キャリアガイダンスVol.440
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[後列左から]小倉朋珠さん(大学1年)、大竹日和奈さん(大学2年)、レッドフォード望生さん(大学2年)、古屋樹人さん(大学1年)、鵜飼力也先生(課題探究講座担当)[前列左から]政野美和さん(2年)、布川理紗さん(3年)、石井 杏さん(3年)、岡安 花さん(2年)学習履歴が残りメタ認知を促すと同時に、クラスメイトの探究の様子もわかる「みんなの記録」。互いにコメントを残すこともできる。別々の大学に通う仲間同士で「みんなの記録」を続けている卒業生もいるそう。1978年創立/普通科/生徒数:747人(男子261人・女子486人) /進路状況:大学224人・短大1人・専修0人・就職0人・その他1人(2020年度実績)もっと発展することも期待して」とレッドフォードさんは振り返る。 十数人の応募の中から面接を経て選ばれたのが、「食や農、子どもの貧困に興味が生まれてきたところだった」古屋さんと、「先輩たちのプレゼンに心打たれて、挑戦したいと思った」小倉さん。その後、現2年生まで4学年にわたって活動は引き継がれることになる。 「親戚に農家がいて、知っていることを生かせそう」(石井さん)、「年が離れた弟妹がいるので教育に興味があった」(岡安さん)と現役生たちの参加動機はさまざま。昨年、今年とコロナの影響で子ども食堂の開催が困難になったが、動きを止めてはいない。3年生の布川さんは「最近は農家さんとZoomで話をして、高校生に聞きたいことのアンケートをとりました」と言う。結果が戻ってきた今、現3年、2年のメンバーで何ができるかを模索中だ。 授業から生まれ、今は有志が自主的に運営するプロジェクトに参加して、どんな気づきがあったのか。尋ねると八人八様の答えが返ってきた。 地元を離れたくて入学したという石井さんは、「ローカルが二つになって、地元のマイナス面も客観的に見て改善案を考えられるようになった」。布川さんは「地域を大切にする人たちと初めて出会い、通学中に挨拶をしたり、家にくる回覧板を見たりするようになった。知らないところで人は助け合っているから、直接関わりがなくてもお互い気にかけるのは大事だと思う」と、居住地域の見方への変化が語られる。 また、「私たちの多くは駅から学校までスクールバスで通い、お店に入るのもコンビニぐらい。周辺を歩くようになって、学校が『島』になっていることに気づいた。ほかの生徒も地域に根を張って、学校を島にしないようにしてもらいたいと思う」(石井さん)と同時に、「近所の人に、地域のことを考えている高校生もいることを知ってもらえたのは良かった」(岡安さん)という声も。 さらに、社会と自分は繋がっていて、自分たちの行動が社会を動かせるという感覚も芽生えたようだ。「テレビで見るような世の中の事もだいたい身近にある、ということに気づいた」と言うのは政野さん。「小さなコミュニティの集まりで世界はできていることに気づいた。小さな集まりから行動を広げていけば、大きなことも動かせる」(岡安さん)、「やってみたいことを先生に相談して、友達も反応してくれた。何かをするときの道筋が見えて、『やりたいことはできるんじゃないか』という感覚がもてた」(大竹さん)と次々に実感を伝えてくれた。 課題探究講座では教員たちもまた、生徒の心の声に耳を傾け、生徒同士が心を開いて対話する環境をつくってきた。そのための仕掛けとしてクラウド上に「やったこと」「考えたこと」「これからやること」を共有する「みんなの記録」を設けている。コロナの影響でオンライン授業になったことから始めた試みだが、これがあることで教員も生徒もお互いに助言ができ、授業を組み立てる基にもなっていると鵜飼先生。 「私たちが授業でやっているのは、生徒に対してひたすら、あなたはどういう人? あなたがここにいる意味は? と問うことです。予定調和的な成長や成果は望みません。生徒が学びの手綱を自分で握って離さないよう話を聞き、授業をチューニングする。本校は意欲的な生徒が多いですが、授業の基本はどこの学校でも同じ。私はどんな学校で働くとしても、生徒の声を聞き、『あなたがあなたである意味は?』と問うと思います」と、生徒が自走し始める授業の背景にある想いを語ってくれた。声を聞くこと手綱を離さないこと地域に出てそれぞれが学んだこと仲間を募って子ども食堂で食事を作ったり子どもたちと遊んだりするほか、農家の手伝いにも行った。講座では生徒が会いたい人を学校に招くプロジェクトも実施。ドラアグクイーンを招いた会は、準備から実行まで生徒が担当した。612021 DEC. Vol.440

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