キャリアガイダンスVol.417
11/64

112017 MAY Vol.417ときのことです。一つひとつの絵画を言葉で説明するのですが、何から話していいかわからない。逆に、「その農夫の服装は?」「表情は?」「天気は?」と質問され、「暗い表情ではないけれど、天気も明るくはないし、雨も降っている」と答えると、「さーっと降っている感じ?」と、私より先に、そこに描かれている情景を、形容詞や副詞を交えて表現されたのです。ある作品に至っては、30分ほど、そんなやりとりを交わしました。 別れ際、私の口からは「こんな風に絵を見せてもらったことがありません。本当にありがとうございました」と素直な言葉が出てきました。相手の方からも「教えてくれてありがとう」とお礼を言われました。 ともすれば、情報をもつ側がもたない側に伝えることがコミュニケーションだと捉えられることもあるなか、対等に「ありがとう」と言い合えたことが素晴らしいと思いました。 私たちは、目が見えているというだけの理由で、その人以上に情報をもっていると思い込みがちです。しかし、視覚に障がいがある方も、その方なりに得た情報や、何十年かの人生のなかで培ってきた世界観があります。そこに気付くことが本当のリスペクトではないでしょうか。 相手が誰であっても同じです。自分が知っていることを与えよう、教えよう、押し付けようとすればするほど、自分に同調する人間が増えていくだけで、自分は何も変わりません。反対に、人とともに何かをしようとすると、自分が今までどれだけの先入観で、大切なことを取りこぼしていたか気付くことができます。 誰かの「ために」という気持ちは尊いものです。しかし、誰かの「ために」を焦りすぎて押し付けが過ぎてしまうと、自分ゴトではなくなってしまうことがあります。むしろ、誰かと「ともに」何かをすることで自分ゴトにすることが、いかに重要か。多様な分野の越境やコミュニケーションについて考え続けてきた私にとって、最大のパラダイムシフトでした。この意識の転換ができればダイバーシティはうまくいくはずです。ダイバーシティは、価値の共通項を探るよりも、異質さに注目することこそが成功の鍵だと考えます。 では、多様性にあふれた社会に対応する力を育むために、教育現場でできることは何でしょう。 例えば、答えが複数あったり、簡単には解けなかったりする問題について、生徒自身に考えさせ、話し合う機会を増やすこと。考え方は人それぞれ、という当たり前のことを実感するいい機会になると思います。 その点で、アクティブラーニングはとても有効ではないでしょうか。すべての授業をアクティブラーニングで行う必要はありませんが、授業中の一部、それも先生が教える前に、生徒が考える時間を10分間用意する。それだけで、生徒の人数分の意見が生まれると思います。先に先生が「これが正解」かのごとく話し出すと、どうしてもそこに寄ってしまい、多様性の芽を摘み取ってしまうこともあるでしょう。 また、自分の担当科目とは異なる先生との連携も有効だと思います。ある時事問題をテーマに、それぞれの授業で、別の切り口からアプローチしてみる。「社会制度から考えるとこうだが、科学的に捉えるとこうなる」という具合に、物事を多面的に捉える訓練になると思います。 企業やNPOなどの外部人材の活用も、生徒の視野を広げるでしょう。経産省のキャリア教育事業で委員会などに参加した際に感じたのは、教育に貢献したいという民間人の多さ人を肯定し、自分も肯定できる社会にアクティブラーニングは多様性を活かす力を育てる手段「多様性」で拓く生徒の未来【Interview】これからの社会でなぜ「多様性」が求められるのか

元のページ  ../index.html#11

このブックを見る