キャリアガイダンスVol.431
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思考フレーム機能小論文の要素で必要な箇所学習指導要領との対応評価できる試験形態知識理解思考知識を習得し、理解する根拠(Reason)の中にある事実の認識知識・技能一問一答/暗記で対応できる選択式問題論理分析思考知識を分析し、推論する意見(Answer)を導いたロジック思考力・判断力・表現力等記述式問題批判創造思考これまでの知をクリティカルに捉え、統合し、新たな知を創造する提案(Proposal)学びに向かう力人間性等小論文など多面的評価にかかる試験形態「意見」として可能性のある候補を挙げ、吟味し、最も正当性のあるものを選び(もしくは複数の意見を統合し)、限られた字数の中でそれらを表現します。 ここでは数ある事実を俯瞰して捉えることが必要です。どういう因果関係や相関関係のもとで問題が起こっているのか、微視的な視点だけでなく巨視的な捉え方をします。分析の過程で想定できる数々の意見は、意見を発する人々の立場や価値観と紐づきます。例えば、環境問題は、自然環境保護を含めた自然科学の世界から語る人もいれば、経済・政治・法といった社会科学からのまなざしもあり得るし、文化・芸術といった人文科学的な捉え方もできます。 そうしたさまざまな立場を想定したうえで、自らの意見に責任をもって論じる必要があります。なぜその立場の意見を採用したのか、なぜこの意見が重要だと言えるのか(重要性)・問題だと言えるのか(問題性)を考え抜かなければなりません。 そのとき必要なのは「これからの未来をどうしたいのか(自らが世界をつくる者である意識)」「自分は何者なのか(自らの才能・価値の自覚)」という軸をもち、判断することです。複数の立場や価値観の取捨選択をする際、自分軸と照らし合わせ、どれが理想の世界に最も近い解なのか、妨げている要素は何なのか、ということを考えるのです。そして、その検討過程を「根拠」として示し、意見に正当性を与えます。 はじめまして。大学受験予備校や私塾、高校で小論文や志望理由書、面接等、総合型・学校推薦型選抜に関わる指導や、「総合的な探究の時間」のコンサルティングを行っている神﨑史彦と申します。過去に某大学の入試制度設計に携わった経験もあり、総じて、高大接続の領域で活動しています。 こうした経験を基に、全国の高校の先生方と教育観やノウハウを分かち合う機会に恵まれたことを嬉しく思います。この連載では、私が携わるさまざまな領域の中でも「小論文」に焦点を当てます。なお、指導の実際については次回以降とし、初回は指導の核となる要素を整理するところから始めます。 小論文の核となる要素は根拠(Reason)、意見(Answer)、提案(Proposal)と、それらを導き出す思考フレームです。また、地球に存在する全生命が理想とする姿を想定し、それを妨げる要素を捉え、解決の方向に導く方法を常に念頭に置くことが大切で、それを高校生と共に考えることが使命だと感じながら現場に立っています。 小論文では、出題者から与えられた設問(Question)に対する「意見」を文章で示すことが求められます。つまり、設問に対する意見を述べるという条件付き作文が小論文です。答案を作成する際、小論文における「意見」と「根拠」の関係性AO・推薦指導で実績を残してきた“カンザキメソッド”開発者、神﨑史彦氏が、実際に行っている授業を基に小論文に必要な思考を身に付ける方法を紹介する新連載。第1回目は、考え方の基本をお伝えします。● 活用する思考フレーム● 小論文の要素設問(Question) =出題者が提示した問題①根拠(Reason) =事実+重要性・問題性②意見(Answer) =根拠を基に推論して得た解③提案(Proposal) =目的(why)+戦略(how)+戦術(what)542020 FEB. Vol.431

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