キャリアガイダンスVol.417
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演劇プログラム「起業を考える」自らの演劇公演のほか小中高校生に向けたコミュニケーションワークショップも取り組む団体「劇団衛星」による指導を受けながら進める。自分たちだけでやっていると課題は見えにくい。グループ間で演劇を見せ合ってアドバイスをもらい、修正しながら仕上げていく。3年生になると、それまで学んだ演劇的手法やプレゼンテーション資料作成の方法などをフル活用して発表を行う。「探究ナビⅠ」の振り返りコメントより●私が一番、苦戦したのはこのテーマ(演劇)でした。(中略)消極的で参加してくれない人もいたし、自分なりにがんばれる人もいたし、いろいろな性格の人がいるなかで、自分がどれだけがんばれなかったか実感しました。もっと自分が一番、積極的にできるようになりたいと思いました。●中学生の頃は、自分はおとなしくて、人とあまり話せなくて、自分の意見も言わなかったです。だけど、この学校の1年になって、この「探究」の授業のおかげで友達がたくさんできて、自分からも意見とか話せるようになりました。●自分の考えを単に伝えるだけでなくて、(中略)私はこの授業を通して「相手の話をしっかり聞く」「自分の考えをわかりやすいように考えて話す」の2つを目標にしていました。自分のなかでは少しは達成できたと思うけど、2年でもっとがんばろうと思いました。●人と協力する力が一番、身に付きました。今までは、自分さえよければなんでもいいという自己中心的な考えをしていたけれど、人の意見も聞いて協力した方が何倍もおもしろいし、楽しいということに気が付きました。これからも人と協力し合って楽しもうと思いました。最優秀賞を受賞した「かさばらない2つ穴用バインダー」を考案したグループのレポートより今回の発表は、私たちに「人脈」の大切さを教えてくれた。最初の私たちは個人の意見のみの「考え」を交換し商品を作っていた。しかしアンケートを通じさまざまな人の「意見」「想い」「考え」を感じ、私たちの商品に対する考え方は一変した。さまざまな人から意見をもらうことによって、物事や商品を様々な視点から考えられるようになったのだ。「買い手」や「聞き手」の想いも踏まえて考えられるようになった。それが「人脈」を通し、私たちが学び成長できた最大の点だと考える。そして、その成長点から様々な人の意見を反映させ、より精度の高い商品を考えられた。私たちはこの発表が私たちだけの力で出来たとは考えない。様々な人々の力があってこそ完成したものだと考える。そういう「考え方」が探究活動で得られたものである。 「狙いは起業家の育成ではありません。どこに進学・就職するかという近視眼的な将来から、もっと先に目を向けさせるための企画です。今後、科学技術の目覚ましい進化に伴い、価値観も大きく変わっていくでしょう。今は人気がある仕事も、コンピューターがやるようになるかもしれません。そんな未来の可能性も考えながら生きていってほしいと考えています」(山元先生) 3年間、さまざまなテーマで課題に取り組んできた経験で、生徒は大きく成長する。 「1年生の時は細かい指示が必要でしたが、3年生ではかなり生徒の自由にさせています。難易度は上がっていますが、話し合いもスムーズで、しっかり1つの形を作り上げられるというのは、成長したんだなということを実感します」(探究科担当・小山真弘先生) 新設校として進路実績も注目されるなか、初期の「探究ナビ」は短期的な進路実現のための指導と、長期的な視点に立ったキャリア教育との間で揺れていたという。目前の出口を優先し、3年生のプログラムに補習を入れたこともあったが、「うまくいったとはいえない」と山元先生は振り返る。 「この子らの人生が豊かになるように、先を見通したプログラムという筋を通すべきとの思いを強くしました。それは正解なのか?なぜ正解なのか?といった問いにじっくり取り組めるのは、『探究ナとだ。地域の魅力を調べる「あびこ探検」や、歴史・福祉・防災のテーマ別フィールドワークを経て地域社会に対する提言を行う「分野別調べ学習」など、社会と絡めたプログラムになっている。また、インタビューやアンケート、資料活用などの探究活動に必要なスキルの学習も行う。1年生でも調べ学習は行うが、その調べ方や発表方法に求めるレベルは上がる。 「1年生の仕事調べは調べたことを発表できるだけでOKです。しかし、2年生では、調べた内容をしっかり自分のなかに落とし込んで、それについて意見を言えるようになってほしい」(藤林先生) さらに、自ら意見を発することによって周囲を「巻き込む」という動きも期待する。 「あるグループが障害者マークが付いているのに狭い公衆トイレを見つけ、車いすでも使用しやすいような改善を提言したところ、すぐ対応されたということがあビ』の時間だけですから」(山元先生) 現在はそうした軸を堅持しながら、進路指導部と連携している。「探究ナビ」のプログラムに、「適性検査」「ものづくり講座」「オープンキャンパス指導」など進路指導部主導の内容も挿入。協働性を重りました。こんなふうに自分たちが気付き、行動したことで社会が変わるかもしれない、ということを知るきっかけになればと考えています」(山元先生) 3年生「探究ナビⅢ」のテーマは、「社会の一員として主体的、創造的に課題を解決する力の育成」。3年間の総まとめとして、未来に関することを題材とした課題研究がメインとなる。昨年度からは「起業するなら?」という設定で、これからの社会に役立つ新しい商品やサービスの企画・立案に、1学期は個人、2学期はグループで取り組んでいる。さらに今年度は、コンピューターの性能が人間の脳を超えると予測される「2045年問題」の視点も盛り込み、より具体的な未来像を描かせる予定だ。視野を広げる経験を基に進路に向き合う「2045年をどう生きる?」過去を踏まえて未来を考える542017 MAY Vol.417

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