キャリアガイダンスVol.435
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442020 DEC. Vol.435先生: 何も書けていないようだけど。生徒: 特にこれをやりたいっていうのが、ないんですよね。先生: とりあえず2年からは文系コースを選んでいるよね。生徒: ああ、数学あまり得意じゃないし…。先生: 進学とか、就職とか、そのあたりはどう?生徒: う~ん、親は進学してもいいよって言うけど。先生: そうか。いいじゃないか。こんなことを勉強してみたいって、目標が見つかるといいな。生徒: はあ…。生徒: 看護師をこのまま目指すのか、最近ちょっと迷い始めていて。先生: 何か気になることがある?生徒: 中学からやっていたダンスで、スタジオの先生から本格的にやらないかって誘われて…。先生: まあ、部活のようなものだと思ってやればいいんじゃない?生徒: 練習が厳しいから、本格的に始めると受験との両立が難しいかなと。先生: でも、将来はやっぱり看護師になりたいんだよね。生徒: このまま内定先に就職していいのか、迷い始めて。先生: え? なぜ迷い始めたのかな?生徒: 新型コロナで経営は大丈夫なのか心配だし、自分がやっていけるのかも心配。 先生: 入社前は、みんな心配になるものだよ。大丈夫。何とかなるから。生徒: え~、そうかなあ…。 先生: 第一、もう今更、内定辞退とかできないよ。生徒: そうなんですけど…。ケース1ケース2ケース3進路調査に何も書かず、決められないという1年生看護師を志望していたが、迷い始めた2年生就職先が決まったものの、将来が不安な3年生「決められない」は悪くない。そこから一緒にステップを踏んでいく 教員としては、まず何かしらの明確な目標を決めて、それに向かってがんばってほしいという思いが先行しがちです。しかし、クランボルツは、キャリア優柔不断はむしろ歓迎すべきことであると言います。変化の激しい世の中で、偶然の出会いを最大限に活かしていくためには、決めていないからこそ、広い心で柔軟に物事を捉えることができると考えます。また、本心はどうでも、明確な職業名を挙げることで周囲を安心させる、ごまかしのような行為への危惧も指摘しています。そこで、まずは今の「決められない」をしっかり支持し、何かしらの「行動」につなげていけるような問いかけをしてみるといいでしょう。そして、その行動のなかから学習ができるように支えていく必要があるでしょう。チャンスの可能性を問い自分で行動を導き出す手助けを将来への漠然とした不安ではなく具体的な不安を解消する行動を考える クランボルツは、偶然をただ待つのではなく、自らつくり出し、それを活かすことが大事だと言います。失敗を恐れるのではなく、リスクをとって失敗をし、そこから学ぶことも重視します。その視点から、今訪れているチャンスはどのようなものか。もし両方を追うと、自分の人生はどのように変わると思うか。逆に、何もしなければ、どのように変わると思うかなど、チャンスの可能性を問い、生徒が自ら次の行動を導き出す手助けをしましょう。また、真剣に取り組もうとするほど視野が狭くなり、一度失敗したら取り返しがつかないと思い込みがちです。なので、一度決めたらそれが絶対なのではなく、いくらでも計画は変更できることを、一緒に行動計画を考えながら伝えられるといいでしょう。 未知の世界に入っていくとき、人は大きな不安を感じます。特に、学生から社会人へという大きな変化を前に、必要以上に心配しがちなのは当然です。しかし、いくら「大丈夫」と言われても、不安の種は解消しません。そこで有効なのは、実際に働いている先輩の体験を聞いたり、入社後にどのようなステップで成長していくかを具体的に示してもらうなどを通じて、自分自身が働いているイメージをもつことです。そのための行動リストを作ってみたり、入社後にありたい自分像をイメージして、それを実現するために今からどんな行動ができそうかを具体的に考えてみるなど、「一歩ずつ」始める行動を一緒に考えてみるといいのではないでしょうか。

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