キャリアガイダンスVol.440
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特集境経験〞と言っても、環境をがらっと変えたり、大きなチャレンジをするだけがその手段ではありません。ミシガン大学ビジネススクールのノエル・M・ティシー教授が提唱したコンセプト(左図)では、自分が安全・快適に過ごせる「コンフォートゾーン」の外側に「ラーニングゾーン」、さらにその外側に「パニックゾーン」の3つのゾーンがあるとされています。ラーニングゾーンは別名ストレッチゾーンとも呼ばれ、これまでの自分の力だけでは通用しない未知の領域ですが、そこで新しい知識や価値観と出合ったり、初めての状況のなかで苦労や葛藤を乗り越える経験こそが、人を成長させる。さらにその外のパニックゾーンまでいくと、負荷が大きすぎて対処できず、成長どころか心身に不調をきたしかねない領域になるといいます。本特集ではこの考え方に基づき、越境経験=自分のコンフォートゾーンから外に踏み出し、自分のこれまでの「枠」を越える経験、と定義したいと思います。 外に出ると、想定外のことが多々起こります。が、それを覚悟して勇気をもって踏み出し、自分なりに対処し、何らかの結果を得る経験は、失敗も含めて成長の原動力になりえます。また踏み出してみて何とかなった、という経験は、コンフォートゾーンを少し拡げ、次の越境に挑戦するハードルを下げることにもつながるでしょう。 もうひとつ大事なことは、初めてや想定外にさらされることで、自分が何に本当に興味があり、何ができて何ができないか、何が嬉しくて何を許せないか、自分自身をメタ認知しより深く理解することができるという点です。新しいことや成功する確証がないことにも挑戦してみようというマインドセット、そして自分自身への多面的な理解は、越境経験によって得られる成長の大事なベースになります。 そして成長には、価値観や尺度は同じで、能力や視座が上昇するいわゆる垂直な成長と、価値観や尺度すら変わっていく水平な成長があるといわれています。越境経験によっておこる学びは、まさにこの後者。価値観や世界観がまだ柔らかく可変性の高い高校生だからこそ、新しい経験によって自らの認知や周囲の世界を何度も再構築することができ、それが非連続な成長へとつながっていくのです。高校生に必要な「越境」は、コンフォートゾーンの外へ踏み出し新しい何かに出合ったり、苦労や葛藤を乗り越える経験~ 非連続な成長を自分の枠枠を越パニックゾーン●過負荷 ●不安、ストレス、混乱ラーニングゾーン●未知の領域 ●適度な負荷コンフォートゾーン●安心、安全 ●快適制御不能学び・成長現状維持92021 DEC. Vol.440

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