カレッジマネジメント187号
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就業力を育成する52いる」と中村学長は言う。「プロジェクトに参加したことで成長した面が、就職して仕事についたとき、どう生かされていくか、追跡調査なり、検証が必要と思っています」(中村学長)。総合政策学部から全学へEマップは総合政策学部が中心になってスタートした。当時の学部長が就業力への問題意識を持ち、先頭に立って取り組んだことが大きかったという。現在Eマップに積極的に取り組んでいるのは、この総合政策学部に加え、ソフトウェア情報学部、短大部。一方で資格取得を前提として長期の実習が課される看護学部と社会福祉学部にあっては、実習を通じて社会人基礎力の育成が図られ、その成果が記録に残ることもあり、Eマップの導入には至っていない。中村学長は、「全ての学部で一律に取り組むとは考えていません。トップダウンで一気にやったとしても、うまく行くとは限らないので、まずは理解してもらって、それならやろうという雰囲気作りが大切。キャリアセンターの職員の皆さんも、そういうことを心がけながら、各学部と話をしている状況だと思います」と語る。学生支援室の高橋一教室長が教職協働のモデルケースとしてあげるのは、やはり総合政策学部だ。「就業力育成委員会というのを学部の中に持っていただいて、いい意味でキャリアセンターとの二人三脚となっています。2010年の事業立ち上げ当初から、われわれ主導の企画と、学部の方針と、それぞれ持ち寄ってのミーティングを月1回ペースでずっと重ねています。そこで全部合意を取って教授会に諮るという、円満なプロセスができています」今後の展開として、学長の意向の一つは、地域との連携の強化だ。「Eプロジェクトを含め既に今までやっていることですが、『学生が地域で学ぶ』ということを、もう少しきちっと体系化して、1年次から地域で学ぶ意識を高める仕組みを導入していくことを検討中です」。そのためにいっそうの活用が期待されるのが、県内企業の「サポーターズ・ネットワーク」だ。2011年度に発足し、157社(2014年5月現在)がインターンシップの受け入れ、PBL(Project Based Learning)への応援、授業の外部講師など、もろもろの就業力育成に協力している。岩手県大は開学が16年前(98年)と歴史が浅いため、協力企業の開拓はOB・OGに頼らない形で進んだ。「非常勤で採用したこの事業のコーディネーターが、県内のものづくり企業を中心としたネットワークのコーディネーターも兼ねていたので、そのルートで製造業を中心に協力のお願いを始めました。業種のバランスも考え、今後はサービス業系などにもっと広げていきたいと考えています」(高橋室長)。基礎学力強化が今後の課題岩手県大の就業力育成の課題を中村学長に尋ねると「学生の活性化という面は、学生のいろんな活動が目に付くようになってきて、ある程度成功していると思います。一番心配なのは基礎学力ですね」という答えが返ってきた。「公務員試験なんか端的ですけれど、就職の筆記試験で落ちてくる。あるいは企業に入ってからも、学力に自信がなくて『自分は勉強できないのだ』という感覚でいると、発言力も弱まります。そこはある程度、自分はこういうことができるのだというのを持って卒業してもらわないと、せっかく就業力を高めても生かしきれないのではないかと思います」。いわゆるキャリア教育を強化して就業力を高めても、基礎学力が卒業までの4年間で十分に仕上げられないことを懸念しているわけだ。そこで2013年度に新設した高等教育推進センターで、基盤教育の内容を抜本的に見直している。昨年度は全学の1年次から開講される教養教育を再検討し、今年度の4月にカリキュラム改定を実施した。「基礎学力としてもう一つ、語学力の問題。ことさらグローバル化云々と言わないとしても、今までの語学教育ではだめじゃないかと。教養科目に続いて語学科目のカリキュラムを議論していて、2015年度から新カリキュラムを実施する予定です。こうした中に、学生の地域活動に、教育としての体系化を加えていく。それが上手くいけば、学力的な底上げもできて、かつ、今よりももっと就業力もある学生が、数年後には出てくると期待しています」(中村学長)。(角方正幸 リアセックキャリア総合研究所 所長)リクルート カレッジマネジメント187 / Jul. - Aug. 2014県内企業とのサポーターズ・ネットワーク

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