キャリアガイダンスVol.433
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て提出物等の状況を把握し、指導。⑤自学状況の把握…生徒が「学習計画・記録表」を記入し、その画像を送付。それに対して担任がコメントを返信。 こうした取組を校長としても積極的に推進し、自宅にいる生徒との心のつながりや学びのつながりを機能させていました。 さて、社会の状況や日々の生活はビフォーコロナの時代とは大きく変わり、しかも、新型コロナウイルス感染症の完全な収束には少なくともあと2年程度はかかるということが予測される中で、今回の長い休業期間は、生徒に、将来どんなアフターコロナの社会が到来するのかを考えさせる絶好の機会となりました。 そこで、5月の大型連休前に、私から全生徒に対して、「因島高校生に送る未来(2022年5月)からの手紙〜アフターコロナの社会」を作成するという課題を提示しました。まず、BBB(Build Back Better、災害の発生後の復興段階において、次の災害発生に備えてより災害に対して強靭な地域づくりを行うという考え方、創造的復興)について説明した上で、2022年の5月、自分自身や周りの大人の生活、社会はどうなっていると思うかを、自分の世界観を大切にBBBの視点から考え、作成してもらいました(表現方法は問わない)。 多くの生徒が、「ビフォーコロナの生活がいかに有難いものか分かった」「オンライン学習など自分のことは自分でやることの大切さと大変さを学んだ」「地元の人が地元の経済を回していく意識を持つことが大切だ」といった意見を述べており、私自身とても勉強になりました。生徒が先生の細かい指示がなくても、自分で考え、動いて課題に取り組んだことは、主体的に学ぶ力につながったと思います。まさに、ピンチをチャンスにできたのではないでしょうか。 最後に、全国の先生方へメッセージをお送りさせていただきます。ビフォーコロナの時代の学校生活を取り戻すには相当な時間を要します。だからこそ、今在籍する生徒に対して、卒業時に「コロナだから割を食った」という気持ちを持たせない取組を行うことは学校の責任です。学校再開後に大切にしたいのは、臨時休業期間を通して進めてきたオンライン学習のノウハウを活かし、対面学習とオンライン学習との有機的な連携を図る対応だと思います。その際、改めて、それぞれの学校が卒業までに生徒に身に付けさせたい資質・能力を整理し、その実現に向けて生徒に本質的な問いを投げかけ、その解決を図るべく正面から果敢にチャレンジする機会を創っていくことが大事だと思うのです。 指導内容を精選し、自宅学習用の課題を引き続きオンラインで配信し、自宅学習で生じた疑問を集約し、対面学習で反転学習を行うというやり方もあるでしょう。そして、本来対面学習は、オンライン学習とは異なり、生徒の表情を的確に観察したりクラスの空気感を敏感に察知したりする中で、生徒からの質問や教師の説明に対する生徒の反応をもとに、生徒と対話しながら柔軟に授業を創っていく場、まさに教師としての授業力を発揮する場として力を入れていきたいところです。 生徒一人一人が卒業までのロードマップを描き、それに向かって力強く歩んでいけるよう、全国の学校の先生方が一丸となって生徒を支援する、これぞ、コロナ禍の続くこれからの学校の教職員に課せられた役割だと思います。先生方、大いに連携して取り組んでいきましょう。よろしくお願いいたします。くらた・ゆうじ●筑波大学卒業後、広島県立尾道北高校に赴任。県立御調高校、県教育委員会を経て、2004年に開校した県立広島中学・高校の総括主任、06年より同主幹として新設校のベースづくりや教員のまとめ役を担う。県立御調高校校長、県立尾道東高校校長などを歴任し、19年は県教育委員会総括指導主事として県立学校長支援に奔走。20年より県立因島高校校長に就任し、「とにかく生徒・教職員の可能性を伸ばしたい」との一心で職務にあたっている。生徒全員が描いた「アフターコロナの社会」これからの学校が大切にしたいこと休校中の課題「因島高校生に送る未来からの手紙」として制作された、ある生徒のイラスト作品。因島の自然と生徒一人一人の個性を表したカラフルな図形を背景とし、コロナ禍を乗り越え再び生徒同士が手を取り合う姿を描いたという。「コロナに負けない因島高校生として、協力して今後の因島高校を築いていきたい!!」とのコメントも添えられた。292020 JUL. Vol.433生徒たちは何を思い、教師はどう動いた? そして、見えてきたもの今、この時の学びを未来へつなぐ

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