キャリアガイダンスVol.417
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いが、他者の話をきちんと理解したり、疑問に思ったことを尋ねる、相談する、思いを伝えられるようになることで中退や、就職後の早期離職を予防したいという考えからだ。近藤先生は前任校の経験から、都会の限定的な人間関係の中で育ってきた生徒たちが地域で多様な大人に触れることで得るものは大きいと確信していた。アイデアが良ければ実際に採用される可能性もあるリアルな課題を設定することで、主体的に社会と関わり、やり終えた時に達成感を得られるようにカリキュラムを組んだ。 初年度は弘明寺商店街の担当者と相談し、ゆるキャラのオグジ&サグジメジャー化計画と自転車の逆走防止策の2つをテーマとした。メジャー化のためのTwitterアカウント開設案は商店街に受け入れられ、運用を開始。2年目はそのTwitterのフォロワーを増加させる計画、そして新たに南区役所が企画した食による誘客策「みなみやげ」のブランド力UP計画がテーマとなった。 オリエンテーションでお題とその背景である地域課題を伝え、2回目はグループワークの練習をしながらアイデアを出し、3回目にアイデアを掘り下げて企画書にまとめるのが11月まで。企画に沿った調査は生徒の自主性に任せ、課外の時間を使って行う。さらに希望生徒対象で、高校生に仕事の楽しさを伝えているNPO法人Like!Workによるプレゼンテーション講座が開かれ、約30人が参加した。昨年度、調査に行ったのは各部約3割2003年創立/総合学科/3部定時制/生徒数1116人(男子615人、女子501人)/進路状況(2016年度) 大学・短大39人、専門学校67人、職業訓練等2人、就職112人、アルバイトその他進路未定56人左から芳野壮太先生、近藤哲史先生(ガイダンス部)黒田貴志先生、谷 兼太郎先生今年度のお題発表時用に近藤先生が作ったスライド。区役所職員にも登場してもらいリアル感を演出地域貢献活動は授業の時間帯に合わせ、商店街や学校周辺の清掃(Ⅰ・Ⅱ部)や、市の啓発活動のためのティッシュ配り(Ⅲ部)を行う。ほどだったが、「みなみやげ」に選定された商品を食べ歩いたり、商店街で70人にインタビューを行ったチームもあったそうだ。 商店街と区役所の担当者も招くポスターセッションで幕を閉じたプロジェクトは、2年目から各部の若手担任が運営を担当した。生徒100人以上を対象に、担任団と共にファシリテーションを担った先生方は「小さな変化かもしれないが見違えるような成長を見せてくれた」と口々に言う。「グループワークをするなら休みたいと言っていた生徒もいたのに、最後には一緒にがんばったチームで写真を撮る姿が見られた」(Ⅰ部・谷先生)、「やれるのにやる気を出さなかった生徒でもスイッチが入った途端、自分たちで動くようになった。放課後残って準備をしたり、反省をしてそれを活かすことができるようになった」(Ⅱ部・黒田先生)、「人前で喋るのが苦手だった生徒が、インフルエンザに罹っても最後の発表には絶対に出たいと言い張ったり…」(Ⅲ部・芳野先生)。その変化を大きな変化として認めてくれる先生方がいるからこそ、生徒たちの達成感も大きなものになったのだろう。 「学校は部分社会と言われるように、教員も生徒も狭い世界に閉じがちですが、地域に出て活動すると越えられなかった壁を驚くほど簡単に越えてしまいます。街中でティッシュを配るというだけでも学校では作れない緊張感があり、達成感を得ることができるんです」と近藤先生は言う。「人間関係に偏りのある高校生時代に、知らない人に考えを正しく伝えようとトライした経験は大きいと思います」(芳野先生)。「本当は社会全体で教育をすべきですよね。学校の中だけでなく生徒の、現実社会の中での経験をもっと増やしてあげたい」(黒田先生)。地域社会と関わることなく育つ子どもも多い都市圏であればなおさらだ。「生徒が街中で何かしていると声をかけてくれるおじいさんおばあさんがいるんです。文化祭にも地域の人が来てくれるようになりました」(谷先生)。教員チームの思いは一致しているようだ。移転から4年、今春の卒業生の進路未定率は19%まで下がった。地域で育った生徒たちと高校のこれからに、さらに期待したい。小さいけれど見違えるような変化地域で活動すると簡単に壁を越えられる472017 MAY Vol.417

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