キャリアガイダンスVol.417
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 2012年、酒田市内にある4つの公立高校が統合し、山形県立酒田光陵高校は開校した。前身は普通科の県立酒田北高校と同酒田商業高校、同酒田工業高校、そして市立普通科の酒田中央高校という異なる4校。各校の伝統を受け継いだ普通科、工業科(機械科・電子機械科・エネルギー技術科・環境技術科)、商業科(ビジネス流通科・ビジネス会計科)、そこに新たに情報科も加わり、多彩な学科を設置する大規模校としてスタートした。 「酒田市は古くから日本海に通じた交易で賑わってきた街です。伝統的な酒田市民の気風を反映させた校訓『進取、創造』のもと、一人ひとりが輝ける未来を目指して立ち上げた学校です」(鈴木和仁校長) 学校づくりのキーワードの1つは、従来の学科の枠にとらわれない「学際的な教育」だ。設立準備にも関わった鈴木校長は、その狙いをこう語る。 「これからの社会で生きていくためには、『財務諸表が読める旋盤工』『ものづくりにも詳しい営業職』といった専門にプラスアルファをもつことが大切ではないでしょうか。産業界の変化は激し学科の枠を超えて学べる総合選択制を採用。高い専門性と幅広い視野・知識を育てる多様な学科を横断させた場いなか、今、高校の出口で求められるニーズだけを見るのではなく、生徒の人生を考えて『柔軟な専門性』を備えた人材を育てたいと考えました」 そのために導入した仕組みが、学科の枠を超えて多様な科目を学ぶことができる「総合選択制」だ(図1)。2年次は6単位、3年次は8単位、計14単位の総合選択枠を設置。他の学科も選択できる学科横断的科目群と、自分の学科の専門性を高めるための自学科科目群、合計147科目から進路や興味・関心に応じたカリキュラムを設計する。すべて学科横断的科目群から選択して幅広く学んだり、すべて自学科から選択して専門性をより高めたり、両学科群からバランスよく選択したり、さまざまなパターンが可能だ。 しかし、この総合選択制を軌道に乗せるには時間が必要だった。限られた時間数のなか、専門外の科目を選択するのは、自学科の科目を減らすことになる。実際に生徒の希望を取ってみると、学科横断的科目群を選択する生徒はごくわずか。総合選択制の目的を理解するのは、生徒はもちろん、科目選択の指導にあたる教員もすぐには難しかった。 そのため、大規模合併のいちからの体制整備に奔走するなかでも「学際的な学び」というキーワードは失うことはなかったが、まずは各学科がそれぞれの特色をもって自立することを最優先に取り組んだ。工業科は前身校時代から定評のあった工業系資格取得への取り組みや、地元企業との連携に引き続き力を入れ、実績で他学科を牽引。商業科は、合併後の就職希望者の比率の高まりに合わせて指導の充実を図り、就職面でも強さを発揮するようになった。情報科は文科省より「スーパー・プロフェッショナル・ハイスクール」の指定を受け、大学や企業と連携した高度で実践的な教育を行っている。そして普通科は、女子が増加したことに伴い看護・医療系や福祉系の進路希望者が増えており、その方面の実績や指導ノウハウを積み上げてきた。 学科ごとの充実化と同時に、学校としての一体感の醸成にも力を入れた。合併前から元の4校の生徒会交流や合同授業などを実施。合併後は、生徒も生徒会を中心に「自分たちで新しい学校を作っていこう」と活動。学校行事のほか、地域の伝統的なイベントである酒田まつりに3学年全員で参加して山車を引くなど、結束を強めてきた。 教員も多様性をもつ集団として力2012年設立/普通科・工業科(機械科・電子機械科・エネルギー技術科・環境技術科)・商業科(ビジネス流通科・ビジネス会計科)・情報科/生徒数1086人(男子564人・女子522人)/進路状況(2017年3月実績)大学58人・短大27人・専門学校98人・就職210人・その他12人 ★平成26年度スーパー・プロフェッショナル・ハイスクール(情報科)学校データ取材・文/藤崎雅子4つの学科の幅広い科目で「柔軟な専門性」を育む各学科の充実・自立と並行し生徒・教員共に一体感を醸成を発揮していくため、同校の職員室は学科ごとではなく、全学科の教職員が入れる大部屋に。学科によって教員の価値観や生徒との関係性には特徴があるが、その枠組みを超えて状況が見えることで、互いに刺激を受け合っているという。 「例えば工業科は、危険を伴う機械作業も行うなか、教員は生徒と師弟のような関係になります。専門学科の先生の面倒見の良さが普通科の先生にとっては新鮮でしょうし、またその逆もあ工業科は前身校時代から地元企業と連携してさまざまなものづくりに取り組んできた。その関係性を合併後も生かしている。情報科では情報系大学進学を見通し、情報テクノロジー、情報システム、情報コンテンツの3分野を学習する。262017 MAY Vol.417

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