キャリアガイダンスVol.431
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進路指導部主任山下澄雄先生 「17、18歳の生徒にとって、数ある仕事の中から一つを選ぶのは易しいことではない」。そう語るのは、進路指導部主任の山下澄雄先生。特に注意が必要なのが、大手企業に就職するケースだという。 「大手企業の場合は、例えば自分は車のこの部品を作りたいと思って入社しても、他のものを作る部署に配属されたり、異動になったりすることがあります。大手であればあるだけ本当にやりたい仕事ができない可能性もあるのだと生徒に理解させることに、困難さを感じます」 このような大手企業への就職のメリット・デメリットや企業の所在地域などを含め、どういう企業・仕事なのかという理解が深まらないまま、また自分が働くイメージがもてないまま安易に就職先を選んでしまうと、ミスマッチが起きかねない。これを防ぐために同校では、1年次からさまざまな経験を通して仕事の実情や働く現場を知る機会を設けている。 1年次に行われる特色ある進路行事には、「産業現場見学会」と「先輩の話を聞く会」がある。同校では、1年次は2つの類(工業Ⅰ類・工業Ⅱ類)に緩やかに分かれて幅広く学び、2・3年次はさらに7つの系(工業Ⅰ類:電子機械系・電気技術系・情報技術系・工業化学系、工業Ⅱ類:建築系・建設技術系・インテリア系)に分かれて専門的な知識・技術を身につける類系システムをとっている。生徒一人ひとりの希望と適性に基づいて系を選択できるよう、1年生全員を対象に行われるのが「産業現場見学会」だ。鹿児島市内にあるメガソーラー施設や住宅展示場、指宿市にある地熱発電所など、各系に関係する産業現場を見学する。各分野の学びの先にある実際の仕事を、肌で感じてもらうのが目的だ。また、「先輩の話を聞く会」では、生徒が自分を投影できるよう、生徒と年齢の近い就職して年数の浅い卒業生を招き、良いこともそうでないことも本音で体験談を語ってもらう。 1908年に創立され、110年を超える歴史をもつ伝統校。地元では「鹿工」の愛称で親しまれ、同窓会の結束も強い。また、全国大会に出場するなど部活動も盛んで、文武両道の校風を受け継いできた。校訓は「精進・創造・誠実」。特に「創造」には、「工業人として未来に向かって創造する」という思いが込められている。例年、1学年の約8割が就職、約2割が進学という進路希望状況で、公務員志望者も増えている。就職希望者に関しては、18年連続で就職率100%を達成。うち、9割を超える生徒が第一志望に内定を決めており、就職先も県内や九州地方にとどまらず全国各地に広がっている。求人数は年々増えており、2019年度は過去21年間で最高の件数だった。 求人は多く業種・職種も多様で、就職を希望する生徒にとっては恵まれた環境であるものの、売り手市場だからこその課題もある。業務内容や企業風土への理解が浅いまま給与や福利厚生面で選ぶ、友人が希望するからという理由で志望するなどの安易な選択をした結果、就職後にミスマッチが起こるケースが出ているのだ。こうした課題を解決するために、同校では「さまざまな経験を通して仕事や働く現場を知ること」に重点を置いた進路指導を実践。3年間を通したキャリア教育を行い、自分が何をしたいのかを深め、実際に社会で働くイメージを描いたうえで、自分に合った就職先を選択できるよう指導している。鹿児島工業高校(鹿児島・県立)取材・文/笹原風花大学25人、短大7人(高専編入含む)専門学校など35人、就職284人就職の内訳は、県内企業70人、県外企業197人、公務員16人、自己就職1人。業種別では製造業・鉱業が約半数を占め、建設業が続く。1908年創立/工業Ⅰ類(電子機械系・電気技術系・情報技術系・工業化学系)、工業Ⅱ類(建築系・建設技術系・インテリア系)/生徒数1066人(男子919人・女子147人)中小より大企業の方がいい?安易な選択が悲劇を招く現場を見て先輩の話を聞き、応募前に訪れて最終確認する362020 FEB. Vol.431

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