キャリアガイダンスVol.432
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 2019年4月、地球的な視野に立ち、地域社会と国際社会の平和と発展に貢献する人材の育成を掲げ、大阪市立水都国際中学・高校が開校した。大阪市が国家戦略特区プロジェクトとして立ち上げた、全国初となる〝公設民営〞の学校だ。市の方針に基づいて、指定管理法人に選定された大阪YMCAが学校運営を担い、世界120の国と地域で活動するYMCAのネットワークを活かした先進的なグローバル教育の実践を目指す。 「幅広い生徒に門戸を開く公立の公共性をもちながら、民間が培ってきたノウハウや実績を組み合わせて、新しい学校をつくっていきたい」。そう語るのは、開校準備から参画している太田晃介教頭だ。教員は同法人が採用し、海外出身者が約4割を占める。「本校が目指す教育や学校づくりに魅力を感じ、何かしら挑戦したいことがあって自ら手を挙げた意欲的な先生ばかり」と広報主任・上うえとこ床 敦さん。そんな熱意ある多彩なプロフィールのメンバーが集まって、新しい学校が動き始めた。  目指す人材の育成に向けて、学校理念に掲げるのはENCOURAGE・ENGAGE・EMPOWERという「3つのE」だ(図1)。これをベースに現在、教員と生徒が共に学校づくりに取り組んでいる。従来の学校が備える要素を最初から整えることは敢えてせず、開校時点では校則、生徒会、部活動、校歌などがない状態だった。 「目指すのは、すべて用意して『こうしなさい』と生徒に与えるのではなく、生徒の『こうしたい』から始まる学校。生徒一人ひとりが社会に出たとき自己決定して生きていけるよう、失敗してもいいから、生徒が『3つのE』をもって自ら考え、決断、決定するプロセスを踏ませたいと考えています」(太田教頭)2019年開校/グローバル探究科/生徒数160人(男子47人・女子113人)※高校1・2学年のみの人数学校データ生徒が作った生徒会の組織図2お話を伺った高校教頭・太田晃介先生(写真中央)、進路指導主任・郭 山植先生(同右)、広報主任・上床 敦さん(同左)。大阪を担う人材の育成に新しい形態で挑む生徒会や校則は理念に基づき生徒が作る水都国際中学・高校の学校理念図1取材・文/藤崎雅子水都国際中学校・高等学校は、生徒や教員が新しいことに挑戦し続けられるようサポートします。自分自身を成長させ、生涯を通して学び続ける素地を養うために、失敗も成功も奨励します。GAPS*チーム課外活動GAPSを管理。取り組みたい部活動やプロジェクトがある生徒からの申請~承認を行う。生徒の興味関心を惹き、生徒自身が中心となって主体的に関わることができる、充実した創造的なプログラムを通して、水都国際中学校・高等学校の生徒は、学術的な専門性と国際社会で活躍できる資質・能力を獲得します。SNSチームモラルをもって安全にデジタル活用できるよう、生徒のSNSへの投稿ルールや申請の管理などを行う。統括水都国際中学校・高等学校の生徒は、様々な事象を批判的に思考する方法、意思決定をする方法、チームで協働する方法を学びます。生徒と教員は世界に目を向け、グローバルな環境下で自信を持って行動します。風紀チーム生徒自身がよりEncourageできるようにするための行動について話し合い、学校全体への定着を図る。水都国際中学・高校(大阪・市立)国際バカロレアを活用した公設民営校の立ち上げ世界を視野に大阪を担う人材を育てる学校を生徒と共につくり上げていくENCOURAGEENGAGEEMPOWERチームリーダーチームリーダーチームリーダー*GAPS:Global Action Project in Suito222020 MAY Vol.432

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