カレッジマネジメント188号
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75問題は、人口減少が経済社会にどのような影響をもたらすかである。生産年齢人口が減少傾向をたどれば、経済活動は低下するおそれがある。日本の生産年齢人口は、2010年には81735千人であり人口総数の63.8%を占めていた。それが2040年には57866千人へと減少し、比率も53.9%へと低下する。全体の経済活動が低迷し、他方で社会保障費が増加することによって財政危機が深刻化することになりかねない。まさにイノベーションが不可欠になる。イノベーションによって生産性を向上させるとともに、超高齢社会における様々な問題の解決をはからなければならない。イノベーションを推進するにあたっては、大学に蓄積された知的資源をフル活用するとともに、人財形成に寄与することが求められる。社会における大学の役割はかつて無いほど重要になろう。だが、他方で少子化の影響によって大学の淘汰が進むことが予想される。だが、人口減少には地域差があり、一様ではない。地域構造の変化と大学2わが国は全体としては人口減少傾向をたどっているが、変動の状況は地域別に大きく異なっている。一方では経済力が強く存続する地域が存在するものの、他方には人口が急減し消滅に向かっている地域が増加している。当面、人口が増加している地域が存在している。大都市集中が進行しているのである。とりわけ東京圏への一極集中が目立っている。だが、長期的に見れば、東京の内部にも新しい問題が生ずるであろう。大都市集中は、若者の地方からの流入によって加速化されている。若者は流動性が大きい。とくに学生は流動性が最も大きい。学生は魅力ある雇用の場を期待して東京の大学に集まる。入学試験の志願倍率は、設置形態の如何を問わず、東京の大学において高く、地方の大学において低い。学力差も拡大していると思われる。2014年度の入学試験において、地方の国立大学では志願倍率が2倍を下回った学部や学科が増加している。この傾向は、旧帝大系の大学においても例外ではない。この点は、東京圏の大規模大学と対照的である。さて、今後、人口は、地域別にどのように推移するであろうか。人口減少率の大きい地域と小さい地域を対比すると、表2の通りである。この表は、2010年の人口を100とした2040年の数値と、2040年の高齢者比率を見たものである。人口減少率の最も大きいのは秋田県であり、減少率は実に35.6%である。青森県や岩手県など、東北の各県がこれに続く。西日本では、高知県、鳥取県、島根県など、従来からの人口減少県が目立っている。そして、これらの県では、高齢者比率が2040年には40%前後に達する見込みである。これに対して、人口減少率が最も小さいのは沖縄県であり、かなり目立っている。その他の地域は、福岡県を除くと、すべて3大都市圏に属している。高齢者比率もかなり上昇しているが、相対的に低い水準にある。いずれにしても、都道府県別に見た人口のバラツキは今後拡大するものと思われる。変動係数を見ても、2010年0.98、2025年1.05、2040年10.8と徐々に拡大する見込みである。人口減少率の大きい地域では、所得水準が低いうえに伸び悩み、大学進学率も上昇せず、定員割れ大学が増加するおそれがある。すでに私立大学が成り立たない県が存在しており、読売新聞の本年の「大学の実力」調査を見ても、3大都市圏以外の地方圏では、私立大学のリクルート カレッジマネジメント188 / Sep. - Oct. 2014人口減少率大地域人口減少率小地域1秋田64.4(43.8)沖縄98.3(30.3)2青森67.9(41.5)東京93.5(33.5)3高知70.2(40.9)滋賀92.8(32.8)4岩手70.5(39.7)愛知92.5(32.4)5山形71.5(39.3)神奈川92.2(36.5)6和歌山71.8(39.9)埼玉87.6(34.9)7鳥取71.8(38.2)福岡86.3(35.3)8島根72.6(37.3)千葉86.2(36.5)9徳島72.7(40.4)京都84.4(36.4)10福島73.2(39.3)大阪84.1(36.0)全国 83.3(36.1)表2 2010年を100とした2040年の都道府県別人口資料:国立社会保障・人口問題研究所資料(注)( )内は高齢者比率(%)

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