キャリアガイダンスVol.417
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HINT&TIPS 教壇に立つ前、高原先生は「教員とはブレーキ役」と思っていたそうだ。高校生というのは、体育祭や文化祭など何かに熱をあげると、勢いあまって暴走もするはず。それをなだめるようなイメージ。 ところが働き出してみると、現実の高校生の姿は、想像とは全然違っていた。 「初任は職業高校だったのですが、この子たちの熱はどこにあるの? という感じで。必要なのはブレーキじゃなくアクセルだったのか、と衝撃を受けました」 2校目は進路多様校で、ここでは生徒が「熱を発散していました。出し方を間違えるな、という注意が必要でしたが」 3校目は中堅校で、またしても生徒から熱をあまり感じられない。4校目が今の瀬谷高校。こうした中堅校の生徒が「自分はこの程度」と自ら天井を決めてしまい、ポテンシャルを発揮できずにいる、という傾向は年々強まっていると感じていた。 「中堅校は生徒がおとなしく、教員も楽だと言われることがあります。僕は、いいのかそれで、と思うんです。この子たちに『やればもっとできる』と感じさせたい。だから授業では、物理も学んでほしいけれど、それ以上に〝勉強の仕方〞を身に付けてほしいと思っています。それも一人でやる勉強ではなく、団体戦で皆で力を高め合うような勉強の仕方を、です」 「団体戦の勉強」を目指すうえでヒントになったものがある。前任校から注力してきた部活動だ。テニス部の顧問として部員と練習に励むなかで、ただ上手な子がいるよりも、実力はどうであれ勝利を目指して最後までボールを追いかける子がいるほうが、チーム力が底上げされるのを実感した。目標に向かって率先してがんばるその姿に、まわりが感化されるからだ。 対戦チームの姿勢から学んだこともある。そのチームは一般校ながら、選手の試合を他の部員がそばで見守り、生徒同士でフィードバックまでし合っていたのだ。その代は歴代以上の大会成績を残した。 同じころ、高原先生はキャリア教育担当となり、さまざまな勉強会に参加、そのなかで組織やチームを機能させるリーダーシップの理論も学んだ。これがすごく腑に落ちたという。皆で「目標の共有」をして「率先垂範」「同僚支援」。高原先生は、そうした場を、普段の授業でも生徒と一緒に創ることを目指した。授業ができるまで1個々の生徒の言動がこの場を創ることを何度でも何度でも強調する授業で読み終えた人から着席するワークをしたら、ある生徒が「まわりが座ると焦る」と意見。やり方を修正すると、他の複数の生徒も「よかった」と。高原先生は「言ってくれた子がいたから変わった」と強調した。そのように、生徒のがんばりや勇気がこの場をより良くするのだとくり返し伝えている。2授業をより楽しむための予習と学びを自分のものにする復習を薦める班学習では「私はしゃべれない」と弱気な生徒も。高原先生は「予習してきてみ? 言えるかもよ」とまず投げかける。即興ではできなくても、予習すれば余裕をもって話したり聞いたりできる。予習は授業を面白がるための準備であり、そこで学んだことを深めてものにするのが復習だと伝えている。3生徒にアウトプットを求めることで個人およびチームの思考力を高める高原先生は、「アウトプットする(書き出す・説明する等)」のが「考える」ことだと位置づけ、生徒にそれを求めている。言語化すれば考えが明確になるし、自分の考えをアウトプットして人の意見も聞くと、一人では気付けなかったことも発見し、チームの皆で考えを深めたり広げたりできるからだ。4他の先生の授業にアンテナを張り学習のつながりや多様性を生徒に示す高原先生は、他の先生の授業をのぞき、雑談でも授業の話をしたうえで「○○先生も考えてから話せというだろ?」など他教科の学習とのつながりを生徒に示唆。一方で、型がないのが高原流だが、「△△先生は型で考えろというだろ? 両方やれば自分に合うのがわかる」と学習の多様性も伝えている。ばね状の玩具を使った実験。写真は横に揺らして横波を作ったもの。では縦波はどんなもの? ばねの両側から波を送ったらどうなる? 生徒たちは興味津々だった。自分の授業の試行錯誤を、研修で学んだKP法(紙芝居プレゼンテーション)で伝えた高原先生。生徒からもアイデアを募集。ブレーキ役をするつもりが必要なのはアクセルだった部活動で実感したチームの成長に必要なこと 本校の生徒の多くは、まだ6~7割ぐらいしか力を出していないように感じるんですね。だからこそ我々には「高校生をあなどらない」ことが求められていると思っています。いやいや、君たちの力はこんなもんじゃない。もっともっと力を発揮できるはずだ。そのことを我々が自覚し、生徒に本気で呼びかけていけるかどうか。 高原先生に感じるのはプロ意識の高さです。生徒と真正面からぶつかり、新しいことにどんどん挑み、うまくいかなければやり直して(笑)。そうして授業に一生懸命に取り組む姿を見せているから、生徒もがんばろうという気持ちになるのだと思います。 言い続けることも大事ですよね。私自身、始業式や終業式や学年集会では「一段高いステージへ」とくり返しています。見える景色が違ってきて、進路の選択幅も君たちの世界も広がるから、と。校長岩﨑彰夫先生一段高いステージへ生徒が目にする世界を広げたい■ INTERVIEW602017 MAY Vol.417

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