キャリアガイダンスVol.431
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山北高校(神奈川・県立) 神奈川県西端の地域に位置する県立山北高校。文系・理系の他に、スポーツリーダーコース(2016年度まで募集)を前身とするスポーツ系のカリキュラムをもち、「スポーツの山北」として地域から親しまれている学校だ。同校生徒について、藤田正樹校長は「とても素直で、言われたことは120%を目指して努力する」と高く評価する一方で、課題感も指摘する。 「中学校までのリーダー経験などの不足もあると思うのですが、自分で考えて行動する点に物足りなさを感じます。しかし、彼らにはスポンジのような吸収力がある。経験の機会と時間を与えれば、大きく伸びると考えています」 そんな生徒たちを地域と共に育てていこうと、今年度より、総合的な探究の時間と学校設定科目を中心とした探究プログラムを立ち上げ、1学年から学年進行で取り組んでいる。 同校がある地域は、少子高齢化や産業の縮小などが進むなかでどう活性化させていくかという大きな課題をもつ。これまでも地域イベントの手伝いや近隣の小・中学校との交流などに呼ばれることで地域と関わってきたが、その関係性を発展させ、今度は生徒側から地域課題に切り込んでいく。 「地域から与えられたことに取り組むだけでなく、生徒が地域の課題を見つけ、解決策を提案していくことを目指します。そのなかで自分の軸をもって考え、行動しようとする志を育んでいきたいと考えています」(藤田校長) 地域協働による探究プログラムは、SDGsをベースに「未病」と「防災」の2つの切り口で組み立てている。プログラム設計のリーダーである野秋貴浩先生は、その経緯をこう語る。 「『スポーツの山北』ならではの切り口で、SDGsにつながる取組を模索するなかで、まず県が県西地域活性化の一つとして取り組んでいる未病改善プロジェクトに着目しました。スポーツに関連して健康や身体づくりに重点を置いてきた本校の強みや、生徒の興味・関心を活かし、住民の健康支援につなげてはどうかと考えたのです。さらに、同校が広域避難所に指定されていることから、『防災』も生徒の身近にある地域との接点と捉え、もう一つの切り口として設定しました」 3年間の大まかな流れは、まず1学年で「地域を知る」に重点を置いた活動を行い、2学年では学校設定科目で「未病」「地域防災」「山北」のいずれかを選んでそれぞれについて学びながら、写真右から、校長・藤田正樹先生、連携推進グループリーダー兼1学年主任・野秋貴浩先生。ポスターに描かれた地図の緑色部分が、同校のある山北町の位置。【1学年】地域を知る~フィールドワークを通して~「未来探究」(総合的な探究の時間)【3学年】地域創生のための提言~地域・コンソーシアムへの発信~「未来探究」学校・地域の特色未病防災他の教科・科目関連づけ【2学年】課題の発見、解決策の検討~コンソーシアムの活用~「未来探究」「未病」※「山北」※「地域防災」※※学校設定科目。いずれかを選択取材・文/藤崎雅子「与えられた課題をこなす」から「自分で考えて行動する」へ学校・生徒の強みを活かしリアルな社会から学ぶ地域連携によるカリキュラムの概要1942年開校/普通科/生徒数630人(男子373人・女子257人)/進路状況(2019年3月卒業)大学66人・短大19人・専門学校等47人・就職62人・その他13人学校データリアルな想像力を刺激する探究プログラムで「未病」「防災」を切り口に自治体や企業と連携、地域に課題と解決策を提案できる力を育む実践事例レポート地域と共に生徒を育てる学校182020 FEB. Vol.431

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