キャリアガイダンスVol.431
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などの思考をトレーニングする場が学校。学びの場を社会に広げ、役割分担をして力をつけることが社会に開かれた教育課程の一つの側面だと思います。 カリキュラムマネジメントの目的は、一人ひとりの生徒のなかで学びが有機的に結びつくこと。自ら問いをもち、自らのもつ知識や考え方を活用する事で、学びは組織化されます。当事者性のある課題に出会い、教科の力を動員して解決にあたれば、教科学力も伸びます。ここにもまた、学校を社会に開く意義があるでしょう。 「目標を学校と社会とが共有し〜社会との連携・協働によりその実現を図っていく」といわれても抽象的でイメージしにくいために、何から始めたらよいのか、誰と共有したらいいのか、と頭を抱える先生も多いことでしょう。実際、目標を共有するのも、協働をスタートさせるのも、簡単なことではありません。 そこでまず一人の生徒から始めてみませんか。「この子は今、こういう興味関心や意欲、能力がある。この子をこうしたい」と思ったらそれを思い当たる校外の大人たちに伝えてみる。生徒の探究テーマや進路志望を伝えて、地域で体験や調査をさせてもらうということでもよいでしょう。 目指す生徒の成長イメージを伝えて送り出し、受け入れ側から生徒の様子を聞き取ったら学校でさらに必要な支援をする。「HR担任から役場の〇〇さんにパスを回したら生徒がこう成長した」といったエピソードの蓄積が大切なのです。事例が蓄積すれば、生徒たちの顔を思い浮かべながら、教育内容や目標への建設的な意見を伝え、チームになってくれる地域の人も増えるはずです。 一人の生徒をチームで育てることから始め、事例や連携先を増やしていきましょう。そのうえで、多様な興味関心をもつ集団をどう育てていけばよいのかを考えること、それがカリキュラムマネジメントです。◆ Society3.0から4.0以降への移行は、学校だけでなく社会全体に突きつけられている課題です。私は高校教員時代に生徒の学力が崩壊していく様子を肌で感じていました。平成のゼロ年代中ばまでは、生徒は普通に勉強をしていました。就職氷河期が訪れ、真面目に勉強をして大学に行っても就職ができない時代になったら、それまでの「勉強する意味」が通用しなくなりました。ゆとり教育で打ち出された理念とは裏腹に、勉強から逃げる生徒たちを、興味関心を伸ばすことではなく、管理することで学力を維持しようとしたのが平成の時代です。 学校が生徒のためにとあれもこれもするようになったのと、家庭や地域の教育力の低下、地域の活力低下は同時並行して起こったことです。新しい時代に向かうために、これ以上学校だけで何かをするには限界があります。子どもたちをどう育てたいのか。地域と対話しながら、協働しながら新しい学校の姿を創っていくことで活路が開けます。 社会と学校が、相互に影響しあいながら、プラスの変容を遂げていく。そのなかで、幸せに生きていける生徒をともに育てる、そんな未来を一緒に作っていきましょう。地域と学校が相互に影響しあいプラスの変容を遂げる社会に「目標の共有」は一人の生徒をチームで育てることから342020 FEB. Vol.431

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