたときは、達成感や充実感が自分のなかに残りました。これから大変なことがあっても、中途半端に投げたりせずに、自分自身の成長につなげていきたいと思います。※読み方やスピーチの意見の組み立てについては、赤字部分のように段階的に経験値を上げていく要約(+疑問点探し)※本文を読み、ワークシートを参考に、各自要約をしたり、グループで「この文章で考えたい疑問点」をあげたりする本文読解ワークシートをもとに本文読解。ワークシートで取り組んだことは、単元の最後にスピーチするテーマについて、生徒自身が考えを深めるための材料にもなる(次ページHINT&TIPS参照)※羅生門の「ワークシート一式」「生徒による疑問点一覧」「スピーチ評価シート」についてはペアでスピーチペアでスピーチし合うことを相手を替えて2回行う相互評価「話し方」と「内容」両面をシートを使って相互評価全体発表机間巡視中に、相互評価のポイントが高かった生徒を確認。数名を指名し、全体に対するスピーチを求めるスピーチテーマ設定※初回で使うワークシートに、単元の最後の授業で生徒一人ひとりがスピーチすることになるテーマを提示生徒がグループごとにあげた疑問点は、後日用紙にまとめて配布。※ダウンロードサイト:リクルート進学総研 >> 発行メディアのご紹介 >> キャリアガイダンス(Vol.416)552017 FEB. Vol.416

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