1876年に、浄土真宗本願寺派寺院の子弟を教育するために創設された「金亀教校」が前身。国公立・難関私立大学を目指す特進コース、龍谷大学を目指すプログレスコース、硬式野球部員のアスリートコースの３コース編成。甲子園大会には春夏合わせて75回出場。在籍生徒数1423人（21年4月）。進学実績：国公立大学34（2）、関関同立107（16）、産近佛甲135（6）、龍谷大学218名（20年度実績）。（）内は既卒龍谷大学付属平安高校・中学校（ 京都・私立）まとめ／石井栄子 撮影／米本満穂 本校は、「浄土真宗の精神」を「建学の精神」とし、「真実を求め、真実に生き、真実を顕らかにする」ことのできる人間を育てることを「平安の願い」とし、これを実現するための日常の心得として、「ことばを大切に」・「じかんを大切に」・「いのちを大切に」という３つの「大切」を掲げています。創立145年を迎え、2026年の150周年に向けて、教室棟、体育館など、全面的なリニューアルを進め、新校舎はデジタル時代にふさわしいインテリジェントビルとし、ICTを活用した教育を本校のスタンダードとしていく考えです。 私は京都市立西京商業高校を初任校とし、以来34年間、市立高校の教員を務めてきました。50校も京都府立高校があるなか、市立高校の存在意義は何かと常に問い続けてきました。2校目に赴任した市立堀川高校では、京都市のパイロット校として高校改革を行い、1992年に探究学科の創設に関与。次に赴任した市立西京商業高校では、2001年にエンタープライジング科を創設。同校は日本で3番目にできた伝統ある商業高校でしたが、商業高校卒の生徒の就職は厳しく、特に女子生徒の事務職就業は壊滅状態でした。生徒の夢を実現できない学校に存在意義はないと、起業家スピリットを育成するエンタープライジング科を設立したのです。１人１台端末を導入し英語学習にも力を入れました。 来年度から施行される学習指導要領には探究学習が盛り込まれ、普通科再編の方針も発表されましたが、京都市では20年以上前に取り組んできたことです。 2018年に僧籍をもたない初の校長として本校に着任しました。以来、さまざまな改革に着手していますが、教科指導、生活指導、進路指導のすべてにおいて、建学の精神が基もといとなっています。例えば、新教育構想として掲げた平安ビジョン2030のなかには「仏教とSDGs」という探究テーマも盛り込まれています。仏教の「誰一人取り残さない、誰一人取り残されない」という精神は、まさにSDGsの精神と合致するものです。学校でのSDGsの取組は目新しいものではありませんが、仏教というフィルターを通すことで新たな学びが生まれることを期待しています。 日々の教育活動で最も大切にしているのは授業です。生徒は教師を選べません。だからこそ日常の授業にこそ全力を傾注して、かけがえのない時間を生徒と共有する。教員には、プロフェッショナルな職業人として日々研鑽を積むことを求めています。また、生徒の進路実現を図れない学校には社会的存在価値はありません。生徒が、自己の進路や生き方を主体的に選択し、自己の将来設計を実現し、自己の未来を切り拓いていけるよう教員は指導・援助を惜しみません。さらに、クラブ活動も充実させ、豊かな人間性を育む文武併修を行っていく決意です。 龍谷大平安は、凛として150年への歩みを進めてまいります。せきめ・ろくざえもん／滋賀県出身。東洋史好きが高じ、好きなだけ歴史を学べるという動機から教員を志す。龍谷大学文学部史学科東洋史学専攻を卒業。同修士課程に進学。その頃から京都市立の高校で非常勤講師を務める。修士課程修了後、京都市立西京商業高校に社会科教諭として着任。市立堀川高校ではパイロット校として教育改革に従事。その後、市立西京高校ではエンタープライジング科設立に尽力する。同校校長を9年間務めた後、京都嵯峨芸術大学芸術学部教授を経て、2018年に龍谷大学付属平安高校の第14代校長に就任。仏教の教えを建学の精神とする独自の伝統と校風プロフェショナルな職業人としてかけがえのない時間を生徒と共有する392021 DEC. Vol.440
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