キャリアガイダンスVol.437
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502021 MAY Vol.437 福井市にある普通科単独校の羽水高校は、これからの社会を生き抜くための7つの力(自己肯定感・傾聴力・省察力・協働力・課題発見力・課題解決力・市民性)を「USUI7(ウスイセブン)」と名づけ、学校教育目標として掲げている。2018年に生徒に育みたい力についての意見を全教員から集め、「協働的な活動に前向きで粘り強い一方、やや控えめなところがあり、思考の言語化や批判的思考には課題がある」といった生徒の特徴を踏まえて設定したものだ。この設計に携わってきた探究企画部・永田卓裕先生は、同校は7つの力のなかでも特に「自己肯定感」を重視していると話す。 「本校入学者の多くは、良くも悪くも目立つ経験をあまりしてこなかった生徒たち。3年間のさまざまな経験を通して自己肯定感を高め、この先自分を信じて進んでいく力を身につけてほしいと考えています」 20年度からは、これを学校全体で一層の意識化を図っていこうと、学年ごとの重点項目を設定して3年間のステップアップを体系化(図1)。さまざまな活動への浸透を図っているところだ。 現在まで「USUI7」の育成の中心を担ってきたのは、総合的な探究の時間(当初は総合的な学習の時間)に展開しているプロジェクト学習(以下PBL)だ。「生徒の心に火をともしたい」という校長のリーダーシップに、当時の総合的な学習の時間の内容に課題感のあった担当分掌が呼応するかたちで、16年度からスタート。まだ全国的に探究活動の実践例が少ない時期に、ゼロから手探りで構築してきた。 卒業後に地元に残る生徒が多いことを受け、地域とのつながりを学びの核に設定。まず1学年に、福井市役所の出前講座を活用して市内の課題解決策を考えるPBL「市役所に提案!」を立ち上げた。翌17年度は、2学年で進路希望に基づく学問探究を行い論文にまとめるプログラムを開始。18年度には「市役所に提案!」の連携先を市役所以外の事業所等にも拡大し、生徒が自ら行きたい場所に直接依頼してフィールドワーク(以下FW)を行う方法にするなど、着実に内容を充実させてきた。そのなかで、企画担当の分掌(現:探究企画部)には「多くの生徒が新たな発見をし、社会に対する興味・関心を抱いている」との手応えがあったという。 しかし、勢いで突き進んだ3年間が過ぎた19年度春、PBLの推進を強力に牽引してきたリーダー教員が他校に転出。同時にさまざまな課題が一気に噴出した。「生徒に課題を本気で解決したいという主体性や一生懸命さが感じられない」「自分がPBLで何をやってきたか覚えておらず、話し合いが進まない」「論文はインターネッ羽水高校は、学校教育目標として、7つの力「USUI7」の育成を掲げています。その育成の中心に位置づけられるプロジェクト学習(PBL)は、2016年度から開始。新鮮さと勢いで走れた時期が過ぎ、取組の2巡目で顕在化してきた数々の課題を乗り越えようとしています。取材・文/藤崎雅子プロジェクト学習 総合的な探究の時間 目的・目標の共有 生徒の主体性地域との協働 多様な大人との出会い自己肯定感の醸成を重視し、目標設定「続ける意味は?」さまざまな課題が顕在化地域とつながるPBLをゼロから立ち上げ

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