キャリアガイダンスVol.416
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HINT&TIPS 「授業がよくわからなくて苦しい、といった思いを生徒にさせたくない」 国語の教師になったとき、平川先生が第一に目指したのはそのことだった。学校の現場で、学びが深まるほど自分に自信をもち、大きく変化するという生徒の成長のさまを見るにつけ、「授業の責任と可能性」を強く感じたからだ。 大学を卒業したのは、教員採用がほとんどなかった時期。まずは講師として勤務した。1校目は現任校でもある八女工業高校で、ここで平川先生は、理想をなかなか実現できない壁にぶつかる。工業高校で、卒業後は就職が一般的なので、生徒のなかには専門教科に力を入れ、国語には興味を示さない子がいた。進学しないので「入試に出るよ」という発破もかけられない。そういう生徒に、国語を学ぶ意義と面白さを届けたかった。 平川先生は、韻を踏む漢詩の授業に、流行っていたラップを取り入れるなど、授業をいかに生徒や社会と結びつけるかを模索した。 講師3校目では、企業研修に行った同僚の先生の話から、新たなヒントを得た。「その先生は、商品の箱詰め作業をしたそうで、『どの時間までにいくつを何のために箱詰めするのかはわからず、ただやらされてつらかった』と言うのです。学校の授業も、全体が見えないままその場その場で読むことや覚えることをやらされ、なおかつそれがどう役立つかもわからなかったら、生徒にとってはつらいだけなのではないか、と思ったのです」 だから、今からの時間を何のためにどう使うのか、全体を貫く骨子が生徒にもわかるような授業を目指すようになった。 そうして正規採用となった前任校から始めたのが、スピーチをする授業だった。 前任校ではまた、生徒が新聞記事を読み、要約して自分の意見も足したうえで、ニュースキャスターのように読み上げる、という授業も実践。その授業を行う際は、「新聞を読むこと≒社会の出来事に関心をもつこと」が文章の「読解力」とどうつながるかもきちんと説明している。 右のスライドを示すと、生徒たちは本文に書かれてない映画館の設定も読み取るのだが、それは知識に支えられた〝思考の枠組み〞がすでにあるから。同じように、ニュースにふれて世間の話題を知り、新たな思考の枠組みを得ると、さまざまな文章をより正確に読み取れる。だから「社会のことにもアンテナを張ろう」と。授業ができるまで1発表に対する条件や評価項目を工夫し自分に結びつけて読んで考えることを促す読んだことや調べたことの発表では、既存情報を抜き出しただけで、生徒自身はどう思うか「考える」ことをせずに終わることがある。だから平川先生は、発表に「体験例を入れる」「根拠を明らかにする」などと条件をつけたり、評価項目に「自分なりの考えが入っているか」を入れたりしている。2今回の教材で一番考えてほしいことを根拠にもとづき生徒自身が考えるように導く平川先生は教材で一番考えてほしいこと(例:羅生門の主題)をまず設定し、「そこを生徒が自分で考えるには足がかりとして何を思考すればいいか」(例:原典との違い)を思い描き、ワークシートを作る。生徒はシートに取り組むと最終テーマを考えるヒントを自分で発見していけるので、謎解きのような感覚を味わう。3学び合いや生徒のアウトプットの共有で生徒同士で思考を深めていく機会を増やすスピーチの授業でも新聞記事の授業でも、生徒たちは意見を出し合い、話し方やその内容をお互いに評価までする。また、代表に選ばれた生徒の発表内容は、原稿起こしをさせて配布して共有もする。そのように授業でさまざまな人の意見や見方にふれて思考を深めることも、平川先生は大事にしている。4生徒の実態をつかんだうえでその生徒たちに必要だと思う授業を展開平川先生は、生徒に合わせて授業を変えている。八女工業高校では、新聞を読む授業を3年生に実施。「社会に出る前に専門性だけでなく視野も広げてほしい」ためだ。一方、普通高校では同じ授業を1年生に行った。「早めに社会に目を向けさせて進路選択の幅を広げ、キャリア教育につなげる」ためだ。生徒がニュースキャスターに扮する授業は、1コマを①新聞記事の要約+意見(15分)、②グループ内で原稿読み上げ→相互評価→代表者選考(25分)、⑤全体発表(10分)という構成で実施。そのなかで要約の仕方、意見の組み立て方(小論文の型)、伝え方などを段階的に学ぶ。ワークシートや評価シート。読解力の源を体感できるスライド。生徒はこの文から、場所は「映画館」、ヒロとアヤカは「カップル」で、お金を受け取らないのは「おごりたい」から、アヤカが買ったジュースをヒロが喜んで受け取ったのは「お礼と感じたから」と、書かれていない情報まで読み取る。文章読解力や思考力の根底には知識に支えられた思考の枠組みが必要であることを伝えるための説明。授業の活動の意義を生徒が感じられるように 僕が平川先生から一番影響を受けたのは、授業をどのようにデザインするかです。積極的に動かないと、何も変わらないんだと実感しました。本校では生徒から授業アンケートを取っているのですが、今年度は、研修主任である平川先生が教科ごとに細かく分析してグラフ化してくださったんですよ。本当にすごいなと思いました。 授業の話もよくします。卒業したら社会に出る生徒が多い学校では、入試対策の授業が中心になると実用的ではないと思います。生徒が学ぶことを楽しめるようにしたくて、例えば僕の授業では、会話を通して嘘つきを当てる「ワンナイト人狼」というゲームを英語でしています。ただ、やりっぱなしの活動では何が目的なのかわからなくなります。その活動の何をどう評価するのか、考えることも大事。そうしたことも含めて、教科の枠を越えて話し合っています。英語科堤 健太郎先生活動をやりっぱなしで終わらせないために■ INTERVIEW※ダウンロードサイト:リクルート進学総研 >> 発行メディアのご紹介 >> キャリアガイダンス(Vol.416)562017 FEB. Vol.416

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