キャリアガイダンスVol.417
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 在京外国人生徒(以下、外国生)や海外からの帰国生徒(以下、帰国生)に公立の教育を受けさせることをミッションとし、1989年に設立された都立国際高校。都内有数の進学校として知られ、推薦・AO入試の進学者が多いことも同校の特徴となっている。また、2015年度には、国際バカロレア(以下IB)コースを開設した。 現在は7割が都内在住の日本人生徒(以下、一般生)で、外国生と帰国生が3割だが、一般生の中にも海外在住経験者が少なくない。帰国生には、現地校に通っていた生徒と、現地の日本人学校に通っていた生徒がおり、帰国生の最終滞在国や外国生の国籍はさまざまで、例年35カ国以上の多様なバックグラウンドをもつ生徒たちが入学してくる。こうした生徒たちが一堂に会することで、一般の日本の高校にはない異文化が混在する環境が生じる。そこには生徒同士が多様性を認め合うという「隠れたカリキュラム」が存在するという。 「例えば、時間感覚が一般生と海外から来た生徒では異なります。時間厳守の一般生の姿を見て、海外からの生徒異文化と向き合う過程で自身と向き合いIBコースの学びを、学校全体に活かす多様な国籍/文化が混ざる場(高校)たちが日本の社会を学ぶのはよくあることです」(荻野 勉校長) 「1年生の最初は、お互いの異質性が理解できずぶつかることがあります。時間が経てば、生徒たちは踏み込んでいい部分とそうでない部分を自ら学び、不文律として一定の距離感を見つけていきます。教員は介入せずに自分たちで乗り越えさせます」(鈴木真人副校長) 「多様でぶつかりあった状態でも、生徒たちには『学校をよくしたい』という想いがあります。大人には難しいことでも、15歳の彼らは無媒介なぶつかり合いを相互理解に変えていきます。そのときに異質なものに対して『自分とは何か』を考えるのです。つまり、異文化理解を進めることは、自分自身を知ることにもなります。自分自身を知って異質なものに向き合ったときに主体的に動けるようになります。そうなると、多様性のメリットを強く得ることができるのです」(岩﨑昇一先生) 異質が混ざり合うだけでなく、その異なりの背景を理解するためのカリキュラムも準備されている。ひとつは、2学年と3学年に設定されている「国際理解」科目だ。日本文化や伝統芸能、外国文学、映像、演劇などさまざまな科目から選択できる。これらは座学だけでなく、例えば伝統芸能を学ぶ授業では、能を学んで、能楽堂で発表会も行っている。演劇や映像の授業でも、生徒たちが作った作品の発表会がある。身体でパフォーマンスすることは、自己表現力の育成に結びつくからだ。また、3学年では外部から講師を招いて講演を聴く「異文化理解」の科目がある。講師によってはすべて英語で講演することもあるという。講演後、生徒たちは毎回レポートを書いている。 「レポートだけでなく、本校では多様性、主体性を核とした言語活動を、重要視しています」(岩﨑先生) その言語活動の結集が、2学年、3学年で行う「課題研究」だ。生徒たちは自らテーマを設定し、日本語または英語で論文を仕上げる。 「テーマは、インドの経済について、差別についてなどから、ボディビルダーになるために自ら体をはって実験した結果をまとめた生徒もいるなど多岐にわたっています。英語で世界の貧困問題について書いた日本人生徒もいます。いずれも世界を見てきた自らの体験に基づいたものが多く、説得力があります」(岩﨑先生) 「中間発表の際、論文としてのエビデ取材・文/長島佳子課題研究論文の優秀作品は、冊子にして全校生徒や学校関係者に配布している。「隠れたカリキュラム」で、異質性を受け入れていく世界を見た体験を活かした秀逸な課題研究論文ンスを求めると、ちゃんと自分たちの足で探したり、実験したり、データを揃える工夫を考えてやってきます。異文化理解を繰り返す日常で主体性が育まれているので、やがて自ら動き出します」(鈴木副校長) こうして完成させた論文を推薦・AO入試の自己推薦資料として進路に直結させる生徒も少なくない。進学先の大学からは、他校の生徒にはない視点であることに高い評価を受けるという。 「推薦やAOは従来から積極的に指導しているため、本校にはノウハウの蓄1989年設立/国際科、国際バカロレアコース/生徒数729名(男子161名、女子568名)/進路状況(2017年3月実績)国内大学142名、海外大学11名、専門学校3名、その他63名学校データ多様性・主体性を核とした言語活動の結集【課題研究のテーマ例】●異文化順応●ヴァイツゼッカーが伝えたこと●イスラム国は何故勢力を拡大 することができたのか●日本の中小企業の役割●国連と日本●個性を伸ばす教育●原子力発電の必要性●絵本の翻訳302017 MAY Vol.417

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