カレッジマネジメント187号
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50岩手県立大学2011年に大学設置基準が改正され、「大学は、生涯を通じた持続的な就業力の育成を目指し、教育課程の内外を通じて社会的・職業的自立に向けた指導等に取り組むこと」が明記され、就業力育成は大学教育の重要な課題となっている。各大学が活動の方向性を模索する中、地域産業人材の育成や地域経済の活性化にもつながるような就業力育成の取り組みが注目されている。この連載では、産業界との連携や地元自治体との協働によって学生の就業力を高めることに成功している事例などを、積極的に紹介していきたい。今回は、県立大学として地域活動の体系化に留意しながら「IPU-E(岩手県立大学-Employability)」という就業力育成を進める岩手県立大学の取り組みについて、中村慶久学長と高瀬和実特任准教授(学生支援本部)、高橋一教学生支援室長に、お話をうかがった。就職先企業アンケートから見えた課題中村慶久学長は、2009年に就任したときの岩手県立大学の第一印象を「非常に静かな大学」と振り返る。「こんな素晴らしいキャンパスを持っていながら、誰も外で暴れていない」。中村学長は続けて、私も岩手県人ですが、と前置きして「わりと引っ込み思案」な県民性を指摘する。「ここの学生も、真面目で伸びしろも非常にあるけれども、とにかくおとなしい。企業に入っても、積極的に前に出られないのではないか、就業力という点では弱い部分があるのではないかと感じました。そんなこともあって活性化したいという思いが一つはあったのです」。EマップとEプロジェクトの両輪で就業力を育成そんな頃、就職先企業に定期的に実施していたアンケートの結果から、岩手県大生の「弱点」が明らかになった。「企業が求める能力・資質と、本学の学生の印象を聞いたところ、就業力にかかわる部分で非常に開きがあり、これはなんとか埋めていかないといけないという認識になりました」。ちょうどそこに公募があった2010年度の「大学生の就業力育成支援事業」に申請し採択されたのが、本格的な取り組みの始まりだった。自身の成長度を測るEマップIPU-E(岩手県立大学-Employability)には、主要な事業が2つある。1つは、就業力育成にかかわる事項についてどれだけ成長したかを自己採点し、成長度を測る「Eマップ」。もう1つは学生が自分たちでプロジェクトを企画し実行していく「Eプロジェクト」だ。学生支援本部の高瀬和実准教授は、2つの事業の性格の違いを「Eマップは、総合政策学部であれば1年生から3年生の全員が対象で、望むと望まざるとにかかわらず必修です。それに対してEプロジェクトは、やる気のある学生が対象で、主体性重視です」と説明する。Eマップは、経済産業省が推進している社会人基礎力と同じ能力要素を、総合政策学部が独自に意味づけし、学生が年2回(前後期各1回)記入するシートを開発したものだ。「学生には、必要な都度振り返るポートフォリオとして活用できるように、アナログなファイルに全部蓄積しておきなさいと指導します。当初は、なぜこんなものを書かされなければいけないのかという学生が多かったのですが、就職時にはエントリーシートを書く材料になるし、自分の過程を見て自信を中村慶久 学長リクルート カレッジマネジメント187 / Jul. - Aug. 2014

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