キャリアガイダンスVol.417
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 立命館アジア太平洋大学(以下APU)は、大学改革を進めていた立命館が、グローバル人材の育成を目標に、2000年に開学した大学だ。「自由・平和・ヒューマニティ」「国際相互理解」「アジア太平洋の未来創造」を基本理念とし、新設の大学として、今までの日本にはなかった大学像を目指した。そのため、同学は他に例を見ないさまざまな取り組みを行っている。その最たるものが、「学生の50%を留学生に」「出身国を50カ国・地域以上に」「教員の50%を外国人に」という「3つの50」の目標だ。開学準備段階で、文科省も他学の大学関係者の誰もが無理だと考えていたそうだ。しかし、当時の教員、職員の懸命の努力で、開学時からこの目標を達成、現在も維持し続けている。実際にキャンパスを歩くと、さまざまな言語での会話が耳に飛び込んでくる。まさに多様性が環境として存在している場なのだ。 「日本の開国時の若者が世界に出て学んだ大学や、世界に大学が生まれた時代の大学とは、さまざまな場所から来た人々と議論を闘わせてお互いを知り、新しい価値をもって祖国に帰ってい多国籍の学生が混ざり、非認知能力を鍛えどこに行っても生きられる人材を育成くという、そもそも多様な場だったのです。時代の流れとともに、大学に求められることが、官僚や日本企業が求める人材育成、つまり『日本を支える人材』の育成へと変化していきました。グローバル化した現代では一国では語れず、どうしたら『世界を支える人材』を育成できるかが重要となってきたのです。本学は大学が本来あるべき姿に先祖返りしたのだと考えています」(近藤祐一教授) 世界中から学生が集まるAPUだが、同学があるのは立命館大学がある京都ではなく、東京でもなく、温泉地として著名な大分県の別府だ。大学の所在地は九州だが、国内学生について、近畿、関東出身者がそれぞれ17・6%、その他の地域出身者も満遍なく存在し、日本中から学生が集まっている。そのため、国内・海外問わず新入生の多くが「APハウス」と呼ばれる国際教育寮で生活することになる。 授業のカリキュラムでも国内生と国際生が必ず混ざる科目があり、授業でも生活の場でも常に混ざっている。言語も価値観も違う仲間と共に学び、生活することは想像以上に大変なことだ。共通言語は英語だが、ほとんどの学生が英語は母国語ではない。その英語を駆使して意見を闘わせることは、初めは大きなストレスとなる。それでもお互いの違いや共通性を理解しなければ同学ではやっていけない。諦めずに拙くても英語で話し合った情報を整理して、理解し合うことをやりきる気力、非認知能力が養われていく。 「こうしたことは学生たちを見ていて後付けで我々が気づいたことでしたが、グローバル化した社会に出ていけば、必ず同じ壁にぶつかります。その予行演習として必要な体験だと思います。それなら、相手のことを知りたいという2000年設立/アジア太平洋学部、国際経営学部/学生数5,810名(国内学生2,965名、国際学生2,845名)学校データ取材・文/長島佳子図1 APU開学時の目標と現在のデータ多様性は本来の大学の姿世界を支える人材を育成異なる価値観の者が集まり相手を知る葛藤が始まる動機や好奇心を持続させ、非認知能力の育成をカリキュラムとして進化させるにはどうすべきか考えるのが我々の仕事です。この17年間でカリキュラム改革に何度も取り組んできています」(近藤教授) 単に多様な場に学生を放り込めば〝化学反応〞が自然に起こるわけではない。時には問題が起こる危険性もはらんでいる。多様性の環境の中で、学生たちが新しい価値を生み出すためには、教員や職員側からの仕掛けが必要だ。しかしそれが意図的であると学生が気付かずに、主体的に仲間と関わり合い、問題や課題を解決しようと自ら動く多様な国籍/文化が混ざる場(大学)APUでは大学設立構想時に、「学生の50%を留学生に」「出身国を50カ国・地域以上に」「教員の50%を外国人に」という「3つの50」の目標をたて、開学の2000年から達成。現在も継続しつづけている。APUの3つの50●2016年のデータ学生の国内国際比率教員の外国国籍比率海外で学位を取得した教員の割合在学生の出身国・地域数は85。開学以来、138の国・地域の学生が学んだ。日本49.4% 国内23.3%国内学生50.5%国際学生49.5%外国籍50.6%海外76.7%202017 MAY Vol.417

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