キャリアガイダンスVol.438
58/66

情報リテラシーやICTスキルを学ぶときは、なんらかの情報という題材を扱うことになります。その題材を、多様な社会人からもらったり、生徒が自ら集めたりして、学びを深めている実践をご紹介します。取材・文/松井大助 例えば2年生の必修授業「社会と情報」。4月の最初の課題では、「自身の自己紹介の説明に、関連するニュースも添えてプレゼンする」ことをした。アウトプットの練習と同時に、同級生の発信から世の中のことをインプットもする取組だ。 以降は、1学期は情報リテラシーやプログラミングの学習のほか、ライフプランの作成や、自分の考えをマインドマップにまとめることにもチャレンジ。2学期は動画編集と著作権、プログラミングを学び、3学期は「その年のトレンドや新しいもの」にふれていくという。 「2020年度の3学期には3DCGやVR・AR、AI、IoTを扱いました。最初に行ったのは、世の中にある3DCGやVR・ARなどの記事を生徒が探すこと。その見つけてきた記事をみんなで分類し、傾向をつかんだうえで、ソフトを使って3DCGモデルを作ったり、VR・ARを体験したりしました。生徒がインターネットで調べたり、自分のアイデアを文書や動画、CGで表現したりと、情報科はインプットとアウトプットをバランスよくできる教科だと感じています」 3年生の選択科目「情報社会学」は、「社会人と交流して世の中を知る科目」と小林先生が位置づけている科目だ。 上の図は、田園調布雙葉中学高校の小林潤一郎先生が作成したものだ。この図の通り、小林先生は情報科の授業を通して、パソコンを使いこなすといったICTのスキルだけでなく、考えることや表現することのスキルも生徒に高めてほしいと思っている。 「自分で物事を考えなくても、あるいは自分から表現することをしなくても、今の日本ではまだなんとかなる環境ではあるかもしれません。ですが、時代の流れとしては、自分で考えて表現して、とにかく動いていく人のほうが、選択肢も広がるし、チャンスもつかめるという時代になってきたと思うのです。だからこそ、自分で考えて表現する人の率を高めていきたいと考えています。また、本校は女子高ですが、世の中はまだ男性社会なところが残っており、優秀な女性でも活躍しづらいことがあると思うんです。生徒たちがそのハードルを、自分で考えて表現することで乗り越えていけるようにしたい、という思いもあります」 小林先生の情報科の授業の基本は、生徒がICTも使いながら世の中のさまざまな情報をインプットし、自分の考えもアウトプットするなかで、社会で生きる知識からスキルまでを高めていくことだ。自分で考えて表現することでチャンスをつかめるように生徒に対する想い生徒を見取って授業をデザイン田園調布雙葉中学高校(東京・私立)自分で考えてやってみることを大事にしたいです大学卒業後、システムコンサルタントを経て、田園調布雙葉学園の教員に。現在は高校の情報科の授業のほか、小学校のプログラミングの授業も担当している。ICTを活用した校内の学習環境の整備も推進。進路学習指導部長として、探究活動の企画立案にも携わっている。情報科小林潤一郎先生今号の先生世の中のことにふれながら思考力や表現力を磨く授業の実践582021 JUL. Vol.438

元のページ  ../index.html#58

このブックを見る