キャリアガイダンスVol.440
25/66

は、企業や行政、NPOといった「枠」を越えて橋をかけ、挑戦する人に伴走し、社会の未来を切り拓く…というミッションを掲げて活動してきました。日本企業と海外のNGO、大企業とベンチャー企業など、普段は交わることのない領域間を人が行き来することで、異なるもの同士がぶつかり合い、それぞれの価値の掛け合わせにより新しい価値が生まれると信じているからです。枠を越えることで、新しい(ときには枠を越えることで、新しい(ときには衝撃的な)視点が得られると同時に、衝撃的な)視点が得られると同時に、同質性が高い状態にあったときは気づ同質性が高い状態にあったときは気づかなかった自分の価値に気づくかなかった自分の価値に気づくこともこともできます。例えば、日本の企業で働できます。例えば、日本の企業で働く社会人が途上国のNGOに身を置く社会人が途上国のNGOに身を置くと、「時間通りにやる」「ルールに則っくと、「時間通りにやる」「ルールに則ってやる」という社会人として当然だとてやる」という社会人として当然だと思ってきたことが、他の文化では通用思ってきたことが、他の文化では通用しないことを痛感します。しないことを痛感します。一方で、そういう人材がいないがゆえに重宝され、「これって価値があることなんだ」と気づく…ということが多々あります。 同質性が高いことは、決して悪いことではありません。明確なゴールや正解がある状況では、価値観や背景が近い人が集まって阿吽の呼吸で物事を進めた方が、より速く正確に目標を達成できます。一方、問題が複雑に絡み合い、変化が激しく先が見えない…という状況では、多様な人たちがアイデアを出し合いながら前に進むことが有効になります。これはまさに、私たちが今、直面している状況。これからの時代は、「自分にとっての当たり前は、実は当たり前じゃないかもしれない」と、同質性に対して自覚的になり、自分とは異なるものから学ぼうとする態度がとても大事になってくると思います。 クロスフィールズの活動を通して、領域の枠を越える体験により社会人が成長・変容する姿をたくさん見てきた一方で、課題に感じてきたのが、「枠を越える=意識が高い一部の人がやること」というイメージが少なからずあることでした。教育の現場でも、似たような空気感があるのではないでしょうか。今後、私たちが目指していきたいのが、枠を越える体験をより身近なものにすること。みんなが小さな越境体験を重ねていくことで、同質性のなかでの常識を背負って生きていることに自覚的になり、社会全体が異質性に対してオープンになると思うのです。 まったく異質な世界に物理的に飛び込むことだけが越境ではありません。学校や地域のなかにも異質性は潜んでいますし、他校の生徒と繋がりをもつことも学校の枠を越えるという体験です。自分の日常から一歩踏み出すこと、当たり前を疑ってみることでも、見方が変わってくるでしょう。一度でもそういう体験があると、枠を越えるハードルが下がります。高校の先生方にはぜひ、枠を越えた出会いや繋がり方、ものの見方の「補助線」を引いて、生徒を導いてあげていただきたいと思います。こぬま・だいち●一橋大学社会学部・大学院社会学研究科修了。青年海外協力隊として中東シリアで活動した後、外資系企業を経て、2011年に創業。社会人向けの「留職プログラム」をはじめ領域の枠を超えて橋渡しする事業を展開し、教育現場に向けた「共感VRワークショップ」※も実施している。自分の「当たり前」が通じない世界に踏み出すことが、自分の「当たり前」が通じない世界に踏み出すことが、異なる見方や自分の価値に気づくことにつながる異なる見方や自分の価値に気づくことにつながる同質性の境界を越える私取材・文/笹原風花撮影/平山 論NPO法人 クロスフィールズ NPO法人 クロスフィールズ 共同創業者・代表理事共同創業者・代表理事小沼大地小沼大地※「カンボジア農村部の暮らし」や「コンゴ人難民の視点から見る日本社会」など、普段は接する機会が少ない環境をVRで擬似体験し、社会課題の現場を知るワークショップ。252021 DEC. Vol.440自分の枠を「越える」学び ~非連続な成長を引き出す5つの越境~「同質性」の境界を越える

元のページ  ../index.html#25

このブックを見る