カレッジマネジメント187号
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遣するにあたって、現地で学校を運営しようとする邦人社会(日本人会や商工会議所等)に、日本国内の「私立学校法人に倣って」一定の条件・学校設置の基準を満たすことを求めている。しかし上海日本人学校がこの条件を実現するのは容易ではなく、現地の運営委員を含む関係者の認識とは大きくかけ離れているように思える。上海日本人学校は1975年に生徒数7名で領事館の1室を借り補習校として開校した。当時は親が中国に派遣されている間(2〜3年を想定)の教育が期待されていたようで、文字通り「寺子屋」的教育だったと思う。従って、それを担う教師や組織も家族的雰囲気のなかで運営されていたと思われる。しかし、今日では世界最大の日本人学校へと成長した上海日本人学校を運営するには「寺子屋の延長的取り組み、考え方」では無理がある。全校生徒3,000名ほどで、このうち在籍期間3年未満の生徒が80%、残り20%が4年間以上の在籍になるが、その数は600名ほどになっている。今や小学部2校、中学部1校、高等部1校という大規模校へと変貌をとげた上海日本人学校だ。寺子屋的運営から大規模校を経営するにふさわしい組織に成長させなければならない。現地に法的根拠を持った組織を形成し、その組織を母体に、複数の学校を経営するための中長期計画、財務計画等を責任持って担う人材集団を形成する必要がある。そして各学校教育現場と責任ある連携を取りつつ「新しい人材育成を目指した教育組織」創りへと一歩を踏み出す必要があるのではないだろうか。日本において国際性を育む教育の必要性・国際化教育が叫ばれて久しいが、この国際化教育とは欧米の文化理解を目指す教育であったと思っている。しかし、国際化のための舞台は広がっているのだ。私達は今21世紀初頭の世界第二の経済大国中国の国際都市上海に生活している。長い歴史を共有する分かち難き隣国中国にいるのだから、この環境を生かしたグローバルな国際理解教育を実践する責任があると考える。日々の教育活動を通して自国への認識の深化と共に日本人としての自信と誇りを養成し、アジアから世界に貢献できる人材を育成することこそが、私達が目指す教育であろう。教師であれば一度は行って子ども達を教育したい、と評価されるような学校。ここで過ごした子ども達が、成長し生きるなかで上海での経験、多くの国の人々との出会い、先生や友達との間で交わされた一言一言が、折に触れ思い出されるような、ここでの生活が生き抜くうえで貴重な支えの一端となるような学校創りができたら、と思う今日この頃だ。【上海日本人学校高等部協力大学】法政大学、上智大学、立教大学、東京理科大学、中央大学、日本体育大学、芝浦工業大学、南山大学、中京大学、関西学院大学、同志社大学【第一期卒業生35名の合格大学】上智大学4、中央大学2、芝浦工業大学2、日本体育大学1、中京大学3、同志社大学3、関西学院大学5、広島大学1、早稲田大学1、東京女子大学2、学習院大学1、青山学院大学2、明治大学1、獨協大学1、桜美林大学1、帝京大学2、京都外国語大学1、立命館アジア太平洋大学1、共立女子大学1、東京家政大学、その他私立大学・専門学校リクルート カレッジマネジメント187 / Jul. - Aug. 201443オセアニア 1% アフリカ 0.4% 中近東 2% アジア 79% ヨーロッパ 13% 中南米 3% 北米校2% 地域別の日本人学校 出典:海外子女教育振興財団『月刊 海外子女教育』2014年1月号 N=21262 (人) 5上海日本人学校の夢

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