キャリアガイダンスVol.417
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ような塩梅がさらに重要となる。それが仕組みやカリキュラムとして整えられている。 仕組みとしては、学生間の助け合いや学び合いを増幅させるためのピアラーニングを多用し、ピアリーダーの育成プログラムも設置している。例えば、多様性の場に新入生たちが戸惑ったときにサポートをする上級生をTA(ティーチング・アシスタント)として、ワークショップ系のカリキュラムで役割を担わせている。国際教育寮ではRA(レジデント・アシスタント)が運営リーダーを務めている。TA、RAも多国籍で、応募者が面接を経て選考される。昨年からはさらに進化させた「世界市民オーナーズプログラム」がスタート。優秀な学生ほど意見の対立が起こるため、それを学び合いに転化させる役割を担うピアリーダーだ。入試や授業でトップクラスだった学生にインビテーションを送り、その中から選考する。人を引っ張る力だけでなく、グループに貢献し、チームワークを育む力を必要とされる、現代に求められるリーダー像だ。 多様性の中で学ぶ力を育むカリキュラムのひとつが、「異文化協働ワークショップ」だ。国内生、国際生が3名ずつ入学部長アジア太平洋学部近藤祐一教授アドミッションズ・オフィス課長補佐鈴木 慶氏学生だけでなく教職員の方々にも刺激的なことが日々起きている言語を学ぶ授業以外のほとんどが、国内生、国際生が混ざって受講する授業だ。さまざまな国の言語や文化を紹介する「マルチカルチュアル・ウィーク」では、当該国・地域の学生以外も参加。国際教育寮であるAPハウスも多様性の場。学生たちは24時間多様な環境で過ごすことになる。別府の高台に位置するAPUのキャンパスと学生寮。別府市内を「下界」と呼んでいるそうだ。ワークショップの授業ではTAがアシストして、国内生、国際生の対話を活性化させる。FIRSTプログラムでは、異国の地で200枚以上のアンケートをとりながら目的地を目指す。 「あまりに大変だから早く辞めたい」と笑いながら語った近藤教授。1つの授業で日英2言語のカリキュラムを作成し、時代や目の前の学生たちに合わせてカリキュラムを改革し、世界中の大学と提携し…。その大変さを楽しんでいることがお話の端々に感じられた。特に大変なのは、毎年800名に及ぶ国際生の入試面接とのこと。どんな質問にも自分の言葉と意見で返してくる学生との対話は面白くて仕方がないそうだ。そんな国際生から刺激を受ける国内生の成長を見守るのも、教職員の方々の喜びなのだろう。APUのリーダーシップは小誌413号で特集した新しいリーダーシップだった。APUの環境では「目標共有」「率先垂範」「同僚支援」の力が否が応でも培われていくようだ。Editor'sVoice6名で1チームとなり、協働でプロジェクトに当たっていく。また、異文化理解を深めるカリキュラムとして、1年生の入学後間もなく行われる「FIRST」という3泊4日のフィールドワークがある。国内生は韓国、国際生は九州で、グループに分かれて、くじ引きで決めた目的地まで自分たちの力でたどり着くという異文化オリエンテーリングだ。目的地までの行程で、現地の人々にアンケート調査をするノルマが課せられている。事故が起きないよう、TAや教職員も同行するが、基本は手助けはせず、自身がマイノリティとなる環境で、失敗しても自分たちで解決させていく。この4日間でガラッと学生の顔が変わるという。高校生を大学生に、大学生をAPU生にしていく、必要な過程だ。 こうして多様性の中でもまれ、何度も失敗しては自ら解決する経験を積んだAPU生たちは、卒業後はさまざまな国、社会に巣立っていく。 「国際化のスピードに危機感をもった企業からうちの学生は多くの期待を頂いているようです。一方で、グローバル企業と言われている日系企業に就職した卒業生が、あまりに多様性を受け入れない体質に逆のカルチャーショックを受けることもあるようです。それでもつぶされないのがうちの学生で、あらどこででも生きていける世界市民としての巣立ちマイノリティな環境での学びで主体性が育まれる徹底した「混ぜる」教育ゆる可能性を模索していきます」(鈴木 慶氏) 「卒業生代表になる優秀な学生たちはスピーチで必ず『失敗こそ糧』と語ります。就職先の方々からは『APU出身者はどこに行っても生きていける』と言われます。それこそが、我々が育成しようとしている『世界市民』の姿だと思います」(近藤教授) 今後は、アジア各地にAPUのサテライト教室をつくり、「日本のAPUからアジア太平洋のAPUでありたい」と近藤教授は語る。また、約1万5000人に及ぶ同窓生を資源とした新しいカリキュラムも検討中だ。APUのさらなる進化に期待したい。「多様性」で拓く生徒の未来【学校事例 02】多様な国籍/文化が混ざる場………立命館アジア太平洋大学212017 MAY Vol.417

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