キャリアガイダンスVol.417
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172017 MAY Vol.417性と特許の革新性の関係を表したもの。多様性が増すと失敗も増え、平均値は下がるが、大ヒット(図内の右上の点)が生まれうる。一方、多様性が低いと成果は平均値に留まる。 ただ、多様であればイノベーションが生まれるわけではない。そのため、企業における企画・開発の過程も変わりつつある。注目されているのがアメリカ発の「デザイン思考」だ。 その大まかな流れは図3の通り。今までのように多数を対象にした調査で消費者の最大公約数的なニーズを探るのではなく、少人数を深掘りして、本人も気づいていないニーズを探り出すところから始まり、質より量のアイデア出しを経て、いいと思ったアイデアはすぐに試作品などの形にして試す。自由な発想とスピード感を重視した思考方法だ。 デザイン思考に詳しいオージス総研の竹政昭利氏は、こう解説する。 「特に多様性が重要なのは、アイデア出しのフェーズです。多様なメンバーがそれぞれアイデアを出し合うことで、一人では得られない発想に辿りつくことが可能になるからです。ここで条件になるのは、上司の権威や場の空気といった圧力の影響が排除されていること、また、発想法にマニュアルを作らず各自が自由に考えること、また、多様な意見をまとめるファシリテーターの存在です」 デザイン思考の方法を取り入れた会議では、アイデアは付箋などに書き、発表したら貼り出していく。くだらなく思えるアイデアでも構わない。ポイントは他人のアイデアのいいところを見つけ、褒めること。その「いいところ」が発展して、本当にいいアイデアが生まれることもあるし、褒めるところを考える過程にも思考を深める効果がある。 一昔前の日本企業の会議と比べると、やり方も雰囲気もまったく違う。新人の意見を言下に否定する上司などは、ここではむしろマイナス要因。多様性が重視される環境では、仕事の仕方そのものが大きく変わるのだ。 「デザイン思考は日本企業でも徐々に浸透しつつあり、若いネット系企業だけでなく、メーカーや金融などにも広がっています。この流れはもう止まらないでしょう。そこで課題になるのは失敗を恐れず挑戦するマインドセットです。実はこれが日本人には難しいところ。だからこそ教育の役割が重要になると思います」       ● 以上、企業の現場を見ていくと、この先、ビジネスの世界で活躍する人物像も明確になってくる。自分の頭で考え、自分の意見を言えること。コミュニケーションを通して相手を理解し、異なる価値観を受け入れられること。失敗を恐れないこと。これらの資質・能力は急には身に付けにくい。社会に出るまでにどう育んでいくかが大切になってくる。図2 多様性とイノベーションの関係図3 デザイン思考のステップオージス総研ビジネスイノベーションセンター フェロー竹政昭利氏圧力の排除や自由な発想が多様性を活かす条件デザイン思考の手法を採り入れた会議の様子特にここで多様性が問われるSTEP 2問題定義当事者たちも気づいていない問題を把握し、定義するSTEP 3創造目的の達成に向けたアイデアを質より量を重視して出すSTEP 4プロトタイプアイデアの実現性などを簡単な試作品などで確かめるSTEP 5テスト実際にユーザーに使ってもらい生の声を基に改善するSTEP 1共感インタビューや観察によって誰かの立場になって考える平均ブレークスルー高い高い低い低いイノベーションの価値参加者の専門性の多様性凡庸出典:Fleming Lee, Perfecting Cross-Pollination, Harvard Business Review ,September 2004.邦訳「『学際的コラボレーション』のジレンマ」『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』2004年12月号 より編集部作図「多様性」で拓く生徒の未来【Company Case】 変わる企業の働き方 その狙いを探る

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