キャリアガイダンスVol.417
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自分にどう落とし込まれたかを注視させる。単元ごとの振り返りでは、生徒が参画力や傾聴力などを自己採点し、何を学んだのか自由記述。次の授業では、「前回の授業から少し自分を変えてみよう」と呼びかける。 「相手を見て話をすることも難しかったのが、一方的に自分が話すだけでなく人の話を聞くようになり、さらに人の意見を受け入れるようにと、徐々に身に付ける生徒もいます。個別の『自立活動』にはない、集団の中で互いに認め合いながら学ぶ効果の大きさを感じています。また、学年横断で行っていることも、上級生のリーダーシップを養う機会になっています」(古山先生)  モデル事業に取り組んだ3年間、古山先生が中心となって「自立活動」や「心理学」を実施しただけでなく、他の教員も大学教員や臨床心理士などの専門家による講演会や研修を受講し、多様な生徒への対応方法について学んだ。 「私たちの意識はだいぶ変わってきている」と根本教頭。多くの教員が「この生徒にどう対応したらいいか」「こんなケースはどうすべきか」など古山先生に相談するなど、個別の配慮が目立つようになった。意識の変化は一般の授業にも影響。障がいの有無にかかわらず誰にでもわかりやすい授業を目指し、チョークの色使いや授業展開を工夫したり、アクティブラーニング型授業への挑戦をする教員が増えている。特別支援学校のほうが経験が長い古山先生は、「高校の先生方は、必要性を感じたことはどんどん吸収し、自分なりに応用してアウトプットしていくのがすごくうまい」と感じているという。 「特別支援教育と言わなくてもいい。必要性を感じ、ほんのちょっと意識する。すべての生徒に対しての配慮、支援のアプローチがちょっと変わるだけで、学校の雰囲気は変わっていくのではないでしょうか」(古山先生) モデル事業は昨年度で終了したが、中学校との連携、授業や校内環境のユニバーサルデザイン化、教員の研修などの取り組みは継続、発展させていく。「10年先のために少しずつ種を撒いていきたい」と古山先生。高校現場が変教頭根本 巖いわお先生進路指導主事(取材時)根本直美先生特別支援教育担当(取材時)古山 勝先生あらゆる高校で大切にしたい個性を認めて伸ばす日常的配慮「心理学」の授業の感想・学んだこと「課題解決法」の演習では、4~5人のグループを1つの店舗と見立て、バレンタイン商戦に向けてどう売り上げをあげるかというテーマに取り組んだ。まず、各自の考えを付箋2枚ずつに記入。それを持ち寄って話し合い、1枚の企画書にまとめる。全員が同じ枚数の付箋を記入することで、全員が考えのアウトプットする機会をもつ。振り返りシート。参画力、自己主張力、傾聴力、協働力、行動力、許容力の観点で10段階で自己評価を行う。 佐原高校の事例は、障がいの有無にかかわらず、個々の能力・才能に目を向けることの重要性を物語っている。障がいの傾向が見られる生徒はいない、多様な生徒がいても問題は起こっていないという高校にも、共通して欠かせない視点だろう。 「自立活動」や「心理学」といった授業は、同校がモデル事業の指定を受けたからこそできたことかもしれない。しかし、生徒にとって過ごしやすい環境づくりに最も影響したのは、こうした特別な授業や仕組みより、むしろ先生方1人ひとりの日常的な配慮であったように思われる。指定校でなくても、一個人からでも、始められることがありそうだ。●「絶対に否定しない」というルールのもとでやっているので、意見が出しやすくてよかった。●人前で話すのが苦手なことがよくわかった。本当にできなさすぎてびっくりした。●1人で考える、理論を知る、というのももちろん大切だし楽しいけれど、人の心を考える授業(グループワークや「体制化」)も自分の世界が広がって楽しかった。●自分のことだけ言っては意見はまとまらないので、自分の気持ちをコントロールすることが大事。●相手の意見を肯定的に受け入れて話し合いに参加することで、その場の雰囲気が明るくて、たくさん意見が出やすく気持ちが良いこと(を学んだ)。●「心理学」を受けてから、自分の心の変化がつかめるようになった。また、自分とは違う考え方に触れられたことで得られるものが多く、成長できたと思う。●「あ~! あれも心理学なのか!」と思うこともあり、楽しいです。自分の弱いところも見つけることができるので、将来大人になった時にはこの授業を生かして仕事や人間関係に結び付けたいと思います。Editor'sVoiceわることで、同校生徒の多くが進む大学での生活がスムーズにいくことも期待される。 「ある生徒は小学校時代から変わった子というレッテルを貼られていたのですが、本校でよい仲間に巡り合えたことでその場の状況を読めるようになり、大学進学後は人の良い面を見つけられる人になっていました。そうやって周囲の対応次第で、ゆっくりでも改善していくのだと実感しています。クラスという小集団で過ごす高校生のうちに少しでも成長させて、一気に人間関係が広がる大学への接続を図っていきたいですね」(根本進路指導主事)個別に配慮する意識が授業改善にも効果学校設定教科・科目「心理学」生徒の声「多様性」で拓く生徒の未来【学校事例 06】多様な個性を認め合う場………佐原高校292017 MAY Vol.417

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