キャリアガイダンスVol.417
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■ 瀬谷高校(神奈川・県立) 学びの場を生徒たちに創ってもらうべく、授業の態度目標に掲げているのが「全員達成」だ。学習目標を一人も残さず達成することを皆で目指す。そのためにやってほしいのが「率先垂範」「同僚支援」。高原先生はそのことを口頭でもプリントでもくり返し発信している(図1参照)。 3学期、2年3組の授業でのこと。プリント忘れがないか確認すると、女子生徒が前に出た。すかさず高原先生が言う。 「ほら、この最初に出るの、率先垂範。いいよ。忘れないほうがいいけどね」 今日学ぶのは「波」について。生徒たちはまず、予習して考えてくることになっていた波の具体例を書き出すことになった。その際に高原先生は小さなワークを導入した。A4用紙を3×3マスになるように折り目をつけ、そのうえで1マスごとに具体例を書くように求めたのだ。すんなりできた生徒もいれば、折り方がわからず戸惑う生徒も。高原先生が促す。 「わからなかったらどうする? 辛かったら聞けよ。まわりも助けてやれよ」 具体例を何個書けたか、多い順に挙手してもらうと、トップは7個書けた男子生徒だった。全員の拍手で称賛。高原先生は、別のクラスであがった例を紹介したあと、「ほかにもある?」とその生徒に尋ねた。彼は「津波」と回答。だが、津波は物理学の波の定義には当てはまらないので、高原先生がその点を補足した。男子生徒の顔がややこわばり、それを見て取った高原先生が続ける。 「おーい! いいんだよ。非難しているわけじゃない。いつも言うけど、先頭切って間違ってくれたほうがいいんだよ」 続いて、スポーツ観戦で見られるウェーブを皆でやってみて、波の性質を考える授業展開へ。高原先生がとうとうと語る。 「これまでほかのクラスで、失敗をくり返してきたんだよ。最初のクラスでは二列14人にウェーブをやってもらったの。成功した、と俺がいい気になっていたら『ウェーブをやった人はその様子を見学できていない』と突っ込みが入って。で、次のクラスでは全員が見学できるよう、二列ごとに3回やったら、今度は時間がかかるんだよ。どうしたらいい?」 ある生徒が、スマホでウェーブを撮影して動画で共有することを提案した。 「ICT時代だね! だけど俺、旧世代だからさ……。俺だって他の先生みたいにICT使いこなしたいよ? でもそれができない、今の俺でもやれることは?」 全員でやるのは、という声。高原先生にもその腹案があったので、生徒にぐるりと輪になってもらって、ウェーブをやってみた。一人ひとりの位置は変わらず、伸びたり縮んだりの上下動だけが輪を伝わる。つまり、波というのは物体が動くことではなく、振動が伝わることなのだ。波長や振幅についても高原先生が説明し、生徒は波を体感しながら学びを深めていく。 次の時間では、学んだことをもとに、用意されていた設問への答えを4人の班で小型のホワイトボードにまとめることになった。前の時間は個々の学習。人によって抜け落ちがあるかもしれない。だから、学習目標を全員達成できるよう、生徒同士で知恵を出し合って確認するのだ。 「振動が」「周期ってさ」などなど、おのおのが学んだことを思い出し、話し合ってボードに説明や図を書く。予習してきたことをその場で話す生徒もいた。「予習すれば余裕ができて授業が面白くなるぞ」と高原先生が常々言っているからだ。 制限時間が来て、各班がボードを黒板に貼り出した。どの班もしっかりとした書き込み。ただ、チャレンジ問題の最終設問だけはどの班も回答できなかった。 高原先生が率直な思いをぶつける。 「僕、ここだと思う、君たちの課題は。この部分を誰も予習していなかったとは、思えないんだよ。でも、やっていたら悪いかな、と遠慮して言い出せなかったのなら残念。そこで前に出られるようになってほしい。じゃあ、必要なことをメモしてください。僕の説明よりも教科書よりも、みんながまとめてくれたもののほうが絶対にわかりやすいから」 高原先生の物理の授業には、定番の型がない。生徒の意見や反応をそのつど取り入れ、毎時間、クラスごとに、授業の内容がどんどん変化するからだ。「より高い目標に向かって積極的に行動する生徒の育成」を目指す。四方に「瀬谷市民の森」が広がる恵まれた自然環境の中で、地域と連携した学校づくりを推進。地域団体と連携した学校周辺の清掃、地域の幼稚園や養護学校と連携した活動などに取り組んでいる。平成26年度に「地域等連携教育」研究推進校に。教育課程では部分的に選択制を取り入れ、生徒一人ひとりのニーズに応えた学習指導に力を入れている。普通科/1974年創立生徒数(2017年度) 945人(男子504人・女子441人)進路状況(2016年度実績)大学230人・短大17人・専門学校/各種学校30人就職6人・その他27人〒246-0011 神奈川県横浜市瀬谷区東野台29-1 045-301-6747 http://www.seya-h.pen-kanagawa.ed.jp「率先しよう」「助け合おう」「間違えていい」とくり返す個々の生徒ががんばるほど全体の学びも深まる授業用紙に3×3マスの折り目をつける作業。三つ折りをするわけだが、やり方がわからず手が止まる生徒や、4×4マスに折ってしまった生徒も。「教えて」の姿勢の出番だ。学んだことを班でボードにまとめるワーク。「絵が得意な人は絵を描いてもいい」「書くのが苦手ならボードを取りにくる役目もあるぞ」と高原先生はチームへの貢献を求める。生徒たちが書いたボードをもとに「必要なことをメモしてください」と高原先生。ただ写すのではなく、メモは「理解したことを自分なりにまとめることが大事」と伝えている。592017 MAY Vol.417

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