キャリアガイダンスVol.440
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542021 DEC. Vol.440 愛媛県の山間にあり、豊かな自然に囲まれた内子高校小田分校。1948年に小田高校として開校して以来、地域の子どもたちの学校として親しまれてきたが、近年は少子化により生徒が減少し、2020年度に分校化された。現在の全生徒数は59人で、22年度生徒募集の結果によっては廃校の決断が下されるという。 強い危機感をもって学校存続を目指す同校は、17年度より校内に設置した魅力化推進室を中心とし、地域と連携しながら新しいカリキュラムづくりに取り組んできた。20年度からは生徒の全国募集も始めた。 そこで同校が大切にしているのは、「学校って面白い」と思える環境の下で生徒一人ひとりを成長させること。学校存続はその結果としてついてくるとの考えだ。 同校の生徒について、「驚くほど素直」「優しい」と教員は口を揃える。一方で、自己肯定感の低さやコミュニケーションへの苦手意識などの課題感も聞こえてくる。同校が目標に掲げているのは、そんな生徒を「地域社会を担う人材」として育成することだ。魅力化推進室長・山本 健先生はこう語る。 「本校の生徒が苦手とする、自分の考えを伝えることや自ら行動することこそ、これからの社会では重要です。経験不足で慣れていないだけの生徒も多いので、自分で考えて行動するプロセスを学校が工夫して提供し、自信をもたせて社会に送り出したいと考えています」 社会で求められる力の育成の具体策として、17年度以降、地域との連携の下で2つのプログラムをスタートさせた。 その一つは、1〜3学年の総合的な探究の時間を中心に実施する「起業家教育プログラム」だ。プログラムのテーマは「ふるさと小田―未来への創生―」。学校のある小田地区をフィールドとして展開し、地域の魅力や課題を発見して解決策のプランニングに取り組む。ねらいは起業家の輩出ではなく、起業家精神や起業家的資質・能力の育成にある(図1)。 「探究心をもって新しいことの創造にチャレンジできる起業家精神や、情報を収集・分析して実行する力などの起業家的資質・能力は、どのような仕事にも必要。将来起業するかどうかにかかわらず育んでほしい」(山本先生) 1学年ではまず地域を知ることに重点を置き、フィールドワークや地域との交流を行う。2学年では、地域の重要な産業である林業を軸とした地域活性化の検討を通じ、地域連携による探究のプロセスを学ぶ。3学年では、地域活性化に関する課題の発見から生徒自身で行う。地域のさまざまな大人にアドバイスをもらいながら、解決策の立案にグループで取り組み、日本政策金融公庫の高校生ビジネスプラン・グランプリに挑戦するこ学校存続をかけた地域社会を担う人材育成生徒それぞれの歩みを肯定し起業家精神や資質・能力を育む取材・文/藤崎雅子起業家教育 地域との協働 総合的な探究の時間 学校設定教科学校存続をかけた魅力化 生徒の全国募集学校存続をかけて魅力的な学校づくりを行っていこうと、地域と共に起業家教育やプロジェクト学習を推進している内子高校小田分校。そのなかで生徒たちは、のびのびと自分なりの成長を遂げています。

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