カレッジマネジメント189号
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18「学生の多様化を背景にきめ細かな学生支援策が不可欠」「学生個々人の様々なニーズに耳を傾けることが必要」――。今どきの大学教育にあふれる言説だが、実際に学生支援について方針を立て、実践を進めていかなければならない現場では、それを実現させるための道具立てが必要になる。単にお題目を並べるだけでは大学は変わっていかない。今重要性を増すもの。それはデータだ。学生ごとに異なる学びや成長のあり方を示す主要なデータが揃っていなければ、きめ細かな学生支援は望むべくもない。本稿で取り上げる京都光華女子大学は2007年、総合学生支援の実現を目指して、先駆的にエンロールメント・マネジメント(以下、EM)に着手したことで知られる。近年はそこにインスティテューショナル・リサーチ(以下、IR)の要素を付加した取り組みへと展開してきた。その中心には常にデータが位置づけられている。実際のところ、どんな取り組みが効果を上げ、今いかなる課題に直面しているのだろうか。水野豊副学長と相場浩和教授(短期大学部長)にお話をうかがった。全国に先駆けてEMを導入京都光華女子大学(以下、京都光華)を運営する学校法人光華女子学園の淵源は、1940(昭和15)年に開学した光華高等女学校に遡る。爾来70年余り、「仏教精神に基づく女子教育の場」たることを目指して学園整備が進められ、現在では、幼稚園から大学・大学院に至るまで「真実心」を校訓とする一貫した女子教育が展開されている。京都光華は近年、そんな女子教育としての基本を守りつつも、資格重視の学部・学科再編を行ってきた。2010年、それまでの文学部と人間科学部を、人文学部、キャリア形成学部、健康科学部に改組し、2011年には健康科学部に看護学科が設置された。人文学部を廃止して、来る2015年にはこども教育学部を設置し、資格やキャリアをイメージしやすい3学部6学科構成になる予定だ。京都光華は、こうして学部・学科を改組するだけでなく、2007年からは学生の入学前から卒業後に至る学生支援を推進するEMに全国の私大の先駆けとして着手した。その背景には大学を取り巻く厳しい社会変化があったと水野副学長は説明する。大学がユニバーサル化する中、学生の多様化が進行した。さらに、少子化への対応から大学を差別化していく必要性もあった。こうした基本的な問題意識は多くの大学が共有しているにちがいないが、各大学の抱える具体的課題は同じではないし、それにどう切り込んでいくかも当然、大学によってアプローチが異なる。京都光華では全学で学生の満足度を上げるべく、EMが導入された。京都光華におけるEMとは、「学生満足度」の向上を目標に、学生ニーズに応じたトータルな学修・生活支援の実現を目指すものだ。EMの実現をデータで支える活きたPDCAサイクルリクルート カレッジマネジメント189 / Nov. - Dec. 2014C A S E2京都光華女子大学

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